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第51話 夜空を見上げよう

 こうして五日ほど料理の試作に取り組む。

 同じ料理を味付けや材料に変化を付けて一皿づつ作り、皆でシェアして食べるを繰り返す。

 一応、時間をかけて少しづつ分けて食べているので量を食べてしまわないように、作る料理も考えながら作る。

 肉料理、お米料理、スープ系といった感じで、あまり食べ過ぎなように気を使い、試作を重ねていく。

 その中から、みんなの意見を募り、特に評価が高く貴族の食卓に出しても恥ずかしくなさそうな物をいくつか選ぶことにした。

 そんな作業も終わりを迎え、いくつか披露して向こうの料理人に取捨選択して貰うことが出来る数のレシピを用意出来た。


 そんな作業が一段落したので、俺は二階のベランダに出て、寒いよ風に吹かれながら、夜空を見上げていた。

 やはりここは、異世界なのだな。俺でも分かる北斗七星やオリオン座とかを探すが見つからない。

 まぁ、同一世界でも、銀河が違えば星の見え方なんて変わるだろうから、それが異世界の証明にならないけどね。

 地球にいた時と違い、月も二つあり、一つはやけに大きく見えるし、赤くて不気味だしね。

 そんなことを考えていたら、俺を見とめたようで、リアが話しかけて来た。


 「よう、ギリーそんなとこにいたら、寒いぞ。」


 「リアか。これぐらいなら、平気だよ。今回はいろいろご苦労だったな。」


 俺は、リアの声に反応したが、顔は夜空も見上げたまま、そう言った。


 「なに、料理を作るのは面白れえし、楽しいからいいってことよ。」


 「そうか、ならいいんだが、ここのところ、冒険者なのに魔物も狩らずに料理に明け暮れてたからな。」


 「ははは、それは、確かに冒険者としてどうなんだだよな。でも、あたいはギリーに会えたことを感謝しているよ。」


 「どうしたんだ急に。」


 「いや、今まで中々いう機会がなくてよ。ギリーに会えなきゃ、今もあたいとミサは大部屋で武芸の書を得るために多くの冒険者と一緒に丸まっていただろうしな。」


 「そうかな?実力はあったんだ意外と既に抜け出していたかもしれないぞ。」


 「そんなことはないって、あたい達の先輩冒険者もこないだ会って、まだ苦労している話を聞いたからな。向こうはあたいらの装備を見て驚いていたからな。」


 「そうか。」


 リアの話を聞いて、そう呟くしかなかった。

 うーん、俺が思っている以上に冒険者という職業は厳しいのか。


 「ああ、それにギリーに会っていなかったら、色々うまいもんも食えなかったし、いろいろな魔物とも戦えていなかったしな。」


 「でも、そのチャンスを掴んだのは自分の実力だろ。」


 「うーん、それもなぁ。あたいは最初ギリーの誘いに懐疑的で断ろうとしたんだ。だけどミサが珍しく積極的に誘いを受けようと言ってきたんで、それに乗っただけだしな。」


 なるほど、だよね。初めて会った素性の分からない男に金を貸すから、武芸の書を手に入れてパーティーを組もうと言われたら、男の俺でも躊躇するよね。

 まして、彼女の周囲は武芸の書を得るのにみんな凄い苦労しているのだからね。

 こちらの常識がなさ過ぎたとはいえ、ちょっと軽率だったねあれは。


 「俺もあの時は考えがなさ過ぎた。もう少し考えて誘うべきだったと反省している。」


 「ははは、だよな。」


 リアの笑いに釣られて、俺も笑う。


 「あら、二人でこんなとこで楽しそうに内緒話?」


 俺達の笑い声に気付いたのか、ミサがそう声を掛け、他の女性陣もベランダに顔を出す。


 「ちょっと、リアを労っていただけだよ。」


 「それにしては楽しそうでしたわよ。まぁ、リアも風呂上がりでそんな恰好じゃ、風邪を引きますわよ。二人とも、中に入ったら?」


 ディートは俺の言葉にそう言葉を返す。

 だな、冬にみんなで外にいることはないか。それによく見るとリアは部屋着のままで寒そうだった。これは気付かず悪いことをした。


 「だな。リアもそんな恰好じゃ寒かったろ。悪かったな気が付かず。」


 「いいって、じゃぁ、皆も部屋に行って話そうぜ。」


 リアはそう言って、皆と部屋に向かう。

 俺はもう少し空を見ていたかったが、仕方なしに中へ入ることにする。

 その後、彼女たちの部屋で雑談に興じてから、明日王都に戻る際の打ち合わせをする。


 翌朝、家を鞄にしまい、馬で街道のある場所まで戻ることにする。

 今日は両翼をリアとパルマが担当し、ミサの馬にティアを乗せ、俺の馬にディートを乗せて出発する。


 「あなた、気付いてないようだから、言っておくけど。」


 なんだ。ディートから名前呼びでなく、あなた呼びだなんて、なんか悪いことしたのかな?


 「うん、何のことだ?」


 「侯爵の第一夫人に、『ティアは娘になりますので、これからもよろしくお願いします。』と言われたでしょ?」


 「ああ、言われたな。」


 「で、あなたは、『ええ、お任せください。』と答えましたわよね。」


 「だな。」


 「あれ、見方を換えると、娘を貰ってくださいな。ええお任せくださいということになるのよ。」


  え、嘘でしょ。額面通りに受け取っちゃいましたよ。


 「あれ、言葉通りの意味じゃないのですか?」


 「何言っているのです。仮にティアの本当のお母さんが言っていたら、額面通りの可能性もありますが、侯爵様の第一夫人が言ったのです。私の最初に言った言葉意味で捉えるのが普通でなくて?」


 え、あ、確かに血のつながりもない貴族の夫人が娘ですからよろしく……。

 確かによく考えるとそう取れなくもないけど、わかるか!


 「でも、どうなんでしょう?」


 「ティアも何か気にしているし、今度戻った時、多分私の思い過ごしでなければ夫人の方からなんかアクションがると思うから、頑張るのよ。」


 どうせ、昨日のリアと一緒だった時のティアを見てないわよね。リアの方もどうせ気付かずにいるのでしょうけど、そっちは私が言うことじゃないし、ギリーさんの気付きに任せるべきだわね。


 「え、あ、はい。」


 え、ティアも気にしているの?

 気付かなかったよ俺、朴念仁なつもりはなかったけど、だめだめだね。

 ディートの言葉に、考えがまとまらず、しどろもどろになりながら、そう答えるしかなかったよ。

 そっち方面は、向こうで五十年生きて来て、そう言った浮いた話もなかったから、いまいち疎いんだよな。

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