第14話 村々をまわろう
最初に寄ったのは、イオナの街に生鮮野菜を提供する役割を担っている典型的な都市近郊の村だ。
あまりに町が近いから、買い付けは難しいかな。
そんなことを考えながら馬車で村に近づく。村には、獣避けだろうか、簡易な柵が設けられている。
村の入口には見張りの男が立っていたので、御者台からディートが声を掛ける。
「初めまして、私は行商人見習いのディートと申します。今後の勉強のために村に寄りたいのですがよろしいでしょうか?」
「珍しいな女性の行商人とは。まぁ、入るのは構わないが、あそこにある村長の所で商売の話はしてくれ。」
そう言って、門番の村人は、村で一番大きな家を指す。
「ありがとうございます。」
ディートは、門番にそう礼を述べると、馬車を村長の家の方に走らせる。
「なぁ、こんな街の近くの村で買い付ける物なんてあるのか?」
「さぁ?それを含めた勉強ですよ。」
村長の家の前に着くと、馬車を止め、ディートは、俺達に待っているように言って、家のドアを叩く。パルマは護衛らしく、ちゃっかりいつの間にか後ろに控えていた。
ディート達は、村長としばらく話し合ってから、戻って来た。
「ギリーさん、あの鞄使わせて貰ってもいいかしら?それと銀貨1枚貸してくださいます。」
「なんか買い取るのか?」
「ええ、丸豆を10袋程買い取らせて貰おうかと。」
「わかった。あとで渡すよ。」
「ありがとうございます。」
そう言うと、再び村長の所に行き、馬車を一緒に牽いてついてくるよう言われた。
御者の初心者である俺は、馬車が速度が出ないよう、馬を一生懸命なだめながら、馬車を進ませた。
そして、納屋の前に着くと、男が俺だけだったので、村長が俺に指示を出してきたので、俺が丸豆と呼ばれている豆の入った袋を馬車に詰め込んだ。
その間にディート達は、村長にお金を支払い、取引を済ませて、村を出た。
村が見えなくなったところで、俺は、ディートに商人の鞄を取りだした。
「ほら、鞄だ。これを使っていいぞ。一応220種類の物をしまえる。例えば、さっきの丸豆の袋なら1種類で同じ重さの袋なら999個を1種類として扱える。ただ、武器等それぞれ性能が違う物は、1種類で1個になるから注意しろ。」
「本当によろしいのですか?」
「ああ、取り合えず一緒に居る間は、これを自由に使って貰って構わない。」
「ありがとうございます。随分優しいのですね。大切に使わせて貰います。」
「で、ここの魔物は狩りに行くのだろ?」
「ええ、大体の場所は、村長さんに確認しました。もう少し行ったところで、鞄に馬車をしまって向かいましょう。」
少し馬車を進めて、人の気配がないのを確認して、馬車を鞄に入れ、魔物のいる場所に向かう。
「ふぅ、やっとあたいの出番だな。」
「あら、暇でしたら馬車の警護で外に出て、村の様子を見たりしても良かったですのに。」
「いや。元は村の人間だし、村なんて大抵どこも一緒だから、見てもつまんねぇよ。」
「そんなもんかな。人を見るのも楽しいと思うが。」
「そうか?」
そんなことを話しながら、魔物が出る場所に到着する。見たところ、残念ながら、普通の魔物だけで武器持ちはいないようだ。
一応、しばらく狩って、武器持ちが居ないか様子を見る。ここの魔物は、イオナの街の近くに現れる魔物と同じ物なので可能性は低いが万が一もあるので。
1時間ほど狩りを行い。ここの魔物では習得にもならないので、御者は、ミサとパルマが担当で次の村に移動することにする。
次の村には、今日中に着きそうもないので、適当な場所で、街道を逸れて寝泊まりすることにする。
夕食は、携帯用の魔導調理器で塩とハーブをまぶした肉を焼き、街で買った小麦のパンもフライパンで温め焼いた肉を挟んだ物と、スープを作って食べた。野外なのであまり手の込んだものは作れないが、干し肉と黒パンと比べれば十分にうまい。
