第18話 再度お菓子を作ろう
翌日、ディート達が馬車で戻ってくると、明後日に貴族宅に商会長らが伺うことになったと教えてくれた。
随分早く、面談が出来るのだな。面談時間は、三の鐘(午前10時)ということだったので、馬車の御者に前日の午後また、伺ってよろしいか伝えて貰うよう頼んだ。
さて、俺達は、こう話が早く進むと、習得にも行けなくなる。
今日は情報を集めるとして、翌日はお菓子作り、それ以降は、二日くらい完全に休みにして、それ以降リア達のために近場で狩りをするか。それに魔法はある程度実戦で使えば、習得は進むしな。
みんな、揃っているので、俺の考えた今後の予定を話す。
「近場で狩りが出来るのは、ありがたいけど本当にいいのかよ。」
「お菓子作りで忙しくなるのにいいのですか?」
リアとミサが、心配そうにそう尋ねる。
「一応魔法の習得にはなるし、武芸の方も全く入らないのかもわかっていないんだ。気にするな。ただ、菓子作りが優先になるので、予定は変わるかもだけどな。」
それに対し、おれは、そう答えた。
ディート達も異論はなさそうなので、今日は、前回同様2組別れて情報を集めることとなった。
だが、情報を持っているような街を行き来するような人間は、もともとさほど居るわけでもない。街自体も、中世レベルの地方都市だ人口1万人にも満たないだろう。3日目の聞き込みともなると、新たな情報は集まらなかった。
これで、領主からも有力な情報が得られないとなると、別の街、もっと大きな都市に行くことも考えないとならないか。
翌朝は、みんなで、ディートのお父さんの商会に商品を見に行くことにする。パルマに聞いたところ、店の売り場は、2階まであるそうだ。
俺も店の中を見るのは初めてだったし、リアやミサも区画的に、貴族や大商人が住まうような区画の近くにある店なので、初めて入るそうだ。
中を見ると、一階は、食品や雑貨を、布や家具、魔道具を扱っているようだ。
なるほど、これだけ色々扱っていれば、ディートがこの街で商売をすれば、お互い扱う商品がかぶってしまうと考えるのも仕方がないか。
いろいろ見繕いながら、買い物をしていく。リアとミサにも気になった物があれば買ってやるぞと言ったが、値札を見て、やめていた。
奢るのだから、遠慮しなくてもいいのにな。
いくつかの調味料、お茶類と食器を買い足しておく。こっちの世界に来て初めて聞くような調味料やお茶とかも、ディートやパルマ、それで分からなければ店員に使い方や特徴を聞いて、買ってみた。後で試すのが楽しみだ。
2階では、布をいくつかと、テーブル、結局、調理用の携帯魔道具も2つ程買い足すことにして、会計に持っていった。
すると、そこには、パルマのお父さん、アルノーさんがいて、商品はそのまま納めて下さいと言われた。
一応、金ならあるしと遠慮をしたが、今回、俺の作った菓子を貴族に紹介出来ることへのお礼だと言われた。
確かに、貴族には報酬を求めたが、商会の方には報酬を求めなかったが、いいのか?貴族側にお菓子が採用されてもいないのにお礼を貰ってしまって。
俺が迷っていると、パルマが受け取る旨の返事をして、話を進めていた。
この場合断るのは失礼なのだろうか?こっちのマナーとかも、これからのことも考え、やはりちゃんと知っておかないとだな。
俺も改めてお礼を言い、商品を受け取った。
ひととおり店の中も見せて貰ったので、退店しようとしたところ、アルノーさんに、商会長のお宅に行くのに、馬車に乗って行くように勧められた。途中どこかに寄るのなら、御者に行って貰えばいいとのことだったので、乗せて貰うことにする。
やっぱり、お屋敷街を歩いて伺うのも失礼になるのかな。確かに門から屋敷の玄関まで、5人でぞろぞろと歩くのも変だよな。
俺達は、一度宿に戻って、商会で買った荷物を宿の部屋に入れる振りをして、鞄にしまう。
それから、商会長のお宅に向かう。
その途中に、ディートとパルマに街の商家や貴族相手のマナーを教えて貰えるか聞いてみた。
2人は、悩みながらもこう話してくれた。簡単な差しさわりがないにと言った程度のマナーしか、自分らは判らない。貴族同士とかだと、それはもう沢山の礼儀作法があるらしく、身分によっても、覚えることは違うそうで、詳しくはわからないと言われた。
まぁ、今のところそんな深くかかわる気はないので、ディート達の知っている程度のことを、今度、遠征中の馬車での移動中に教えて欲しいと頼んでおいた。
屋敷の前に着くと今日は、執事さんと奥様が迎えてくれた。
挨拶を済ますと、今日は、商会長が不在との事で、そのまま調理場に向かう。
その途中に奥様とディートが何か会話をしていた。
ん、なにか家のことで相談か?
