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第101話 商会長と話をしよう



 そして、応接室にとおされる。

 屋敷の給仕がお茶を運び込み、下がって行く。

 それを確認してから、エドウィンさんが俺に話しかけてきた。


 「今日は本当によく来てくれた。それと娘を貰ってくれてありがとう。」


 「いえ、こちらこそ。大切な娘さんと婚約させていただきありがとうございます。」


 「こちらこそ、外に出ていった娘です。また、こうして再会できて、しかも婚約者とも顔合わせが出来るなんて、思ってもみませんでしたから、感謝しております。本当に有難く思ってますよ。」


 「そうだぞ、ギリー君。妻の言うとおり、私も家を出ていった娘がこうして順調に過ごせているのを会って確認できるなどと言うことは、本来はあり得ないのだよ。なので、礼を言うのは、どちらかと言うとこちらの方だよ。」


 夫妻揃って、俺が婚約のお礼を言うとそう言ってきた。

 まぁ、貴族のような武力を持っていないと、街から街への移動も結構命がけになるら、なので街を出ていった娘がこうして普通に戻って来るのは、それだけ珍しいのだろう。

 俺達も実際に盗賊に襲われたのを撃退して、その報酬を貰いに戻ってきたわけだしね。

 それに婚約して俺が感謝されるというのもなんか、変に感じるよな。

 俺の向こうでの常識としては、可愛い娘を取られるという考えが多く、あまりよく思われないと思っちゃうのだよな。

 

 「いえいえ、大切な娘さんをいずれは娶らせて貰うのですから。」


 そう言って、愛想笑いをする。

 なんかやりにくいよな。

 

 「では、お父様。挨拶も済んだことですし、商談と行きましょう。」


 ディートが話を進めるべく、そう発言してきた。

 自分がいじられるのを気に入らないのだろう。

 その点は昨日のパルマと言い、父に物を言う娘という点はさすが幼馴染というか、似ているのだろう。


 「ああ。そうだな。では、ギリーさん、商談といこうか。」 


 エドウィンさんは、先程の君呼びから、今度はギリーさんと敬意を持って呼びかけてきた。


 「わかりました。それでは、……。」


 そうして、さっそく、エーデルシュタイン公爵との一件を差しさわりのない範囲で説明をし、店の出店を提案することになった経緯を話す。

 それと店の料理人もただ独立させるより、資金を出して他の街で出店をさせれば、料理人を増やして拡大して行っても上が詰まって、人の配置がいびつになることもなくなる利点も説明する。


 「なるほど、確かに料理人を同じ街で独立させるより、他の街へ手広く拡大していく方が限られたパイを取り合うことなく、拡大して行けるか。飲食店なら、そこの領主にさえ顔を繋げておけば、他の商売と違ってギルドに邪魔されることもないからな。」


 エドウィン商会長はそう感想を漏らす。

 食に関してだけは、徒弟組合的組織であるギルドの力より、店だけでなく、屋台での出店なども領主が許可したりしているので、新規参入も比較的容易なため、純粋に旨い、不味いの評価が優先されることが多く、ギルドが作られにくいらしい。

 なので、領主と懇意にさえなっていれば、味と価格が保証されていれば、横槍が入ることがあまりないのである。  

 

