ダイアル公爵令嬢は変態達には好かれてる3
予定より長くなってしまいましたが、最後まで読んで貰えたら、嬉しいです。
「ダイアル様、先日の貸しを返して下さい」
「先日の貸しって?」
「惚けないで下さい。私を下着ドロボウ扱いしたじゃないですか」
惚けようとしたが、駄目だった。
「それで何をして欲しいのよ」
「デートして下さい」
「デートだけなら、良いわよ。本当にデートだけならね」
「本当ですか。とても嬉しいです。もちろんデートだけですよ。取り敢えずウィンドウショッピングをしましょう」
カオルとウィンドウショッピングをしながら、王都の中心街を散策した。
「カオル嬢め、抜け駆けしやがって」
「ズルいです」
「絶対に許せん」
「吊し上げてやる」
私達の後を付けている四人の人物が居るのを、全然気付かなかった。
「お姉ちゃん達、二人かい」
「俺達と遊ばない」
「「・・・・」」
お約束通りにナンパ男達が現れたが、スルーした。
「シカトするなよ」
「冷たいじゃんか」
執拗に絡んできて、私の肩を掴んできた。
「おい、その汚い手をダイアル嬢から放せ」
「そうよ。ダイアル様の肩を放しなさい」
「ダイアル嬢の美貌が損なわれるだろう」
「ダイアル嬢、直ぐにお助けします」
「エムル様、ユリカ様、ナルカ様、ジョイ様」
平手打ちでもしようとしたら、顔見知りの四人が現れた。
「・・・・そうかよ」
「・・・・行こうぜ」
ナンパ男達は不利なのに気付いて、直ぐに立ち去った。
「ありがとうございます。助かりました」
「どうして貴方達が此処に居るのよ」
「「「「・・・・」」」」
四人全員が視線を反らした。
どうやら私達の後を付けてきたらしい。
デートは保留にして、六人で遊ぶ事になった。
カオルが不機嫌になったが、後日に再びデートをすると約束したら、機嫌を直してくれた。
「私の敬愛するダイアル様と集団デートなんて、絶対に許せない」
「私の婚約者となるダイアル嬢と集団デートなんて、万死に値する」
「私のお姉様になるダイアル様と集団デートなんて、悔しいやら、羨ましいやら、複雑な気分よ」
「何だ。お前達は」
「「王太子殿下?」」
「お前達もダイアル嬢を狙っているのか。王太子の私が命じる。お前達は手を引け」
「そんな横暴な」
「お断りします」
「不敬罪で処刑されたいのか」
「「・・・・」」
「分かったなら、返事をしろ」
「「・・・・分かりました」」
ジゼルの横暴な命令にネアンナとショコラは従うしかなく、二人はリタイアした。
「あれ、隠しておいた下着が無い」
デートが保留になったので、その代わりに匂いを嗅ごうと思ったのに、肝心の下着が無くなっている。
これではクンカクンカ出来ないじゃない。
「これがダイアル嬢の下着か。お前達、良くやった」
王太子直属の影の者がカオルが留守の間に忍び込んで、隠していた下着を見つけ出して、ジゼルに献上した。
先ずは頭に被ってみよう。
ジゼルは下着を頭に被り、ニヤニヤした顔になった。
「ジゼル、お前が女性の下着を頭に被って、ニヤニヤしていたと影の者から報告があったが、それは事実なのか」
国王陛下から執務室に呼び出されて、下着を被っていた事を追及された。
「・・・・はい」
国王陛下直属の影の者の報告なので、絶対に誤魔化せない。
もし嘘の返答をすれば、反逆罪にされかねないので、正直に答えた。
「お前には失望した。王太子の資格を剥奪する。サドル辺境伯の元で反省しろ」
ジゼルはサドル辺境伯の領地での再教育を命じられてしまい、リタイアするしかなかった。
こうして三人の変態はダイアルに認識される前に、自然消滅していった。
「それで結局はこの下着はカシワ公爵家令嬢の持ち物なのか、イオニック侯爵家令嬢の持ち物なのか、どちらなのだ」
