第30話 魔狼を倒そう
ミサは、倒れ込んだ魔狼に向けて再度『風刃』を放つ。
起き上がることに気を取られていた魔狼は、起き上がりざまに『風刃』の刃を前足に受ける。
それでも、魔狼は、痛みで叫び声を上げながらも、こちらに真っすぐ突っ込んできた。
あの大きさで向かってこられると迫力が違うな。まぁ、車が向かって来るような物だからな。
パルマは、魔狼が自分を無視して、通り過ぎる瞬間、そうはさせないと盾を利用してタックルをして、こちらに向かって来るのを防ぐ。
普段の魔狼なら、人一人くらいが横から当身をしたくらいでは、びくともしなかっただろう。
だが、自身は弱体化と足の怪我でトップスピードが満足に出せないのと、こちらの身体強化により、パルマの体当たりをこらえることが出来ずに、押し倒されてしまう。
馬乗りになったパルマは、すかさず、ミサの魔法の『毒纏』が付与された状態の剣を脇腹に立てる。
その痛みにたまらず、魔狼は体の力を振り絞り、立ち上がるが、無理に立ち上がったため、パルマの突き立てた剣の傷口を広げてしまう。
そして、倒れ込んだ魔狼を見て、すかさず、リアとディートが挟み撃ちをするように距離を詰める。
リアは、パルマが傷つけた傷口めがけ、『炎纏』により強化された剣で『三連撃』を叩き込み、傷口を更に広げ。
ディートは、ミサが傷つけた足に狙いを定め、『風纏』によって速度が増した刀で『抜刀』からの『鬼神突』の打ち込んで、前足の骨を打ち砕いた。
魔狼は、バランスを崩しながらも、まず、目の前の敵を排除すべく、ディートめがけて、牙を突き立てて来た。
ディートは、『受け流し』で牙の勢いを削ぐが、勢いを完全に殺せず、上腕部に牙を突き立てられる。俺が戦闘前に張った『防御結界』のおかげもあり、牙は腕の浅い所で止まったようだ。
だが、噛みつかれたまま、ディートは振り払われ、大きく投げ飛ばされる。
ディートは、何とか体勢を整え、上手く着地する。
俺は、すぐにディートを『中回復』で回復させる。
ディートは、魔法で回復され、怪我をした方の肩を動かし、問題ないか確認し、大丈夫だと俺に合図を送る。
ミサは、魔狼に注意がリア達に向きすぎないよう、牽制で『魔弾』を撃ち込む。
うん、魔法使いは、大技を多用せずに注意を前衛に留めるようにしつつ、気を逸らさせる。いい戦いぶりだ。
ディートを投げ飛ばした魔狼は、首を返して、今度はミサに牙を向ける。
そこにパルマが、割り込み、魔狼の首を盾を跳ね上げて、牙の攻撃を逸らす。
そして、ガラ空きになった首元に剣を叩きつけ、体を入れ替える。
リアは、パルマが横に流れて、魔狼が正面に首を明後日の方向に向けて、がら空きになっているのを捉え、再び『三連撃』を入れる。
その後、自分は、距離を一度とるため、大きく後ろに飛びのく。
魔狼は、傷つきながらも、まだ戦意は失っておらず。低い唸り声を上げつつ、周囲に散らばった俺達の気配に注意を向ける。
うん、丈夫だな。あれだけの攻撃を受けてまだ、立ち上がれるのか。
でも、魔狼も足を怪我しているため、満足に動けないはず。このまま、慎重に押し込めば問題なく勝てる。
俺は、盾で魔狼に、二度当てているパルマと攻撃を受けたディートに『防御結界』をかけ直す。
ミサは、魔狼の足元に『土槍』を出現させ、突き刺そうとする。
魔狼は、魔力の気配を感じたのか、飛び退こうと跳躍しようとする。
しかし、怪我の影響もあり十分な跳躍にならず、躱し切れずに腹部に浅く突き刺さる。
パルマは、魔狼の跳躍を見て、落下点に回り込むように駆け出すと、ほぼ着地した瞬間に、盾で突進して、相手の態勢を崩す。