 「ええ、それに今回に限っては、エーデルシュタイン公爵閣下の協力は得られますからね。それと向こうのレシピを共有できれば店の評判も上がると思いますよ。」


 「うーん、ギリーさんがそこまでいうとなると、向こうの料理もかなり美味いのだろうな。」


 「ねぇ、あなた。エーデルシュタイン公爵様なら、オーベルマイヤー侯爵様の同じ派閥ですし、前向きに考えてもいいのでは?」


 向こうの調理パンに興味を持ってくれて商会長夫妻も、結構前向きになってくれそうだな。

 なら、もう一押ししておこう。


 「はい、エーデルシュタイン公爵閣下からもオーベルマイヤー侯爵閣下に協力依頼をしてくださると言っておりました。」


 「なに?もう貴族同士でそういう流れになっているのか?」


 「はい。そうして下さるとおっしゃっておりました。」


 「なら、もう私がどうこう言える段階でない。侯爵閣下がその要請に首を縦に振れば、話は動き出すだろう。そうなれば私の方は、全面的に協力させて貰うよ。」


 そうだよな。俺でも貴族の二人で話を付けると言われたら、その結果に従うしかないものな。

 確かにこんな貴族の方でやると言ってしまえば、クライン商会としては反対も何もできないか。

 ならば、こっちに話をしなくても良いかといえば、話を聞いていなくてへそを曲げられないようにと言うこともあるしね。

 そんな訳で、そ渋々でなく、前向きの協力が得られそうなのは、今回の目的を考えれば、いいことだ。


 「ありがとうございます。これで、私の肩の荷も半分おりましたよ。」


 「しかし、商談とは言いましたが、この件に関しては、ギリーさんの利益はありますのでしょうか?」


 「ええ、まぁ。」


  確かにこの件については、俺自体は直接的利益はないが、マリーさんに話したとおり、この街のお菓子がエーデルシュタイン公爵領都でも食べられるようになる点もあるし、エーデルシュタイン公爵とオーベルマイヤー侯爵双方に恩も売れるという考えがある。

 それに元はマリーさんの救済のための提案みたいなもんだしね。

 なので、少し歯切れが悪いが、そう言って肯定しておく。


 「そうなのでしたら、よろしいのですが。商人であったら、必ず自分の利益を考えて、動くべきですよ。」


 そう考えると、俺は純粋な商売人として失格だな。

 俺は向こうでも事業主であったけど、アイディアを売ったり、技術者としての側面が大きかったしね。

 それにこっちでは商売をやると言っているけど、金儲けでなく貴族に俺らの価値を見せつけて、手を出すことが出来ないようを目指したものだしな。

 まぁ、そのためにもこっちでも商売を手広くやって、俺が今持ってる金を自由に出し入れしても、怪しまれないような基盤を作るために、売れるものを売りますか。


 「わかりました。その言葉肝に銘じておきます。それともう一つ、こっちは実利的な話になるのですが、エーデルシュタイン公爵領の特産物である布をいくつか買って頂けないでしょうか?」


 「ほう、あの名産品をですか。勿論、売ってくださるのでしたら喜んで買わせていただきます。ただ、失礼ながら申し上げさせていただくと、王都でそれを売った方が高く売れるのではないでしょうか?」


 エドウィンさんは買いたいと意思表示した後、ここで売っていいのか王都で売れば高く売れるのではと聞いて来た。

 それは言われるだろうと思っていたし、ここで売っていいのかもディートやパルマと相談して決めたので、それにこう返した。


 「それは王都へ向かわず、直接こちらに来たので売る機会がなかったので、それとしばらく王都方面に行く予定もないので、ある程度ここで売ってしまおうかと考えまして、よろしければ詳しくは布を見繕ったパルマと商談をお願いします。」 


 「では、そちらがそう言ったことも納得しての商談の提案と言うことなら、商品を確認させていただきましょう。」


 俺の言葉を聞いて、エドウィンさんもそう言う。

 では、布生地の販売をさせて貰うか。


 「パルマでは商談を任せる。一応、俺もこっちにいた方がいいか?」


 「いえ、私一人で大丈夫です。それより、夕飯の差配をお願いします。」


 「そうか。では、任せるよ。では、その間、ディート達は夕飯の準備に取りかからせてください。」 


 一応、娘の料理が食べたいと言われていたので、ディートの名前をだして、そう言った。

 さて、パルマにここは任せて、その間に夕食の準備に取りかからせて貰うとするか。

 俺の言葉を聞いて、パルマとリアが商品入れてあっった鞄をテーブルに置く。


 「では、私はパルマと商談を行うので、すまないが、食堂までの案内を頼む。」


 そうエドウィンさんは奥さんにお願いをした。

 今は商会長の立場と客なので、勝手知ったるディートがいても、奥さんに案内を頼んだ。

 もっとも、奥さんとディートの語らいの時間をとるといった意図もあったかもしれないが、なら、俺も協力しようかな。

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