ジゼルはカシワ公爵家令嬢ダイアルの持ち物だと言い張っておるし、影の者の報告ではイオニック侯爵家令嬢カオルの部屋から盗難されたとの内容だった。
どちらが正しいのだ。
「陛下、発言をお許し下さい」
「許す」
「こういう事は考えられませんか。イオニック侯爵家令嬢の部屋から盗難されましたが、本来はカシワ公爵家令嬢の持ち物だった。つまり二人はイオニック侯爵家令嬢の部屋で下着を脱ぐような行為をしていたのではありませんか」
「どういう意味だ」
「二人は同性愛者という意味です」
「同性愛者だと」
「カシワ公爵家令嬢は淑女の鏡のようだと噂されておりますが、本性は男性みたいな性格らしいです。よほど上手く猫を被っているのでしょう。イオニック侯爵家令嬢は他人の匂いに興奮する性癖だという報告があるのです。しかも寮の大浴場でお互いの身体を洗ったり、匂いを嗅いだりしているという目撃情報もあるのです」
「ではどちらに下着を返却すれば良いのだ」
「取り敢えず二人を呼び出しましょう。そして二人に決めさせるのです」
「・・・・分かった。そのように計らえ」
「畏まりました」
「陛下からの呼び出しなんて、何の用なのでしょう」
「私に聞かれても、分かりませんよ」
私とカオルは国王陛下からの呼び出しを受けて、王宮内の陛下の執務室を訪れた。
「二人共、わざわざ出向いてもらい、悪かったな。実はジゼルがイオニック侯爵家令嬢の部屋から盗難させた下着を二人に返却する為に呼び出したのだ」
ジゼル殿下がカオルの部屋から盗難させた?しかも下着を?何故それをカオルではなく私達に返却するんですか?私は関係ありませんよね?まったく意味不明ですよ。
「・・・・まさか」
カオルが真っ青な顔になり、何かを呟いた。
私が部屋に隠していたダイアル様の下着を盗んだのはジゼル殿下だったの。
ダイアル様も呼び出したのだから、あの下着がダイアル様の持ち物だというのもバレているのよね。
「カオル様、どうなされたのですか。顔が真っ青ですよ」
「・・・・何でもありません」
「この下着はカシワ公爵家令嬢の持ち物なのか、イオニック侯爵家令嬢の持ち物なのか、確認してくれぬか」
「この下着だ」
「あれ、この下着は」
宰相様から渡された下着を見て、驚きました。
寮の大浴場の脱衣場で紛失した私の下着だったからです。
「これは私が寮の大浴場の脱衣場で紛失した下着ですけど、それが何故カオル様の部屋から盗難されたのですか」
「それを知りたいのは余の方だ」
「申し訳ございません。私が大浴場の脱衣場から盗みました」
突然カオルが土下座と謝罪をしたので、益々混乱してきました。
事の起こりはカオルが大浴場の脱衣場で私の下着を盗んだのが発端のようです。
そしてジゼル殿下がカオルの部屋に隠されていた下着を影の者に盗難させたみたいです。
しかも頭に被ったなんて、とんでもないド変態ではありませんか。
その事が国王陛下に報告されて、ジゼル殿下は辺境伯の元で再教育される事になり、私とカオルのどちらの下着だか分からないので、二人を呼び出したという事ですか。
つまり全ての元凶はカオルなのですね。
やはりあの時は嘘を付いていたのですね。
これはお仕置きが必要ですね。
「取り敢えずカシワ公爵家令嬢の下着で間違い無いのだな。それでは返却しよう」
「ジゼル殿下が頭に被った下着なんか要りません。絶対に受け取りませんよ」
下着の受け取りは絶対に拒否します。
「それなら私が代わりに受け取ります」
「カ・グ・ヤ・さ・ま」
「・・・・すみません。冗談です」
カオルが代わりに受け取るという戯れ言を吐いたので、睨み付けました。
「分かった。下着はイオニック侯爵家令嬢に返却しよう」
「へ・い・か」
「・・・・冗談だ。そんなに睨むな。下着は廃棄処分にする。ところで話は変わるが、カシワ公爵家令嬢の本性は男性みたいな性格なのか?イオニック侯爵家令嬢は他人の匂いに興奮する性癖なのか?寮の大浴場でお互いの身体を洗ったり、匂いを嗅いだりしているというのは本当なのか?二人は同性愛者なのか?」
