第49話 侯爵様に合おう
翌日、冒険者装備で待機する。
ティアも待女の恰好でなく、冒険者の恰好でいる。
皆が冒険者の恰好の中待女の恰好は目立つので、ということらしい。
まぁ、ティアも習得やボスの戦闘に参加してたし、問題ないだろう。
中々の高級宿なので、それなりの恰好をしている人の出入りが多い中、冒険者姿は少々目立つが、すぐに出立できるようフロント近くで待機している。
約束の時間の少し前に侯爵家の馬車が宿の前に到着するのが見えたので、俺達は馬車に向かう。
向こうもこちらに気付いたが、武器こそ所持していないが武装した集団が近づいたのに驚く風もなく出迎えてくれる。
今回は御者だけなので、一応名乗りを上げておく。
御者は丁寧にお辞儀を返すと、馬車の扉を開けて、乗り込むのをサポートしてくれる。
俺達六人が乗っても狭く感じない大形の箱馬車に乗り込む。
大型の馬車でも当然のようにフローティングボードが使われており、揺れを感じない。
シートのクッションも革張りでありながら、不思議なほどのクッション性能だ。
馬車は広くなったり狭くなったり、クランクの多いい道を進み、いくつかの門を抜け、貴族街に入り込む。
庭付きだがさほど広くない邸宅が並ぶ一角を抜けると、だんだん屋敷が大きく庭も広い区画になって行く。
やがて御者から、オーベルマイヤー侯爵家の邸宅に到着したと告げられる。
外を見ると、イオナの街の領主館にも負けると劣らない建物と庭園が見える。
御者が番兵に何やら告げて、門の中に馬車を進める。
屋敷の前に馬車を寄せると、家令の人が既に出迎えていた。
そして、屋敷の中に案内される。
少し広めの応接室に通され、座って待っているように言われる。
広めの応接室とはいえ、大人六人が横一列に座れるわけもないので、俺とディート、パルマが前に、リア、ミサ、ティアが後ろに座る形になる。
まぁ、いつもどおりだ。
今日は失礼がないように対応しないと、気を付けよう。そう考え、ディート達に言われた、注意点を頭の中で思い返す。
しばらくして、侯爵様が現れる。家令と、女性と若い男性を連れている。
俺は、席を立ち頭を下げて迎える。
あれ、女の人、イオナの街であった奥様と違うような?
侯爵様が席に座り、着席するように促される。
俺達も、席に座る。
侯爵様が、挨拶を行い、続けて隣の女性と若い男性が挨拶をされた。
「初めまして、私は第一夫人のエミーリア・オーベルマイヤーと申します。普段はイオナではなく、こちらで屋敷の差配をしております。」
「同じく、初めまして、私は嫡子のアルベルト・オーベルマイヤーと申します。母と同じく政務を学ぶため、こちらで王城に努めております。」
うん?普通の封建制かと思ったが、ある程度中央集権のように中央の意向が強いのか?奥方と嫡子が王都にいるとか、一種の人質だよね?
そんなことを思っていたら、侯爵様がそんな考えを否定してくれた。
「妻は変わっていてね。普通は家屋敷の差配をする者がここにいて、家のことを取り仕切るだけなのだが、彼女は私が居ない間も私に替わり、政治事にも動いてくれているのだよ。それで、息子も本来は私のもとで政務を学ぶのだが、王城での政務を学んでいるのだよ。だから、君達には紹介が遅れることになったのだよ。」
「それはいろいろ頼られるから、動いているだけですよ。それで、貴方達も名前も分かりませんので紹介していただけます?」
奥方は笑顔で侯爵にそうか返したあと、俺達の紹介を求めた。
今回は、ちゃんと挨拶して自己紹介を行う。
俺達が一通り紹介を終えると、奥方がティアを見て一言言ってきた。
「貴方が、旦那様の子ですか。」
「は、はい。」
「イオナの邸宅には第二婦人がいるので、向こうにはいられないようですが、こちらに住むのはどうでしょう?もし、よろしければ、私の父に頼んで子爵家辺りの養子として向かい入れますわよ。」
「ありがたいお誘いですが、私は既にギリー様にお仕えしている身ですので、仕え先を換える訳には行きません。」
「あら、そう。では、ギリーさん、ティアを私に譲って下さらない?もちろん謝礼はお支払いいたしますわよ。」
ん?今回呼ばれた主目的ってこれなのか?
