第23話 休日を楽しもう 2
その頃、リア達は、以前アルノーさんに紹介状を書いて貰い行った服飾店に立ち寄っていた。
4人が注文した衣装の受け取りのためだ。
「でもよー。こんなのあたいらが買う必要あったのか?」
「そうよね。いくら、ディートさん達に今日の洋服代を出して貰ったとは言え、もったいない気がします。」
「何言っているのです。2人とも休みの日くらいはこれくらいの服装で出歩くべきですよ。」
「そうですよ。2人とも素材がいいのですから、いいものを着ないともったいないですよ。」
「そうですよ。その恰好でギリーさんと連れ立って歩けば、ギリーさんも喜んで下さりますよ。」
「ちょ、なんであいつに喜ばれなきゃいけないんだよ。」
リアは、そう言いながら赤くなり、うつむいてしまう。
4人でオーダーメイドした衣装を試着をし、そんな会話をしながら、衣装の最終調整を行った。
前回も、恥ずかしがるリアとミサを無理やり、ディート達はここに連れて来て、衣装代は出すからと無理やり衣装を選ばせたのだった。
今回も、ディート達がなだめすかしながら、リア達の衣装調整を行わせているのであった。
そして、最終調整が終わると最後の仕上げをしている間に、店に飾られている見本の衣装をみんなで色々眺め見る。
下位貴族も利用するような店なので、平民用の簡素なドレスだけでなく、一部にレースがあしらわれたドレスなども扱われている。そして、一画には婚姻用の煌びやかな物も飾られている。
この世界は、公の場では、着る衣装によって自分の属する階級が分かるようになっているのである。
唯一の例外は、婚姻の時の新郎新婦である。その時だけは、身分に囚われない衣装を纏い見せびらかせられる。といっても、盛大な結婚式を行えるのは、上級貴族と一部裕福下級貴族だけなのではあるが、それでも、身内だけであろうときらびやかな衣装を纏えるのはささやかな喜びなのである。
4人は、そんな自分たちが着ることもできないような、衣装に目を輝かせながら、眺め見たりしている。
その後、支払いを終えると、その足で、今度は、もう一つの目的地、ディートの家に向かうのだった。
今日は、訪れる連絡はしていないが、屋敷の門は、ディートがいるため、顔パスで通される。
いつもは馬車で玄関まで向かっていたが、今日は歩きだ。思ったより距離があるんだな。とリアが変な感心をしなら歩いて行くと、玄関に到着する。
いつもの執事さんに迎えられ、中に通される。
その時、ディートは、執事さんに家族に一包み、そして、屋敷で働く者にと二包み、ラングドシャをお土産として渡す。
「これは、私共にまでお土産を頂きありがとうございます。」
「彼から、日頃からお世話になっている方々へ、ということですわ。」
「では、ギリーさんへ使用人一同、心から感謝しますとお伝えください。」
「ええ、伝えておきますわ。それと今日は、お友達を家に招待したまでですので、私達にかまう必要はありませんわ。あと調理場を借りますよ。よければ料理人を呼んで下さい。」
「わかりました。して、本当に料理人を呼んでもよろしいので?」
「ええ、彼からは許可を頂いています。」
「では、そのように手配させていただきます。」
執事さんとそんなやり取りを行い。ディート達は、まずディートが私室として使っていた部屋に入った。
一応、既に空室と言う形にはなっているが、いまだにディートの私物も置かれており、掃除もなされていて、何時でも使えるようにしてある。
リアとミサは、部屋の中をしばらく物珍し気に見ていた。
パルマが、部屋の片隅に布を敷き、そこに荷物を纏めるように、リア達に声を掛ける。
しして、そこに今日買った荷物を置くと、汚れても良いようにエプロンを着け、4人は調理場に向かった。
調理場には、料理人が、既に待ち構えていた。
「今日は、皆様、よろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。今日は、私達だけで作れるものですので、そんなに構えなくても大丈夫ですよ。」
「いえ、こうして新しい物に出会えるのです。料理人冥利に尽きると言うものですよ。」
そんなやり取りをして、調理に入る。
まずは、ラングドシャを作っているとき、ギリーが漏らした言葉を聞き、作ってみたくなり、急遽ディートの家に訪問することになった原因になったお菓子である。
ギリーが、魔道具のオーブンがあれば、バターを作ったりと言った手間もなく、もっと簡単にお菓子が作れるのにな。と言ったため、皆が興味を持ち、作り方を聞いたものである。
と言っても、本当に簡単で、メレンゲを作る体力さえあれば、あとはそれに同量の重さの砂糖と気持ち一つまみの塩を混ぜて、オーブンで焼くだけというものである。
いわゆる焼きメレンゲである。絞り器があれば、見た目もきれいに作れるのだが、そんな物は用意できなかったので、天板の上に、スプーンでメレンゲを置いて焼いただけの素朴なお菓子である。
作り終え、焼き上がりを皆で一口摘まむ。程よい甘さとサクサク感が良いアクセントになって、ついついもう一つと口に運びたくなる。
「これは、美味しいですな。材料も簡単ですし。」
料理人がそう感想を述べる。
「だな。焼くのに時間はかかるけど、昨日作った菓子より、手間はないな。」
「でも、リアはバターを作るの楽しそうだったじゃない。」
「だってよ。振っているだけで塊ができるんだぜ。面白いって。」
「あの、そちらもお菓子は、作り方を教えて貰えませんのでしょうか。」
料理人は、お土産に貰った、ラングドシャも気になるらしく。そう尋ねた。
「大丈夫ですよ。それも教えるように仰せつかってますから。」
そうして、ラングドシャも、作り始める。
こちらも昨日さんざん作っているため、手間が掛かるが、慣れた手つきでどんどん作る。
こんなに作るのでしたら、お土産に持ってくる必要はありませんでしたね。
結局、お土産に持ってきた物も、自分達用にまたお土産に持って帰ることになった。
その後、料理のこととかも色々料理人に聞かれたが、そっちは火加減とか重要な所はまだ任せて居たりと、自信がないので、ギリーには、「料理も教えられそうな物は、どんどん教えちゃっていいぞ。」言われていたが、その辺には、手を付けずに調理場を後にした。
その後は、4人でディートの私室だったところで、自分たちで作ったお菓子を食べて、しゃべりながら、パルマの入れたお茶を飲み、しばらく過ごすことにした。
「今日は、あたい達だけでお菓子を作れて楽しかったな。」
「あら、それは、ギリーさんが居ると邪魔ということかしら。」
「違うって、ギリーが居なくても上手く作れて、嬉しかったんだよ。まして作り方聞いただけで初めて作った菓子もあったしよ。」
「だったら、料理の方も料理人さんに教えて上げれればよかったのに。」
「そうですよ。リアさんは、ギリーさんの助言無しでいくつか作っていたではないですか。」
「うーん、菓子は分量を教えられてるからいいけど、料理は感覚的に作ってるからな。教えるの難しいんだよ。」
そんな会話をしながら、昼下がりの一刻を彼女達は楽しんでいたのでした。
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