第15話 目的の魔物を狩ろう
昼食は、ここのところずっとスフレパンケーキである。
「みんな、飽きたら言ってくれよ。」
一応、習得のため、半ば無理やり振舞まっている自覚があるので、そう聞いてみる。
「いや、これは美味いし、全くかまわないぞ。」
「こんな甘い物、今まで食べたことなかったので、同じく平気です。」
「これでしたら、本当に飽きない美味しさですよ。」
「はい、毎日どころか、毎食でもいいですよ。」
みんなは、甘い物が貴重な物なので、特に不満はないのか、口々に褒めてくれているが、今日で5日目、流石に飽きてこないかと心配になる。
俺は、2日目で飽きたが、作った本人が食べない訳にも行かないので、黙って食べている。
それとパンケーキも出来上がったら鞄に入れて、5枚同時に取りだすようにした。みんなで一緒に食べられるようになったが、それでも5枚作るのに1時間近く掛かるのを考えると、やはり調理器が3台は欲しいな。
街から真っすぐここに来るなら、馬車で一日もかからず普通につく距離だが、街道周辺の村々を巡回するように回ったのと、途中の村々の近くで魔物を探して狩っていたため、やっと目的の村に着いたのが、今日も午後になった。
今回の村に入ると、今回は村長の家でなく、市に来ていた狩人の家に向かった。
狩人の家に着くと、狩人がちょうど帰ってきたらしく、家の前で会う形になった。
「やぁ、一週間ぶりぐらいだな。覚えているかい。」
「あー、イオナの街の市であった、金払いのいい変わりもんの兄ちゃんか。どうした?」
俺の挨拶に対して、しばらく訝し気にこちらを見てから、思い出したようにそう言ってきた。
随分、あけすけにものを言って来るな相変わらず。まぁいいや、俺は、狩人とそのまま話を続ける。
「あの時聞いた、弓を使う変わった魔物を見に来たんだよ。もっとも、今日はもう遅いから、見るのは明日になるがな。」
「本当に変わっているな。そんなの見ても面白くもないだろうに。」
「いや、魔物が弓使うんだろ?面白そうじゃないか。」
「そう言うもんかね。あいつらは、あっちの森を抜けた開けた場所に火狐と一緒に居るよ。この時期は狩りは湖の方なので、生憎と俺は案内出来ないが。」
「そうか、残念だ。」
こいつは、狩りの間こっちには来ないのか、それは好都合だな。
「あ、そうだ、こいつを狩ったんだが、村の者に売ったんだが、生憎余っちまってな、買わないか?」
「お、鳥か?うまいのか?」
「おう、味は保証するよ。どうだい、1羽大銅貨5枚でいいぞ」
「よし、いいだろう。残っている2羽、買わせて貰うよ。」
「あんがとよ。ほれ。で、泊まる場所はあるのかい?」
「ああ、心配すんな。こいつを肴に野営するからよ。うちのパーティーは女性が多いから、変に村に泊まるより安全てなもんなのさ。」
「ははは、違いねぇ。手癖の悪いのもいるからな。」
「夕方の忙しい時に顔を出して悪かった。じゃぁな。」
「おう、わざわざ挨拶に来てくれてありがとな。おかげで、これから肉の加工をしないで済んで助かったよ。」
俺達は、そんな会話をして狩人と別れると、村を出て街道を少し戻ったところで、道を外れて茂みの奥に向かい、今日はそこで野営をすることにする。
狩人から買った鳥は、リア達に捌いて貰い、その肉を塩と香草で揉み込み下味をつける。そして、その肉を、イオナの街の市で買った朴葉に似ているが、それよりも大きくい分厚葉で包み、それを焚き火から少し離れた所に熾火を作り、それを投げ込み、蒸し焼きにする。
その間に、鍋に鳥のガラと香味野菜を入れて、一度煮溢して、再び火にかけてスープを作り、鳥の端肉と野菜をぶち込んで、塩と風味づけにパセリのような野菜を散らして、スープも作る。最後に味見をしながら、味を調えスープを完成させる。
うん、いい味だ。鳥の出汁に香味野菜の風味が程よく合わさり、食欲を刺激する。蒸し焼きもそろそろいいかな。
こうして、パンとスープと鳥の包み焼きで夕食を取る。
「相変わらず。ギリーの飯は美味いな。それに毎日、なんかしらの肉が食べられる。」
「本当に美味しいです。」
「ええ、美味しいですが、なんか申し訳ありません。」
「はい、私達が至らないばかりに。」
「まぁ、気にするな。いろいろ覚えて行けばいいさ。」
負担平等にするため交代制にしようと提唱して、上手くいかず意気消沈気味な、ディートとパルマを慰めるようにそう言う。