なら、家令さん、考える猶予を貰う意味でも事前に話してくれていいのでは?と思い、家令さんに目を向ける。
すると、家令さんも慌てて首を振って知らないと否定する。
あれ、急に出た話なの?
仕方なく、俺は十分考えて言葉を出す。
「ティアがそれを望むのであれば、お渡ししましょう。ですが、望まぬのであればお断りします。」
「あら、主人が給仕の意見で返事を変えるのですか。」
「ええ、私は庶民故、貴族の考えがわかりません。しかし、ティアならば貴族の傍に使えていたので、私より良い判断を下せるでしょう。」
「なるほどですね。では、貴方はどうします?」
俺の考えを聞いて、一応納得してくれたのだろうか?ティアに質問を投げかける。
「私は給仕として務めてはいますが、それでも貴族のことはわかりません。ですが、今の勤め先はそれほど肩ひじ張らず勤められるので楽しいです。それに皆さんと一緒に冒険者の真似事もいさせていただいています。ですから、私はこのままギリーさんのところで仕えたく思います。」
ティアは考えることなく、すぐにそう答えてくれた。
「そうですか。わかりました。このことは諦めましょう。」
奥方もう少し粘られると思ったが、思ったよりあっさり引き下がってくれた。
「では、ギリー様、血の繋がり自体はありませんがティアは娘になりますので、これからもよろしくお願いします。」
「ええ、お任せください。」
「あら、頼もしいわね。では、表向きの依頼の話を進めて下さい。旦那様。」
俺の返答にニコリと笑い、そう返すと表向きの話をするよう侯爵様に促した。
そんな笑顔で返されると逆に怖いです。それと、実はこの人の方が実権を握っている?
俺を受けて、侯爵様が家令に命じて、料理やお菓子の件について話すよう命じる。
なんでも、今回、菓子作り担当の料理人は向こうで開店した店と情報を共有するため、イオナの街に残ってしまっているので、メインの料理人は菓子については、パーティーに出したものくらいしか作れないので、それ以外の物を改めて、教えて欲しいとのことだ。
それと、料理についてもいくつか新たに教えて貰えないかとのことだった。
お菓子については、お店で出されたりしている物は俺が作った物より洗練されていたが、そこまでの物は作れないが構わないか聞いて、それで構わないとのことだったので了承した。
料理についても、お米料理をこの国にも広めれば美味しいお米も気軽に買えるようになるかもと考え、了承する。
和食は作れないが、洋食やなんちゃって西洋料理でなんとかなるだろう。
もう少し野菜の種類もあればいいんだけどな。
この件については、一度試作して皆の意見を聞いたりしたいので少し時間を貰いたく、一週間後に教えるということで話が付いた。
続いて、本題に入ることになった。
ここからは、侯爵様が直接話をするようである。
「ギリー君、イオナの街でクライン商会が売り込みに来た大型魔獣の毛皮類は、君が持ち込んだものでないのか。」
「さて、何のことでしょう。」
俺は一応しらを切ってみる。
「クライン商会は今までそう言った物を私のところに持ち込んだことがなくてね。菓子や料理の件につても同様だ。菓子や料理は君が持ち込んだものだ。それとほぼ同時にあんなものが持ち込まれたのはあまりに偶然が過ぎると思わないかい。」
うーん、ですよね。疑われますよね。
俺は回答に窮し、ディートをちらりと見る。
ディートと目が合う。ディートは仕方がないと口を開く。
「それに関しては、私共が持ち込んだものに間違いはありません。」
まぁそうだよね。認めざるおえないか。さてどうなるのだろ?
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