国王陛下がとんでもない質問をしてきた。
「ち、違います。私もカオル様も同性愛者ではありません」
「そうですよ。同性愛者はビアン男爵家令嬢ユリカ様だけです」
「貴女は黙っていなさい」
どうしてユリカの名前をわざわざ出すのよ。余計に混乱を招くだけじゃないのよ。
「同性愛者以外は認めるのだな」
「・・・・はい」
嘘の発言は不敬罪になるかもしれないから、仕方なく他の事は認めた。
「本当だな」
「私の誇りに誓って、本当です」
「分かった。そなたを信じよう。用は済んだので、退室して良い。二人共、ご苦労だった」
国王陛下は満足感に溢れた表情で退室を命じた。
私達は執務室を退室して、そのまま王宮を退出した。
後はカオルへのお仕置きを実行するだけです。
「カシワ公爵家令嬢ダイアルか。本当に面白い令嬢だな。国王である余を睨むなんて、本当に男性みたいな性格だったな。淑女の鏡だという噂だが、よほど上手く猫を被っているのだな。ジゼルが懸想するだけの事はある。とても気に入った。特に未成熟な身体が良い。それにあの性格なら、王妃の重責にも耐えられるだろう。必ず王妃に迎えてみせる」
遂に真性ロリコンのラスボス変態が現れた。
ジゼル殿下が辺境伯の元で再教育される事になり、私は自由になった。
これで邪魔な変態戦隊デビルズの五人をダイアル様の周囲から取り除ける。
そして私だけを可愛い天使という二つ名で呼んでもらい、愛玩動物みたいに可愛がってもらうという、望みを必ず果たしてみせる。
そういえばもう一人邪魔者が居ましたね。
目障りだから、先に取り除いてしまいますか、それとも利用しましょうか、悩みますね。
ジゼル殿下が王太子の資格を剥奪されたので、もう遠慮する必要は無い。
これで五人のお邪魔虫を取り除ける。
そして妹(自称)として、ダイアル様をお姉様とお呼びして、精神的にも、身体的にも、愛し合いという、夢を必ず叶えてみせる。
そういえばもう一人お邪魔虫が居ました。
気に入らないから、先に取り除きましょう。
いや、もしかしたら利用出来るかもしれない。
「ショコラ様、お話がありますので、少し付き合って下さい」
「私もネアンナ様にお話があるので、付き合いましょう」
ネアンナとショコラが邪魔な令嬢を利用する為に接触した。
「ネアンナ様がダイアル様を狙う目的を教えて下さい」
「何故ショコラ様に私の目的を教えなければならないのです」
「実はネアンナ様を先に取り除こうと考えていました。しかし私一人ではあの五人のお邪魔虫を取り除くのは不可能に近い事に気付きましたので、目的の内容によっては、ネアンナ様と手を組めると思ったからです」
「・・・・分かりました。確かにショコラ様より、あの変態戦隊デビルズの五人の方が強敵ですからね。良いでしょう。お教えします」
「あの、その前に変態戦隊デビルズって何ですか」
「私があの五人に付けた二つ名です」
「・・・・」
もしかしてネアンナって厨二病?少し早まったみたい。
「どうかしたの」
「・・・・何でもありません」
「ダイアル様から可愛い天使という二つ名で呼んでもらい、愛玩動物みたいに可愛がってもらうのが、私の望みです
「・・・・それだけですか。愛してもらうとか、抱いてもらうとか、性行為をするとか、思わないんですか」
「そんな恐れ多い事なんか、考えていません」
「・・・・そうですか」
「それではショコラ様の目的を教えて下さい」
「ダイアル様をお姉様とお呼びして、精神的にも、身体的にも、愛し合うというのが、私の夢です」
「・・・・お姉様呼びは良いでしょう。しかし身体的にも、精神的にも、愛し合うなんて、恐れ多い事を考えていたのですか。私には想定外な夢です。分かりました。あの変態戦隊を取り除くまでなら手を組みます」
