第100話 商会長宅に行こう
翌日、朝早く、宿屋の俺の部屋にクライン商会から手紙が届けられた。
俺は手紙を読むと、商会長との面談は今日の夜、商会長の自宅でとなっていた。
他に手紙では、今日はディートの里帰りを兼ねて訪問ということで、馬車を使っての形式ばった訪問は不要と言うことと、娘も料理を作っていると手紙を貰っていたので、娘の料理が食べたいと用意して欲しい食事の人数を指定して書いてあった。
一緒に美味い夕飯を食べながら、話をしたいということなんだろう。ただ、向こうの数が少し多いな?
まぁ、向こうがそう指定してきたので、それに従うが、さて、それまでの時間どうしようか。
俺は、とりあえず街行きの恰好に着替えることにする。
とりあえず、皆の部屋に朝食のついでに、手紙の内容の報告に行く。
みんなも既に寝間着から着替え終えて、朝食も頼み終えていた。
俺達は食事をしながら、今後のことを話すことにする。
「食事の買い出しくらいしか、やることはないんじゃないか。」
「だよねぇ。」
「では、魔道具工房に行ってもよろしいでしょうか?」
リアとミサは休みの日も訓練をするくらいで、積極的に出歩かないのでそう答えてきたが、珍しくティアがそう提案してきた。
「うん、何か欲し魔道具でもあるのか?」
「いえ、そうではないのですけど、魔力補充用の魔石が調子よくなくなっておりまして。それで相談をしようかと思ったのです。」
「台所か風呂のか?そんな調子悪かったかな?」
俺は家の魔道具を思い浮かべながら、特に不具合はなかったようだったと思い、そう尋ねた。
「あ、あの携帯用のトイレの浄化機能のです。」
「あー、その辺は確認してないかったな。そうなのか。なら、そうするか。しかし、魔石ってそんなすぐに不調になる物なのか。なら、予備でその他のも用意して貰っておくか。」
あれは、移動中こまめに六人で使っているから、そんなものかと思いながら、なら、他の魔道具の魔石も結構早く悪くなるのかと思いそう言う。
「いえ、魔力補充型の魔石は普通はそれなりに持つ物ですよ。ただ、本来は そうそうこれだけの人数で、かなりの頻度で使うことを想定させていない魔道具ですから、その影響もあるのでしょう。」
俺の言葉に、ディートが携帯用トイレは想定以上の利用が原因であり、他の魔力補充型の魔石は問題ないだろうと伝えてくれた。
「そういったものなんだ。でも、そうなると、これだけでも予備を買っておく必要があるか。」
「その辺は事情を説明して、工房の方で予備を多めに用意して貰うとか、大型の魔石を使えるようにするとか、決めて貰うことになるでしょうけどね。」
「なら、そうするか。では、食事が終わって、一休みしたら、みんなで魔導工房に行き、その後市場によるか。」
俺の提案に、ディートの考えを話してくれたので、それに納得してそう皆に伝える。
そして、みんなもその提案を了承したので、しばらくした後にアーベレ魔道具工房へ向かう事になった。
アベーレ魔導工房の扉を叩く、奥さんのカーリンさんが顔を出す。
「あら、久しぶりです。今日はどのような御用でしょうか。それと、うちの魔道具の調子でお困りのことはありますでしょうか?」
そして、俺達にそう声を掛けてく来てくれた。
丁寧な対応な高級店でも、このような親身な言葉をかけてくるところは少ないので新鮮に感じる。
「ああ、ちょっと携帯用トイレの魔石の調子が悪いらしいので、ちょっと相談に寄らせて貰ったのです。」
「そうなのですね。あれは他からは特に苦情は来ていませんですね。少し詳しく聞いてもよろしいでしょうか。今日は工房主のフィリツがいませんので、申し訳ないのですが、すぐに対応できるませんが。」
今日はご主人はいないのか。
「そうなのですね。フリッツさんはどこかに仕事に行っているのですか?」
「ええ、魔道具の納品に行っております。」
「流行っているようで何よりです。携帯トイレの状況なのですが、……。」
そう言って、使用状況や頻度を細かく話していく。
「なるほど、そんな頻度でそれだけの利用をされているのですね。本来は貴族が移動の際に使用を想定しているので、そこまで使うとなると、確かに今使っている魔石では、耐えられないかもしれないですね。最初に、もう少し細かく聞いて対応するべきでしたね。そこは申し訳ありません。主人にもこのことは伝えて対応させていただきます。」
そんな訳で今回は事情を説明をしただけで、この件は終わる。
魔道具についても、今は必要な物もあまり思いつかないので、今回は話だけ終えて帰ろうとしたが、ちょうどそこにお孫さんがカーリンさんに会いに顔を出しに来た。
そこで、カーリンさんが、俺達を前にお菓子をくれた人と紹介してくれたので、お孫さんは大変喜んでお礼を言ってくれた。
喜んでもらったこともあり、俺は鞄から取り出した体を装って、お菓子を取りだして、お菓子をあげることにした。
それを見て、カーリンさんは申し訳なさそうに、お礼を言ってくれたが、俺が勝手にしたことなので、気にしないで欲しいと言って、また、三日後に訪れる約束をして別れた。
それから市場で、今日の食材を揃えることにする。
もっとも、鞄の中にかなりの食材もあるので、品質のいい食材や貴重そうな食材を買い揃えるくらいだけども。
いくつかの店で気になった食材を揃える。
「こんなものにしておくか。」
ひととおり、店を回ったので、そう言って切り上げようとする。
「そうだなぁ。もう少しすれば夏野菜も入って来るけど、今回はこんなものでいいんじゃないか。後はディートの親御さん達に何を振舞うか。考えないとだな。」
今ではすっかり、調理を主導する立場になっているリアもそう言って、同意する。
ある程度満足いく買い物が出来たので、少し時間が速いが、ディートの家に伺うことにする。
うーん、緊張するな。
そして、ディートの私邸に到着する。
本来は、客として伺うので、馬車に乗ってと面倒だが体裁を整えないといけないけど、今回はディートの里帰りということにさせて貰っているので、徒歩で来た訳だが、家と言ってもこれだけ立派な屋敷なので、歩いて入るのはなんか気が引けるな。
邸宅前の庭を歩いていると、遠目に屋敷の前に男女が立っていた。
どうやら、商会長夫妻のようだ。
屋敷に着くと、今日は商会長夫妻が嬉しそうに迎えてくれた。
ディートは駆け寄り、夫妻とディートはお互い体を抱いて、再会を喜び合ってっている。
それが一段落すると、俺達に向かい声を掛けてくれた。
今回はティアがいるが、侯爵家でティアにも会ったななどと語り掛け、暗に事情は知っていることをティアに伝えていた。
まぁ侯爵家に近い商人であるから、そこまでしなくても、ティアも察しているだろうが、安心させる意味もあるのだろう。
「まぁ、よく来てくれた。さぁ、中に入ってくれ。」
「本日はいくつかお話があってお伺いさせていただきました。よろしくお願いします。」
ディートのお父さんで商会長でもあるエドウィンさんが屋敷に招き入れてくれたことに、俺もそう言って、返事を返す。
「まぁ、そう畏まることもない。今日は娘の里帰りということで来て欲しいと伝えただろ。もちろん、仕事の話はそれ抜きで聞かせて貰うがね。」
俺の挨拶にそう言って、エドウィンさんは笑った。
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