倒れ込む瞬間に魔狼も、とっさに怪我をしていない前足の爪をパルマに叩きつける。
すぐにそれを盾で防ごうとするが、強烈な爪の前に『防御結界』が抜かれ、盾も表面を覆ていた皮を切り裂かれ、内側の木製部分も壊される。
パルマも盾を構えていた腕を負傷し、弾き飛ばされ、背中から地面に叩きつけられる。
リアは、倒れた魔獣の後足めがけて、『三連撃』で切り込む。一振り、二振り、三振り、魔狼に攻撃が命中し、足の太腿から鮮血がほとばしる。
俺は、パルマに手早く、『中回復』と『防御結界』をかける。
パルマも回復されると、すぐさま起き上がり、魔狼に近づくため、走り出す。
ディートは、衝飛斬』と呼ばれる斬撃を魔狼めがけて飛ばすと、そのまま魔狼へ距離を詰めていく。
ミサは、リアへのフレンドリーファイアを避けるため、効果範囲の狭い『魔弾』で魔狼の腹部を狙い撃ち込む。
起き上がりざまに魔狼は、ディートとミサの攻撃を受けるが、分厚い毛皮に覆われた部分に当ったため、さしてダメージはないようだ。
魔狼は、そのまま体を引きづりながらも、リアと一対一でになって正対する。
そして、リアめがけて、飛び掛かって行く。
リアは、懸命に飛び退き、転がるようにして躱す。
俺もミサも、リアが近すぎて、いくら魔狼の体が大きいとはいえ、効果的な魔法を撃ち込めずにいる。
それでも、ミサは、『風刃』の刃を縦に展開し、撃ち込んだり工夫はしている。
だが、それだと命中範囲も狭まり、当たらず、躱されてしまう。
俺も、効かないだろうが注意力をこちらに少しでも逸らそうと魔狼に『金縛り』をかける。
ミサの魔法を躱し、俺の魔法を抵抗しながら、再び、魔狼はリアに覆いかぶさるように飛び掛かる。
今度は、魔狼の勢いもあり、躱せないと判断すると、魔狼の牙に剣を当て防ぐが、魔狼の勢いを殺せず、リアは、そのまま魔狼に覆いかぶさられながら、倒れる。
魔狼も、着地に痛めた足を庇ったため、リアに完全に覆いかぶされずに、横に流れて倒れる。そこへ、ディートが飛び込むように魔狼に剣を突き立てる。
そして、刀を引き抜きながら、バックステップで、後ろに下がり、『三連撃』で斬りつける。
それでも、魔狼は、なんとか起き上がろうすたところに、パルマが駆け付け、首元に剣を突き刺す。
魔狼は、大きな叫び声を上げると、霧散するように姿を消し、魔石と二本の大きな牙と毛皮がそこに残った。
「ふぅ、終わったようですね。」
「ええ、やりましたわね。」
「ああ、勝ったな。おい、ギリー勝てたぞ。」
前衛の三人は、魔狼のドロップを見やり、口々にそう言った。
俺とミサもそこに加わる。
そして、俺は、改めて前衛の三人の怪我を治療する。
リアは、最後に倒れ込んだときに、かなりの傷や打ち身を負ったようだった。
ディートとパルマは、『中回復』で完全に回復できていなかったようだ。
「見ろよ。大きな魔石だぞ。」
「うん、この牙も、毛皮も立派だよね。」
リアとミサは、ドロップ品を手に取りながら、そう感想を述べる。
「その毛皮、剣や魔法で散々傷つけたはずなのに、その後がありませんわね。」
「本当です。不思議ですね。」
ディートとパルマは、商売人として値踏みをしようとして傷のない毛皮に気付いたようだ。
「俺としては、倒した魔物が消えてしまう時点で、もう、何でもありな気がするけどな。」
そんな二人の言葉に、俺はそう反応する。
「まぁ、確かにそうですわね。」
「ええ。」
こうして、初めてのボス戦は、怪我こそ負ったが、致命傷にはならず、無事、勝利で飾ることが出来た。
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