パーティー用の調理場に着くと、既に前回と同様の材料と道具が整えられていた。
これなら、すぐに取り掛かれるな。
そう考えていたら、ディートが俺の所に来て、奥様からの伝言を恥ずかしそうに伝えてくれた。
どうやら、奥様、ディートのお母さんは、自分たちの分も用意して欲しいらしかった。まぁ、前回は、俺達の分までお菓子を用意したから、量も少なかったしな。
ということで、前回の3倍を作っておくことにする。
なので、みんなで卵白を泡立てて、作業を一緒に進めていく。これで、もう彼女らも、分量さえ間違わなければ作れるだろう。
焼くのも、大きなオーブンだが2回に分けるようかと思ったが、十分な隙間を確保して入ったので、一回で焼いて行く。
スフレを焼いている間に、同じ要領でカステラの生地も作って行く。スフレが焼けたら、冷まして、今度はカステラの生地を焼く。
これで、スフレが6本、カステラが6本焼けた。それぞれ1本は、俺達の味見に消え。残りは3本は貴族様用、2本は、ここの家用に渡すことにした。
執事さんを呼んで、それらを渡す。今日は比較的早く調理が終わったので、夕食の同伴を俺達は、辞退する。ディートとパルマには、折角だからと残るよう勧めた。だが、明日は貴族邸に行くのにバタバタするだろうからと、今日は、俺達と帰ることになった。
これで、上手くいけば、貴族に仕える料理人にレシピを教えることになるんだけど、どうやって教えるんだろ?俺が、貴族の屋敷に行かないとなのか?
「ふー、終わったな。」
リアは、やり切った感で、馬車の中でそう言ってきたが、たぶん、まだこれからだぞ。
「これからが、大変だと思いますよ。」
ディートが、俺の考えていることが正しいと教えるようにそう言って来た。
「そうなのか?」
「ええ、これで、パーティーで出すと決まったら、貴族邸の料理人や手伝いでやってくる料理人に教えなくてはなりません。」
「でも、それは、ギリーがやるんだろ?」
「基本はそうですが、私達もある程度作れるようになっているのですから、サポートをする必要があるでしょう。」
「それって、あたい達が、料理人に教えるってことかよ。あたいは、冒険者だよ。そんなの無理だよ。」
「それを言ったら、俺だって冒険者だぞ。それに同じパーティーの仲間だ覚悟を決めて手伝え。」
いや、リサよ。その論理が通用するなら、俺だって冒険者だぞと釘を刺し、手伝う様に一押し声を掛ける。
どうせなら、みんなを引き込んでやる。
「でも、あたいに、できるかな?」
「ああ、ここ2回の作業で大分上手くなっているんだ。大丈夫だろう。」
「そうか。パーティーの仲間から手伝いを頼まれたんだから、逃げちゃいけないよな。頑張るか。」
「他のみんなも頼むぞ。」
リアが納得してくれたようなので、他のメンバーは、心配なく手伝ってくれるだろうが、声を掛けておく。
「はい。」
「ええ、しっかり手伝わせて貰います。」
「お任せください。」
「まぁ、俺の菓子が採用されなかったら、折角やる気になってるのに、悪いけどだけどな。」
俺が、茶化してそう言うと、皆、口々に否定してくれたけど、本当にまだわかってないんだからな。これで、だめだったりしたら恥ずかしいな。
次の日から、二日間休息を取ることにしたが、娯楽の少ないこの世界で特にやることもなく、過ごす事になる。
事前に暇を持て余すことが分かっていたので、斧の初級武芸書の習得がもうすぐ終わるので、強い敵の時は、習得のため、中級杖術を習得するため、武器屋で錫杖のような武器を買うのと、今回の遠征で作った簡易の地図と、ギルドの情報、それと聞き込みで得た情報を合わせて、ある程度使えそうな魔物情報を加えた地図を作成することにした。
休みにやることかと言われたら、微妙だが、やることもないので仕方がない。
武器は、錫杖系の武器が少ないこともあり、余り悩むこともなく買うことが出来た。
買ったのは、六角棒(体力+7、知力+5)という武器だ。数値的には、初期装備にしては、いい方だろう。でも、これって仏教の修行僧とかが持ってる奴だよね。まぁ、売っていたんだいいか。
その後は、宿で地図作りだが、ただ、距離表現が、歩いてどれくらい、馬車でどれくらい、という情報を元になので、ぎりぎり地図と呼べるような物しかできないけど、ないよりましだろう。
これも、得られている情報が大してないので、結局、地図作りは、半日作業で終わってしまい。残り半日はベットの中で過ごすことにした。
さて、明日は何しようかな。今日の夕飯の時にでも、彼女らが何しているかでも聞いて、参考にしようか。
でもな、おじさんが女の子の予定を聞いたりして、気持ち悪がられるかな。と思ったが、今は一応18歳の青年なんだよな。
それは、それで、女の子の予定を聞くなんて、誤解されそうだよな。
マジで、明日どうしようかな。
そう言えば、俺の頭ってどうなってんだろうな?青年、ギリーの記憶があって、俺の前世での記憶もある。頭の記憶容量は、二人分で既に70歳近くなっているんだけど、20歳位で認知症になったりしないよな?
まぁ、生きているうちに使う脳の容量は全体の何割無駄になるとか言っていたし、大丈夫だよね。
あー、余計なことを考えていると、不安が多くなるな。もっと、明るく、気楽に生きなきゃだめだよな。
ゲームとかアニメの主人公は、よくこんな環境に1人で放逐されて、前向きにいられるよな。おじさんは、こうして完全に一人になるとどうしても気が滅入るよ。
やっぱ、若さなのか?
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