「その変態戦隊という二つ名を使うのを止めましょうよ」
「絶対に止めません」
「・・・・そうですか」
やはり早まったみたいだ。
「ショコラ様、宜しくお願いします」
「こちらこそ、宜しく」
こうして厨二病ド変態と妹願望ド変態が手を組ん
だ。
「やはり一番厄介なのはカオル先輩です」
「ではカオル先輩を最初のターゲットにするのですか」
「いいえ、カオル先輩は最後です。急がば回れですよ」
二人の企ては確実に進んでいた。
しかしその企てが実行前に崩れさる事を二人はまだ知らない。
「ダイアル様、起きて下さい」
「うるさいわよ。何時だと思っているのよ」
「一大事なんですよ。扉を開けて下さい」
仕方なく扉を開けたら、カオルが駆け込んできた。
「これを読んで下さい」
「王宮新聞?この新聞がどうかしたの」
「早く読んで下さい」
『国王陛下が遂に新たな王妃様をお迎えになると公に宣言した。先の王妃様がお亡くなりになられて八年が過ぎて、やっと新たな王妃様をお迎える決心をなされた。お相手はカシワ公爵家令嬢ダイアル様。十四歳の令嬢だ。国王陛下は四十六歳だから三十二歳違いだ。既にカシワ公爵の承認は得ており、お二人の婚約は時間の問題・・・・』
「なんじゃ、こりゃあああ」
国王陛下が王妃を迎える?相手はカシワ公爵家令嬢ダイアル?つまり私?もしかして新手のドッキリなの?訳が分からない。
取り敢えず実家に帰り、父に説明してもらおう。
「ダイアル様は王妃になられるつもりなのですか」
「そんな事知らないわよ。私だって初耳なんだから。取り敢えず父上を問い質す為に実家に帰るわ。詳しい説明は寮に戻ってからにしてくれる」
「・・・・分かりました」
「はぁ、国王陛下から私を王妃として王宮に迎え入れるという要請をされた。断固お断りします」
私は父から説明を受けて、激昂した。
王妃なんて絶対に無理よ。
陛下は何を考えているのよ。
もしかしてボケてしまわれたのか。
「絶対に嫌です。王妃になるくらいなら、修道院で生涯を過ごします」
「ダイアル、落ち着きなさい。今すぐ王妃になる訳ではなく、婚約するだけだ。王妃になるのはお前が学園を卒業してからの話だ。それに国王陛下直々の要請だ。拒否は出来ない」
「・・・・そうですか。分かりました。まだ納得出来ませんが、取り敢えず前向きに検討します。そう国王陛下に返答しておいて下さい
「本当にすまない」
「・・・・」
父が謝罪の言葉を述べたが、私は無言で寮に戻った。
「ダイアル様、説明をして頂けますか」
「国王陛下との婚約は本当ですか」
「婚約なんて酷すぎます」
「嘘ですよね」
「デタラメだと言って下さい」
「五人共、落ち着きなさい。確かに国王陛下から王妃に迎え入れたいという要請はありましたが、今は婚約だけです。そして国王陛下からの直々の要請ですから、拒否は認められませんでした。取り敢えず前向きに検討するとだけ返答しました。しかし私は納得していません。実際の成婚は卒業してからです。その前に何とか婚約解消してもらうようにするつもりです」
カオル達に問い詰められたので、今の状況を説明した。
「納得はされていないのですよね」
「本当ですか」
「嘘じゃないですよね」
「信じて良いのですね」
「安心しました」
どうやら落ち着いてくれたみたいだ。
「皆も婚約解消させる名案を考えてよ」
「難しいですね」
「陛下は意外と我が儘ですからね」
「生半可な手段では婚約解消しませんよね」
「いっそ暗殺するのはどうですか」
「暗殺するなら毒殺が良いですよ」
「却下します」
余りにも危険な意見が出たので、慌てて却下した。
「陛下、この新聞記事は何ですか」
私はこの国の宰相のショウサイ。
