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第34話 イオナの街で休息をしよう

 馬車をいつもどおり町はずれの牧場に預け、俺達はイオナの街に入る。

 宿の定宿にしている宿に顔を出すと、いつもどおり部屋を押さえる。

 ただ、遅く街に入ってこともあり、大部屋は、一つしか空きがなかった。

 まぁ、理由は、それだけでなく、貴族のパーティーは予定どおり、終わると、いつもはそれで閑散とするらしいのだが、今年は、まだ幾人かの貴族が残っているとのことだった。

 なんでも、パーティーに出られなかったご子息様、ご息女様にも焼き菓子をいくつかお土産として、持たせたそうだ。

 その味が気に入り、自分たちもパーティーの菓子が食べたいと要望があったので、それを叶えてやりたい貴族が侯爵様と話し合いをしているそうだ。

 やだね。そんな話し合い。


 俺達は、翌日、全員で冒険者ギルドに顔を出し、換金をお願いする。

 今回は、さすがに荷物が多いので、それを俺の鞄から出すわけには行かず、みんなで持って来たのだった。

 幸いにも、いつもの受付のお姉ちゃん、いや、お姉さん、レジーナさんがいたので、久しぶりに会話をする。

 それで、お菓子のお礼を言われたので、また、お菓子を少し多めに包んで渡す。

 なんか、背中に女性陣の痛い視線を感じるのですが、これは、仕事を円滑に進めるためなので、構わず続ける。

 そして、ハンマーヘッドリザードの頭部は、どのようにギルドに納めればいいか、確認をしてみる。

 一応、一つ天日干ししておいたのを、見本で渡す。

 しばらく、調べてくれたのだが、残念ながら、あれは鮮度が命らしく、ここのギルドでは引き取れないとのことだった。

 どうしよう。いつか使うこともあるかもだし、とりあえず鞄の肥やしにしておくか。

 魔石とその他のドロップも二か月分あるので、査定に時間が掛かるだろうから、また、日を改めて顔を出す事にした。

 レジーナさんから、三日後なら確実にお金を渡せるというので、それ以降に伺うことにする。

 そして、預かり証を受け取って、ギルドを後にする。

 

