第19話 商談をしよう
翌日、ついに予定を決められずに迎えてしまった。仕方なく、街を適当にぶらつこうと、朝食を食べた後、出かける準備をしていると、ドアがノックされた。
誰だろ?女の子達は、朝食時何も言っていなかったから、違うだろう。考えても、思いつかないので、取り合えず返事をしてみる。
「はい、何でしょう?」
「失礼します。お手紙をお預かりしていますので、受け取りお願いいたします。」
どうやら、宿の人間らしい。
「わかりました。少々お待ちを。」
そう言って、扉を開けて、手紙を受け取り、チップとして銅貨を5枚ほど渡す。
どれどれ、手紙を見ると差出人は、エドウィン・クラインさん、ディートのお父さんだった。
さては、結果発表か?頭の中にドラムロールを響かせて、手紙を開く。
どうやら、お菓子の方は無事に採用されたらしい。それで、今後について打ち合わせをしたいので、また、お宅訪問をして欲しいという事だった。商会の方に馬車を回しておくそうなので、近いうちに来てくださいとのことだ。
なら、手が開いている今日がいいだろうな。
という事で、ディート達も巻き込もうと、彼女らの部屋に向かう。
ドアをノックする。
しかし、返事がない。
宿のフロントに行き、彼女らが出かけたか尋ねる。
「はい、先程4人で出かけました。」
うん、一足遅かったか。どこへ行ったか知っているか、聞いたが、知らないと答えられた。
しまったな。何かあった時のために、簡単な行先くらい聞いておくべきだったか。
でも、自分もどこ行くか決めていなかったしな。
よし、覚悟を決めて、一人で伺うか。
少し綺麗目の服装をして、商会へと向かう。まぁ、いつものシャツと革のズボンに帽子と皮のベストを羽織っただけだが。
まぁ、裏口からでいいよな。
「すみません。ギリーと言います。商会長に呼ばれてお伺いしたのですが、よろしいでしょうか。」
俺は、出て来た店の人にそう告げる。
俺のことは伝わっていたようで、すんなり、いつぞやの応接室に通される。
そこで、パルマのお父さん、番頭さんのアルノーさんから、今回の目的を詳しく教えられた。
第一にお菓子のレシピの取り扱いをどうするか。第二にお菓子のレシピの指導をどうするか。第三に、ディートから色々な料理も作っていると聞いていたので、振舞って欲しいとのことだった。
まぁ、一と二は、まぁいいよ。しかし、三は、どうだろう?
いろいろ作れと言われれば、まぁ、料理は、嫌いじゃないから作るけどよ。
それなら、パーティーの仲間には、今から作るなら夕飯のメニューになるだろうから、夕食の時間には戻れないこと伝えないとだよな。
なら、仲間の行き先が分からないので、宿にでも、そう伝言をしてもらう様に頼もうとすると、意外な答えが返ってきた。
居る場所は、わかっているので、この後一緒に迎えに行って、エドウィンさんのところに一緒に行こうと言って来た。
なんでも、昨日、パルマさんが、いつも利用している仕立て屋さんの予約を取りたいと、ここに来たそうだ。
まぁ、場所が判れば、もちろん、回収してお屋敷に向かうよ。
そんな訳で、今回はアルノーさんとご一緒に馬車に乗り込み、ディート達を回収しつつ、事情を説明して、ディートの実家に三度向かう事になった。
今回は、玄関に執事さんとエドウィン夫妻が迎えてくれた。
偶然だが、来るたびに出迎えが豪華になるな。
今回は、打ち合わせをするのに、こちらはいつもの5人、向こうはエドウィン夫妻、アルノーさん、ここの料理人さんで行うことになった。打ち合わせをするには、少し人数も多いこともあり、話し合いは食堂で行うことになった。
まず、レシピの取り扱いについて、これについては、アルノーさんと料理人さんから、一般的なレシピの扱いについて話を伺う。
いろいろな提供方法を伺ったが、俺としては、自分たちが使えればいいことと、独占さえされなければ、問題ない旨を伝えた。
それを聞いた、両人さんは、自分にもレシピを教えて欲しいと頼み込んできた。それにエドウィン夫人も同調したりしていたが、とりあえず、向こうの貴族が条件を飲むかの問題もあり、そこは保留にした。
エドウィンさんの話だと、相手の貴族は、ここの領主様で、オーベルマイヤー侯爵と言う方だそうだ。今回の来賓の手前、向こうもレシピの独占は望まないだろういう事らしいが、どうなるか。
レシピを他に提供する際の取り決めとかは、俺には全然わからないので、任せることにする。面倒事はなるべく避けたいからな。
次に、レシピの指導についてだが、出来れば、現地の厨房で実際に作る形で、教えることを希望した。
俺は、別に向こうの世界でも趣味で料理を作っていただけで、料理を教えることなどリア達にやっているくらいで、慣れているわけではないので、そこで実際に作って、覚えて貰うという事にした。
教える日時や人数は、後日、知らせて貰うという事になった。
しかし、パーティーに使うような量の卵や蜂蜜をすぐに用意できるのか、疑問に思って聞いてみたが、養鶏も養蜂もすでに行われているようで、貴重ではあるが問題はないらしい。