国王陛下が私に相談もせずに、こんな重大な事を公にするなんて、あり得ない。
遂にボケてしまわれたのか。
「宰相、落ち着け。ダイアル嬢の周囲の外堀を埋めただけだ」
「はぁ、こんなロリコン国王に目をつけられるなんて、ダイアル様もお気の毒に」
「ロリコン国王とは言い過ぎだろう」
「事実でしょう。四十六歳のクセに十四歳の令嬢を妃に迎えようとするんですから」
「うるさい。既に賽は投げられたのだ。それに実際に王妃に迎え入れるのは一年以上後だ。その時は十五歳になっておる」
「十四歳も十五歳も同じですよ。三十二歳違いに変わりありません」
「これだけ公になったのだから、撤回は絶対にしない。王家の威信の為にもだ」
「・・・・分かりました。私も腹を括ります」
「こんな馬鹿な話があるか。父上のロリコンオヤジ」
ジゼル元王太子の叫び声が辺境伯の領地に轟いた。
「国王陛下がダイアル様を王妃として王宮に迎え入れるですって」
「何なのよ。この新聞記事は」
この新聞記事でネアンナとショコラの企ては実行前に崩れさった。
「ダイアル嬢、僕の手作りのケーキです。是非食べて下さい」
マルメ子爵家子息のフトテル様が毎日のように手作りのケーキを食べて欲しいと持ってくる。
とても美味しいケーキなのだが、こう毎日では太ってしまう。
「フトテル様、太ってしまうので、毎日のように持って来ないで下さい」
「遠慮しないで下さい」
拒否しても、遠慮するなと強引に持ってくる。
このままでは本当に太ってしまう。
好意からの行動なので、強くは拒否出来ない。
「ダイアル嬢は順調に太り始めているな」
計画通りにダイアル嬢は順調に太り始めているので、僕は上機嫌になった。
僕は太めの女性が好みなので、憧れているダイアル嬢を太らせる計画を企てた。
もちろん恋人にしたいとか、考えている訳じゃない。
ダイアル嬢は国王陛下の妃になるかもしれない令嬢だ。
僕には絶対に手が届かない高嶺の花だ。
単に太ったダイアル嬢を見てみたいだけだ。
必ず僕好みの体型にしてみせる。
「ねぇ、フトテル様の行動って変じゃない。まるでダイアル様を太らせようとしているみたい」
カオルがフトテルの行動を不審に思って、ダイアルには内緒で皆に相談した。
「私もそう思う」
「そう言われると、少し変だな」
「私も同感です」
「フトテル殿を調べてみる必要がありますね」
全員の見解が一致したので、フトテルを調べる事になった。
「フトテル様は太めの女性が好みたいよ」
「私も同じような事を聞いた」
「私もです」
「明らかにフトテル殿はダイアル嬢を太らせて、自分好みにしようとしているな」
「そんな事は絶対に許せない。全員でフトテル殿を問い詰めよう」
「でも証拠が無いから、惚けられるかもしれない」
「フトテル殿のケーキを僕達が食べると言って、ダイアル嬢に渡す前に取り上げよう」
「今の処は出来るのはそれしか無いか」
取り敢えずケーキを取り上げる事にした。
「ダイアル嬢、今日もケーキを食べて下さい」
「ダイアル殿、私がそのケーキを全て貰っても構いませんか。実は妹達がフトテル様のケーキの噂を聞いて、食べたがっているんです」
「私は構いませんが、フトテル様の了解を得なければなりませんよ」
「フトテル殿、構いませんよね」
「・・・・えぇ、構いませんよ」
「ありがとう」
エムルはフトテルのケーキを全て持ち帰った。
「畜生。マゾの変態野郎のクセに邪魔しやがってよ」
「ダイアル嬢、今日こそケーキを食べて下さい」
「フトテル様、寮の友人達がフトテル様のケーキを食べたいらしいので、分けてくれますか」
「・・・・良いですよ」
「ありがとうございます」
カオルは分けてくれと言ったのに、全てのケーキを持ち帰った。
「ふざけるな。匂いフェチの変態女まで邪魔しやがってよ」
「ダイアル嬢、今日のは自信作ですので、絶対に食べて下さい」