 その後も、武器屋に鉄屑にしかならない武器を売りに行く。

 こっちもみんなで抱えて持っていったのだが、量が多いにも関わらず、買い取り拒否もされずに、無事売ることが出来た。

 こっちは、量り売りなので、すぐ換金された。

 お金は後で、まとめて等分して渡すことにしてあるので、俺がそのまま預かる。

 女性陣に渡してもいいんだが、貨幣しかないのでやたらと重くて、嵩張るから俺が持つことにしている。

 俺は、鞄に入れてしまえば、重さは関係ないからね。


 「さて、軽く食事を済ませて、アーベレ魔道具工房に顔をだすか。」


 「なんか、昼間ずっとパンケーキを食べていたから、甘いものが食べたいな。」


 ミサは、なんか取ってつけたように、俺にそう言ってきた。


 「ずっと甘い物食っていて、まだ食う気なのか?そんな屋台は、さすがにないだろ。」


 俺が、困ったようにそう言う。

 すると、ディートが種明かしをしてきた。


 「実は、昨日、父の商会から手紙を預かりまして、それで今日、父が新しく始めるお店に伺うことになっていたのですよ。」


 「なんだそれ。」


 「そこは、お菓子を出す店なのですが、お菓子のレシピを提供いただいたギリーさんに開店前にご意見を伺いたいとのことです。」


 「そう言ったことなら、仕方ないのかな?」


 なんか腑に落ちないが、まぁ、それ位の協力はここまで手を貸したんだし、もう構わないだろう。

 ということで、アーベレ魔道具工房に顔を出す前に、その店に伺うことにしたのだった。




 店は見た感じ、一通り出来上がっているようだ。

 見た感じ、高級そうで、店の看板も、字の読めない人のために意匠でどんなお店かわかるようにしていない。

 正面玄関の前に着くと、男性従業員が近づいて来た。

 ディートは、彼に手紙を渡す。


 「わかりました。本日はお願いします。私は、店長を務めます。イグニットと申します。そのまま正面よりお入りください。」


 手紙に目を通すと、男はそう言って、扉を開いて、俺達を招き入れた。


 「こちらこそよろしくお願いします。」


 ディートは、そう言って、軽く頭を下げてお辞儀をすると中に入って行った。

 俺達も、ディートの後を追う様にして、店に入る。


 「いっらしゃいませ。5名様でよろしいでしょうか。」


 中に入ると、給仕の女性がそう声を掛けて来た。


 「ええ、お願いします。」


 「では、こちらへどうぞ。」


 そう言うと給仕さんは、明るい窓際の席に案内してくれた。

 窓と言っても厚手のガラスをつなぎ合わせて造られたガラス窓で、板ガラスのような透明感はなく、外から覗かれても中が見ることが出来ないような窓だ。

 それでも、これだけの大きさの窓だ結構値の張る物だろう。

 席に通されると、メニュー表を渡される。

 この辺は、俺がいた世界の喫茶店と変わらないようだ。

 それを受け取り、注文をする。

 俺が作った菓子だから、俺はわかるけど、文字だけだとなんだ変わらないんじゃ?

 現にお茶の類や、昔からの焼き菓子の名称はいまいちピンと来ない物もある。

 とりあえず、一応、意見を述べる役を仰せつかっているので、いくつか給仕に質問してみる。

 多少、おぼつかない所はあったが、なんとか質問には答えてくれた。及第点はだせるかな。

 そうして、注文をしする。


 料理が運ばれてくる。

 一応、お菓子の簡単な説明をして、テーブルに並べられる。

 多少行儀が悪いが、今回は、味のチェックも兼ねているので、それぞれの注文を皆でとりわけて、食べる。

 皆、それぞれ感想を述べながら、味わう様に口に運んでいく。

 うん、あまり甘過ぎず、いい塩梅で、出されたハーブティーにも合う。

 一通り、食べ終わり、ゆっくりと寛いでいると、先程の店長さんが現れ、意見を聞いて来た。


 写真やショーウィンドウがないというのは、どういった物か知らせる手段が限られてしまうので、いろいろ大変だなと思いながら、アイデアを伝える。

 メニューがわかりづらいので、メニューの数を絞って、最初のうちは店頭に見本を置いておくようにしたらいいのではないかとか、盛り付けやトッピングなどについて意見を述べたりした。

 向こうからも、いろいろ質問され、困りながらも頑張って答えた。

 それと、水もこの辺は軟水なので、飲用に適した水が水道や井戸から汲み上げられているので、その辺もサービスで出すようにしてはと言ったことも話した。


 その後、お土産用のお菓子の販売についても、見本を見せたり、味見できるようにし、注文をされたら、パッケージされた物を渡すことで、時間の短縮が出来るようにするとか、意見を出した。

 一応、これで役目をこなせたかな。

 大分時間を取ってしまったが、そんなことを考えて、店を後にすると、当初の目的のアーベレ魔道具工房へと向かった。



 魔道具工房に着くと、不意の来訪だったにもかかわらず、丁寧に迎えてくれた。

 うん、大口顧客なだけあって、待遇がいいね。

 ただ、工房の主人は、既に今作っている家の方で作業をしているとのことだったので、出迎えてくれたのは、奥さんのカリーナさんだけだった。

 カリーナさんの話だと、家の方はほとんど作業が終わり、内装と魔道具関連を今行っているところだそうだ。

 その辺もあと二週間もかからず、出来上がるそうだ。

 納期は事前に目安を聞いていたが、本当に早いな。

 俺が、そう感心していると、何でも建築用の魔道具がここ数年で充実してきたのが、納期が早い理由だと教えてくれた。

 ただ、実際には、その後手続等があるので、三週間後なら確実に引き渡せるとのことだった。

 それと、家の中も、もう見ることが出来るとのことだったので、明日にでも見学させて貰うことにした。

 家具とかの準備もしないといけないしな。

 明日はゆっくり、中を見させて貰おう。


 それから、俺達が居ないかった間の街の様子など何気ない世間話をする。

 俺達がいない間にあったパーティーは、この国の第一王子も出席して、それは賑やかに行われたということを、この店の顧客の貴族から聞いたと話してくれた。

 へぇ、そんなたいそうな御仁も来てたのか、本当に招待されたけど、出席しないでよかった。

 それとパーティーで食べた料理が今までにない物だったらしく、その味を自慢されたと、困ったように話していた。

 それを食べさせてくれもせず、自慢だけされちゃねぇ、ご気の毒なことで。

 そんな話も適当に切り上げ、いい時間になったので気持ちばかりと、アーベレ夫妻の分と大工の棟梁の分とお菓子をいくつか渡して、退出することにする。


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