最後にこれは、打ち合わせ自体には、関係のない話ではないかと思うが、料理の提供についてだ。
まぁ、大きな商会と仲良くなるのはいいけど、すでに、ディートやパルマがいるので、不要のような気がするが、断りづらい雰囲気なので受けることにした。
それと、料理人さんが居るので、面倒なので一緒に作って、レシピを覚えて貰うことにする。また、あれやこれやと言われないように、さっさと教えておこう。
でも、作れるのって中華や和食が多いんだけど、まぁ、適当にやってみよう。
それで作ったのは、この間の朴葉もどきの蒸し鶏に香味野菜などを加えて、ボリューミーにした物をメインディッシュで作り。パスタのような物を作っていたので、料理人さんに、それを強力粉で薄く生地を捏ねて、寝かして、伸ばして、生地を作って貰う。それにスクランブルエッグを包んで、油で揚げる。いわゆるスパニッシュ春巻きと、鳥肉を酢やハーブで味付けしたフライドチキンぽい物を揚げ物として作る。それとスープとして、鶏ガラで作った野菜スープに卵を溶いで、片栗粉の代わりに小麦粉でとろみをつけて、完全な中華スープもどきを添えて出来上がり。
うん、ほとんど中華だよねこれ、材料がないから西洋風に寄せているだけだよね。
トマトやジャガイモを市場とかで見ていないし、聞いても知らないと言われてしまったので、俺の知識で作れる目新しそうな西洋料理が思いつかないので、こうなってしまった。
しかし、彩りが見事に茶色いな。それでも、料理人の人が頑張って彩を添えてくれて、見れる出来栄えになった。
食事の席には、打ち合わせのメンバーの他、最初の時も一緒だった。仕事から戻って来た長男夫妻、ディートのお姉さんが加わっていた。
料理の方も、物珍しさからか、皆さんに好評を得られた。他にも作れるかとか聞かれたけど、食材の違いなどまだ、完全に把握していないので、すぐには答えられなかった。
なので、この辺りの料理で何が一般的なのかわかっていないと、苦しい誤魔化しをしておいた。
それから、これらの料理をどこで習得したかも聞かれたが、俺のギリーとしての記憶にそんなものは当然なかったので、母から習ったと当たり障りのない答えを返しておいた。
あまり、俺のことは聞かないでくれ、ボロが出そう。
料理人さんも普段は同席しないようで、慣れない雰囲気の中で、これらの料理を再現できるかとか、いろいろ聞かれていた。
食事も終わり、帰る時、これらのレシピ料が渡された。それとレシピ譲渡の際などの約定も交わされた。
さすが商人と言うべきか、仕事が早いことで。
レシピの約定については、雛形がるのだろうけど、いろいろ考えて取り決めがなされていたので、ちゃんと納得してサインしましたよ。
その後、貴族とのレシピの取り決めも問題なく決まり、約定書も交わし、貴族の館で、リア達と慣れない雰囲気の中で料理指導も行い無事に終了した。
俺一人じゃ、あの中で教えたりするのは無理だったよ。みんなを引き込んで置いてよかったぜ。
ただ、そこで、エドウィンさんのとこで作った料理もいくつか、提供されることも知った。だが、そっちは、クライン商会からの提供なので、俺は知らんぷりをしておいた。
頑張れ料理人さん、同じ料理人同士だ、しっかり指導してくれ。
こうして、一連のことが片付いたので、俺達への報酬として、魔物の情報が提供されることとなった。
そこで、鬼人の情報が2か所新たに確認された。
ただ、それだけ場所を聞き取ると怪しまれるので、他にもいくつか聞いたことがない魔物の情報を交えて、聞き出すことにする。
貴族に中級武芸の書などを集めていると知れたらまずいどころじゃすまないからな。
そう考えると、貴族からこんな情報を聞くなんてかなり危険な行為だったな。
それと、報酬を情報だけで済ませては、貴族としての面子が立たないと言われ、別口でかなりの金額の金貨も頂いてしまった。
ここから、当人たちは遠慮したが、リア達に今日の手伝い賃を払い、リアとミサは、晴れて俺からの借金を完済した。
今回は、なんかゲームの知識でない物が役に立ったけど、こんな余計な知識を広めてしまって、よかったのだろうか。
あと、クライン商会から、必要ならパーティーの招待状を手配すると言われたが、貴族や大商人ばかりで場違いすぎるので、丁重にそれは辞退した。
取り合えず街への滞在が、大分長引いてしまい、その間の狩りにも満足に行けなかったが、無事に新たな情報を手に入れることも出来た。
そして、準備を整え、再び遠征に出向くことになったのだった。
今回の遠征は、街から結構離れた場所に目的地があるので、道中も気を付けなければならないようだ。
念のため、他の聞き出した魔物のいる場所もルートの途中にあるところは寄りながら、向かうとしましょう。
「それじゃぁ、街での生活が長引いてしまったけど、三回目の遠征に出発しようか。」
俺が、御者台でそう言うと、隣に座っているパルマが手綱を捌き、馬車を進めさせた。
まだ、仮免中です。混雑したところでの、操車は、まだ怖いです。
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