何となく、いつも向こうの世界でも毎日料理を作っていたこともあり、俺が料理を作っていたのだが、いつも任せきりはまずいとここ2回ほど料理番を変わったのだが、長年作っていた俺の料理の腕とこっち世界では焼くと煮るぐらいしかない料理の手法の差などがあり、結局、俺が作るのが一番うまいということになり、料理番を行うことになってしまった。
いつまでも、これでは、まずいだろうと料理を一緒に作って教えることにしたが、俺の料理が目分量で作っていることもあり、今日もなかなかうまくいかなかったのだ。
教えて見てわかったのが、技法の他にも、リアやミサは、あまり肉を使った料理を知らない。ディートとパルマは、あまり料理をしていないので、そもそも、上手く作れない。という点であった。
俺としては、このままずっと作っても構わないし、彼女らが、料理を覚えて、替わりに作って貰ってもいいと考えているので、あまり気にはしていないのだが。
「そうだよな。剣術と一緒で、毎日の積み重ねだよな。うん。」
ただ、リアだけは、経験値の差か、多少上達の目が見えているので、やる気は人一倍あるようだが、どうなるか。
翌朝は、簡単にフィットチーネのような平麺を茹でてから、昨日のスープの残りを使って少し煮込んで、それを食べた。
煮込んだことにより、麺にスープの味がほどよく染み込んでいる。
作っているとき、麺をスープに入れるなんてしないと非難めいたことを言われたが、食べ始じめると、感嘆に変わった。
こっちの人間は、麺にソースを絡めて食べるか、炒め混ぜて食べるのが主流で、スープに浸したりはしないそうだ。
日本人だった俺には、麺に汁なんて、うどんやラーメンなどそれこそありふれた調理法なので、あまり理解できない。
まぁ、食べて貰って美味しいと思ってくれればいいか。
そして、いよいよ目的の魔物と対面となるのだが、周りにいた狐は、茶や黒や白の毛色といろいろバリエーションはいるが、普通の狐だ。
一見すると、日本の某所にあったキツネ村のような雰囲気だ。
ただ、違うのは、やはり魔物で近づくと襲い掛かって来る。狩人は、火狐と言っていたが、素早い動き噛みついてくるだけなんだけど、どこに火要素があるんだ。
そして、魔物なので倒すと魔石が落ちて、体が消える。
「なぁ、これが、なんで火狐って呼ばれてるかわかるか?」
「ええ、おそらく落とす魔石が火属性だからですかね。ほとんどの魔物の魔石は無属性ですが、時々属性を持った魔石持ちが居るのです。」
「そうなのか。魔石に属性なんてあったのだな。まぁ、これなら、油断しなきゃ、大怪我もしなさそうだし、大丈夫そうだな。」
ゲームの時は、魔石は一括りだったけど、属性で何か変わるのか。どうせ売るもんだし、まぁ、いいか。
「だな。では、次にあの弓を持ったのを狙ってみるか。」
「ああ、頼む。釣るとき、弓で射られないように気を付けろ。」
「任せとけ。」
そう言って、リアは駆け出す。
弓を持ったのと、木の棒か何かを持っているな。もしかして杖術持ちか?構成的にバランス悪くないか?
リアが、周りの火狐を避け、弓持ち達の視界に入る。
相手は、弓を構え、器用にこっちに向かって来ながら、リアに射かけて来る。
リアも、矢を番えられたのを見て、左右に不規則に移動し、回避行動をとる。
俺は、それを見て念の為『障壁』の魔法をリアに付与する。これ、釣るの危ないな。周りの狐ちゃん達を倒してから囲って倒した方がいいな。
そんなことを考えていると、リアの近くに『火矢』の魔法が着弾した。
な、杖使いでなく、魔法使いか。
それを見て、俺は瞬時に指示を飛ばす。
「ミサ、魔法で狙える距離に近づき、急いで魔法を放て、俺達は的を増やすためにリアに近づくぞ。」
「「「はい。」」」
リアも、俺達が近づくのを見て、ミサが、標的にならないようにしながら、弓持ち達の方へ距離を詰めていく。
敵は、弓使いと魔法使いだけ、距離を詰められれば、抵抗する手段はほぼなくなり、あっさりと片が付く。
うん、釣るのは危険だな。そう判断し、今度からこいつらは周りの狐を倒して、囲んで一気に距離を詰めて戦うことをみんなに徹底させる。
今回のドロップは、残念ながら、魔石と矢が3本だった。矢は見た感じ使えそうだな。
しかし、鬼人タイプの武器持ちしか会っていないけど、俺のゲームでは、そう少しバリエーションがあったよな。その辺はもう少し他の場所の武器持ちを倒せばわかるか。
こうして、俺達は、ここで火狐と弓持ちをしばらく狩ることにした。
ちなみに、火狐のドロップは尻尾だった。
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