第36話 今後について話をしよう
イオナの街で、その後もギルドに顔を出したり、色々買い揃えたりで、慌ただしく一週間を過ごした。
ようやくある程度、落ち着いて来たので、今後のことを、彼女らと改めて相談することにした。
「あと、二週間したら、また遠征になる。今度は、あの家を持っていく予定なので、今より過ごし易くなるだろう。」
「だなぁ。」
「それでだ。あの家を狩りの間任せる人を雇いたいのだが、口が堅い人間に心当たりはないか?」
「どのような方がよろしいのでしょう?」
「まぁ、掃除とベットメーキング、洗濯、それと馬の世話をして貰えればいいかな。これは、絶対条件ではないのだが、魔力が十分ある人だ。
風呂や魔道具の魔力補充もしてもらえるが、そう都合の良い人材は見つからないだろうからな。」
「そうなると、貴族家で給仕をしている、もしくは、していた人がいればいいでしょう。
口の堅さは、契約呪術である程度縛れますからね。ただ、充分な魔力持ちとなると、どこも引く手あまたですから、都合よく見つかりますかね。」
「契約呪術なんてあるのか?」
「結構、一般的ですよ。貴族と商人や貴族同士の契約などは、呪術を用いての契約が多いですね。」
「俺のあの契約も契約呪術が用いられてたのか?」
「いいえ、あれは、貴族とギリーさん個人ですから、用いられておりませんね。用いられるときは、それにお互いの同意が必要になります。」
「そうなんだ。呪術なんていうから、なんか禁忌なものでいつの間にか呪われるというイメージがあったのでね。」
ゲームに近いだけの世界だから、ゲームに無い知識が多いよね。
「合意による魔力契約ですが、一方的に不利を及ぼすので、呪術と言われているだけです。」
「なるほどね。貴族の給仕なんかは、外に出せないような秘密を持っていたりしそうだものな。
でも、そんな人心当たりないだろ?」
「なにを言っているのです。オーベルマイヤー侯爵家に紹介を頼めばよろしいではないですか。
今回、かなり太いつながりが出来たではないですか。」
「うーん、でも、こっちが逆に取り込まれちゃいそうで、怖いんだよ。」
「慎重すぎではないですか?」
「いえ、お嬢様、ギリーさんの言うことも間違っていないのではないしょうか。」
「そうでしょうかしら。」
「ギリーさんが、ただの平民ならお嬢様のお考えで良いでしょう。ですが、あの鞄や武芸の書のことなど知られれば、危険なことが多すぎます。」
「確かにその辺の特殊性は考慮すべきでしたね。」
ありゃ、特殊とか言われちゃったよ。
でも、実際に特殊かぁ。
「なに、変な顔してんだギリー、なんか言われてるぞ。」
「リア、失礼よ。そんな言い方。」
ミサさん、あんたの笑いながらそんな事言う方が、失礼だよ。
そんなことを思ったが、俺も大人なので、そんなことをおくびにも出さずに、話をする。
「ははは、なんか返す言葉がないなと思ってたんだよ。」
「で、どうするんだ?あたいは、頭がよくないからこういった話はよくわかんないけどよ。必要な人を雇いたいんだろ?」
「だなぁ、虎穴に入らずんば虎子を得ずか。
オーベルマイヤー様も貴族のパーティーが一段落しただろうし、侯爵様に伺ってみるか。」
「なんですの?そのこけつに何たらというのは?」
ああ、こっちのことわざや故事成語は、さすがに通じないか。
でも、虎なんて見たことないし、別の物で説明するか。
「ああ、魔物を狩ろうと思ったら、魔力溜まりに行かないと狩れないというような例えだ。
この場合は、給仕を雇いたいから、給仕をいっぱい抱えている侯爵様のとこに、色々と危なそうだけど顔を出してみるかということになるのかな。」
「なんか常識的なことは知らないのに、変なことは知ってますよね。」
ディートは呆れたようにそう言った。
まぁ、一応、行動方針も決め、オーベルマイヤー侯爵に会うために、手紙を届ける。
文面は、そう言ったことに詳しそうなディートとパルマに任せる。
うん、適材適所だ。
それと今後の活動指針も決めた。
今回の魔物の活動場所を地図に落とし込んで、比較的強い魔物が多かった土地の先を目指して、進んで行くことにする。
そうすると、やはり人が住んで居ない場所が多くなるようで、食料の確保とか今まで以上にしないと大変になりそうだ。
あと、馬車が使えるような場所も少なくなる。
まぁ、人が住んで居なければ仕方がないか。
となると、馬を多めに用意するか。
でも、乗馬なんてみんなできるのかな?
聞いてみたが、やはり、乗馬はみんな経験がないそうだ。
でも、歩きで行くのも大変だし、今回は時間があることだし、みんなで覚えようということになった。
あと、そうすると家の馬房も四頭分にして貰う必要がでてくるな。
馬車は預けるとか売り払うとか適当に言っておけばいいか。
それと人がいない場所では、野生動物や魔力をあまり必要としない魔物が頻繁に徘徊すようになるそうだ。
人が住んで居ない場所ということは、危険だからだろうし、そうなるか。
そんな危険な場所に、貴族に仕えていた給仕さんが来てくれるかな。
でも、習得と残りいくつかの武芸書も見つけないとだし、危険な場所に赴くのは仕方がない。
その辺がある程度、目途が付いたら、また今後について話し合おう。
上級の武芸書の習得も出来るような魔物って、ゲームだとダンジョンの中とかになってたんだよな。
こっちの世界だと、上級の武芸書がフィールドでも出たから、習得もフィールドでできるのかな?
その後は、いい時間になってしまったので、今日は自由行動にすることにした。
俺は、馬房のことを早めに伝えた方がいいと思い、アーベレ魔道具工房に向かい、そのことを伝えた。
それと、ご婦人の情報網を期待して、魔力持ちで街を出て給仕さんをしてくれそうな人の心当たりを尋ねてみたが、あいにくと心当たりはないとの事でした。
そう簡単には、見つからないよね。
その後、冒険者ギルドにも顔を出して、レジーナさんに雑談を交えて聞いてみた。
すると魔力持ちの人は冒険者を引退すると魔術師組合に所属して、そこの仕事を請け負ったり、貴族に仕える人が多いから、役立てないと言われた。
魔術師組合は、魔術書をくれるだけでなく、なんか仕事をしているのか。
当然と言えば当然だろうけど。でも、何をしてるんだろう。初級の魔法くらいじゃ、役立たなそうだけど?
そう思ってたら、レジーナさんが教えてくれた。街の魔石を使うのでは、採算がとれなそうな大型の魔道具に魔力を補充する仕事があるそうだ。
俺が、必要としていることを街でもしているのね。
となると危険な街の外での俺の募集なんて受けてくれないよな。
賃金を高くしても、使うとこがないしね。
これは、ますます侯爵様頼りになるか。




