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第105話 宿で話をしよう

 俺達が宿に戻ると、ティア達は既に手紙を届けて戻って来ていた。

 紹介状が無くても、無事に手紙を渡せたとのことだ。

 その報告だけを聞いて、とりあえず夕食後に細かいところは話し合いをしようと言って、俺は一度そのまま部屋に戻る。

 夕食については、以前はこの宿を長く利用しているので、後半はもうその日のお任せとなっていた。

 なので、再びイオナに戻って来てからも食べる時は同様にしている。


 旅の移動の疲れが出たのだろうか、俺は夕食前にうとうとしてしまった。

 ベットで休んでいると、夕食の準備が出来たと呼ばれる。

 多少寝て、すっきりした感じを覚え、ベットから体を起こす。

 外を見ると既に陽は落ちていて、暗闇は街に覆いかぶさっていた。

 一度に起きれずに、遅くなってしまったかな?

 俺は少し急ぎ足で、女性陣の部屋に向かう。

 夕食の間はたわいのない会話で話が弾む。 


 そして、夕食が食べ終わると、俺達とティア達でお互いが今日のこと報告する。

 俺達の方は金銭の受領をしたのと、その間にいくつか買い物をしただけなので、簡単に終わる。

 替わって、ティア達はそうはいかず、いろいろと話さないといけないので、そっちは時間が取られる。

 ティア達がオーベルマイヤー侯爵家に手紙を届けた際に門の衛兵は短剣を見せずとも俺の名前を告げただけで、取り次いでくれたそうだ。

 なにそれ、短剣の叙爵も要らなかったんじゃないかな。

 とりあえず手紙を渡したので、これでまた数日おいて手紙の返信を待つことになったな。

 そう思っていると、ティアは懐から手紙を俺に差し出した。


 「なに、これ?」


 「はい、侯爵様よりの返信です。実際には話を聞いて、家令さんが書いてくれたのですけども。」


 ティアはそう言ってきた。

 なるほど、すぐに取り次いでくれたうえ、侯爵の話した内容をわざわざ家令さんがその場で返事にしたためてくれたのか。

 なんか貴族と思えないほどの迅速な対応だな。

 俺はそんな風に関心しながら、手紙を受け取る。

 たしかに侯爵家の蝋封がある。

 急いで書いてくれいるのに、蝋封は丁寧に押されている。

 この辺の仕事はさすがだな。

 そんなことを思いながら俺はナイフで手紙を開き、目をとおす。


 手紙の内容は二日後の夕刻に会いたいと手紙には書いてあった。

 こんな直近に会ってくれるなんて、かなり、無理をしてくれたのだろう。

 それとも名誉騎士に叙されているから、身内扱いで待たせずにとも貴族の体裁を保てるということなのか?

 なんにせよ、素早く対応してくれたのだ。しっかり、侯爵様に納得して貰えるように説明しないとだな。

 ただ、携帯トイレの魔道具の件で話をした後、その足で向かうようになるな。

 でも、さすがに貴族邸にお願いに伺うのに徒歩という訳にも行かないがどうしよう。


 「なぁ、魔導具工房との話し合いと日程が重ねってしまっているがどうする?魔道具店の方の日程をずらしてもらうか?それとも馬車を借りておくか?」


 俺はみんなにそう尋ねた。


 「それなのですが、こちらの都合を聞かれたので、魔道具店のことを話したところ、馬車を貸してくれると言ってくれた。ですので、了承してしまいましたが。」

 

 それにティアは申し訳なさそうに答える。

 そうだね。先方が設定した予定なのだから、こちらの関係者が顔を出しているのだから、その辺の調整もしてくれるか。


 「なら、それをありがたく、使わせて貰うか。」


 「ただ、御者は貸し出せないので、馬車は届けるがその後の操車はそちらでお願いします。そこは了承してくださいとのことです。それと家令さんは訪問が後ろにずれる分には問題ない言ってくれてました。」


 「魔道具店は携帯トイレの打ち合わせだけだし、そこまでかから、歩きで行き来しても問題ない時間だから、大丈夫だろう。」


 「それだと、魔道具店に行ってから、宿に戻れる時間はあるかしら?」


 ディートは俺の答えにそう言ってきた。

 なんでわざわざ宿に戻る必要があるんだ?

 俺は疑問に思い質問に質問を重ねる。


 「ディート、宿に戻るのか?」


 「戻らないと、魔導工房におめかしして行くことになりますわよ?」


 それを聞いて、俺は確かにと思い直す。

 俺はそこまで思いつかなかったが、家令さんはしっかりとその辺を含めた対応をしてくれたのか。


 「そうか。俺はそれほど変わらないから、それでもいいが、女性はそうはいかないか。」


 「さすがに工房にひらひら着ていくと、汚しそうだしな。」


 「ですよねぇ。」 


 俺の感想に他の女性陣もそう口々に話す。


 「なぁ、なら、冒険者の恰好じゃ……。さすが不味いか。」


 冒険者の恰好ならいいかと思ったが、僕権者として呼ばれたわけでもないし、さすがに商売ごとの交渉事でその恰好はまずいと思い直す。


 「ええ、不味いですわね。とりあえず、工房にも早めに伺って、頑張って宿に戻って着替えましょう。」


 「ですね。」


 「はい。先方も気を使って馬車を貸してくれたのです。あまり遅くならないようにしないとですね。」


 「そうだな。とりあえず報告も終わったし、他に話す内容もなければ、話はここで打ち切ろう。それと明日は馬車が来たら、すぐに出かけよう。」


 俺は一応報告も終わったことだし、そう言って話を切り上げることにする。

 仲間からはそれに対して、特に異論も出なかったので、今日はこれでお開きとなった。 


 部屋に戻ると夕食前に少し寝てしまったためか、明日、朝が早いのにいまいち寝付くことが出来ない。

 仕方がないので、副管理人さんのアーセルさんへ問い合わせをノートに書き込こもうと考える。

 一度、返事を貰ってから、あれから思いつくことをいくつ書いていることもあり、なかなか思い浮かばない。

 そして、やはりというか書き込んだ内容に対する答えは貰えていない。

 これ便利だけど、こう返事が遅くちゃ、あまり頼ることはできないな。

 結局、この日は何も書くことなく、明日の侯爵へのプレゼンテーションの内容をことを考えたりもする。

 こっちに関しては反対されることはないと思うが、俺達に任せて安心して貰えるように説明できれば、それに越したことはないしな。

 こっちの世界では、どのような客層を相手にするとか店にコンセプトはどうするとか、出店する人が漠然と考えて決めるだけなので、細かな事業計画や収支見込等は出しても無意味というか、理解されないだろうから、出資者のメリットとクライン商会長にも話した拡大政策の利点を重点に説明していくことを考え、それをまとめていく。

 この辺もあまり細かく説明せずにざっくりと話をしないとだからな。

 あまり、村人であったはずの俺が商売のことを細かく語るのはよろしくないだろうしね。

 それで、俺達の話に乗るのがお得だよと思わせないとだから、結構、まじめに検討するとどこまで話すかの塩梅が難しいな。

 そうこうしているうちに、眠気に襲われたので、今日は素直に眠りに就くことにした。

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