「その鞄やっぱいいな。旅先で新鮮な肉や柔らかなパンが食べられるなんてよ。」
「そうだよね。けど、私達は、普段、街中でも豆のスープと黒パンだったよね。」
リアの感想に、ミサがしみじみとした口調でそう加えた。
うん、貧しいは、敵だ。もう、そんな思いはさせないぞ。と心の中で誓い、別の話題に切り替える。
「でも、素材がいくらあっても、携帯用の魔導調理器があればだぞ。焚火や簡易竈じゃ、こうはうまく焼けないからな。」
俺は、携帯用の魔導調理器の性能に満足して、そう言う。
「そうですわね。」
「今日、調理して思ったが、もう1台か2台買っておけばよかったな。一度に量を作るのを考えると火が少なすぎる。」
俺が、今日料理を作ってみた感想を言う。
「いや、十分だって。」
リアが、飽きれた感じで否定する。
「そうか?パンケーキは1枚づつしか焼けないから、待つ時間かなりあっただろ。」
「あ、確かにみんなで一緒に食べるなら、そうだなもう少しあった方がいいか。」
「そのためにあんな高い物買うなんておかしいですよ。ギリーさん、よく考えて無駄遣いしないようにしましょう。」
就寝時間前には、馬車を用意し、荷台に柔らかな厚手のマットを敷いた。
「なんだこれ?ギリーが用意してくれたのか?」
「ああ、板の上に寝ると体が痛くなるだろ、使ってくれ。」
「いや、野外で平らな所に寝れるだけでもありがたいけど。どれ?」
リアはそう言って、マットの上に体横にした。
「おう、ギリーと一緒の宿のベットみたいに柔らかいな。これはいいよ。」
「本当に柔らかいですね。」
ミサも、マットを手で触りながら感想を述べる。
「ええ、柔らかいですわね。」
「これ、もしかして魔羊の羊毛を詰めたものではないですか?」
ディートとパルマも触り心地を確かめてそう言う。
「ああ、よくわかったな。魔羊の毛を詰めたマットだ。荷台いっぱいに敷けるサイズを探すのに苦労したぞ。」
「まったく、ここは素直に礼を言うべきですかね?ありがとうございます。」
「ええ、なんというか、ありがとうございます。」
ディートとパルマは、魔羊のマットと聞いて、困ったような礼を言って来た。まぁ、確かに値は張ったが、それだけの価値がある者だと思うのだが。遠慮しているなら、それは無用という物だぞ。
「いや、そんな困ったような言い方をしなくても、素直に礼を言ってくれればいいぞ。」
「おう、いつもありがとな。いろいろ用意して貰ってよ。」
「3人の会話からして、おそらく不穏なものなのでしょう。でも、ここは素直にお礼だけ言っておきますね。素晴らしい物を用意いただいてありがとうございます。」
なんかリア以外、なんか引っかかる感謝の言葉だったが、まぁいいだろう。
「気にしないで使ってくれ。見張りはまた、3交代でよろしく。今日はディートとパルマからだな。」
「「はい。」」
そうして、徘徊するタイプの魔物や野生動物に警戒しながら、一夜を過ごすのだった。
次の朝は、ソーセージとパンとハーブティーという簡単な朝食を済ませ、次の村に向かう。
残念ながら、次の村は買い取れるような物もなく、魔物もイオナの街周辺の物と変わらずという結果だった。
その後も、一日に1つか、2つの村を回る形で合計6つの村を回り、そこでライ麦を20袋と蔦で編まれたバックを10個仕入れたのだった。
魔物については、新たな魔物には出会えなかったが、遠征で出会う魔物にも3度程会えて、わずかだが習得もすることができたが、武器持ちの魔物には出会うことができなかった。
そして、移動中の暇なときに俺は卵がある限り、メレンゲを手繰りまくっていたのだった。調理の習得も頑張るぞ。
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