「わぁ、美味しそう」
「フトテル様、私達も頂いて構いませんか」
「少しで良いので、お願い致します」
ナルカが連れて来た令嬢達がケーキを頂いても構わないかと聞いてきた。
「・・・・勿論です」
「嬉しいです」
「ありがとうございます」
「ナルカ様もお誘いしてくれて、ありがとうございます」
令嬢達は少しどころか、殆どのケーキを食べてしまった。
「何が少しだけだよ。あのクソビッチ共、結局は殆どのケーキを食べやがった」
「ダイアル嬢、今日こそは食べて下さい」
「フトテル殿、令嬢達だけじゃなく、我々にも食べさせてくれ」
「そうだ。令嬢達だけなんて、不公平だ」
「我々にも食べさせろ」
「・・・・」
ジョイが連れて来た子息達は遠慮せず、ケーキを食べ始めた。
「何が不公平だよ。あのブ男共、意地汚く全部のケーキを食べやがってよ」
「ダイアル嬢、今日こ」
「カオル様達だけなんて、ズルいです。フトテル様、今日は私が貰っても良いですよね」
フトテルが言い終わる前にユリカがケーキを取り上げた。
「・・・・お前達、いい加減にしろ。僕が折角ダイアル嬢を僕好みに太らせようとしているのに、邪魔ばかりしやがって」
フトテルは遂に激昂してしまい、愚かにも自分で企てを暴露してしまった。
「フトテル様?どうなされたのですか」
「やっと白状したな」
「とんでもない奴」
「本当に呆れるわ」
「退学は決定だな」
「当然よ」
「・・・・」
退学と聞いて、フトテルの顔が真っ青になった。
「そんな企てをしておられたのですか。私が被害者なので、処罰は私が決めます。卒業までフトテル様の自費で週末の休校日に私達六人にケーキを作るのと、寮の男子トイレ清掃を毎日させるのはどうでしょう」
「軽すぎませんか」
「また太りますよ」
「単にケーキを食べたいだけでしょう」
「意外と食いしん坊なんですね」
「欲望に忠実な貴女も美しい」
「お黙りなさい」
フトテルへの処罰はダイアルの提案通りに卒業までフトテルの自費で週末の休校日にケーキを作るのと寮の男子トイレ清掃を毎日させるのに決まった。
但しダイアル達六人にではなく、寮生全員にだ。
寮生達は歓喜したが、フトテルは血の涙を流した。
「聞きましたか。今日から新しいマナーの臨時講師が着任されるそうです」
「凄い美人らしい」
「楽しみだな」
子息達は新しい臨時講師の話で盛り上がっている。
「どんなに美しくても、私やダイアル嬢程ではあるまい」
「ナルカは兎も角、ダイアル嬢に関しては同意するよ」
「・・・・そうだね」
「エムル様、どうかなされましたか」
「元気がありませんよ」
「・・・・何でもありません」
「私が本日よりマナーを受け持つ講師のエスリ・ムエタイムです。皆さん、宜しくお願いします。それから一言だけ言わせて頂きます。私の授業中は私語は厳禁です。それでは授業を始めます」
「先生、質問が、ぎゃあああ」
子息の一人がエスリ講師に質問しようとしたら、突然悲鳴を上げた。
「私語は厳禁だと言ったでしょう」
エスリ講師がムチを手にしていた。
どうやらそのムチで子息を叩いたようだ。
「先生、何をするん、ぎゃあああああ」
「私語は厳禁です。何度も言わせないで下さい」
今度は抗議しようとした子息がムチで叩かれた。
「「「「「・・・・」」」」」
他の者は怯えて、無言になった。
こうして恐怖の授業は始まった。
「それでは本日の授業はこれまでとします」
「「「「「・・・・」」」」」
全員が無言で安堵の表情を浮かべた。
「何なのだ。あの講師は。まるでサドじゃないか」
「鞭で叩くなんて、狂暴過ぎます」
「・・・・そうだね」
「エムル様、本当に元気がありませんよ。やはりサ、エスリ講師が原因ですよね」
「・・・・そうです」
「そういえばあの講師はエスリ・ムエタイムって名乗りましたよね。エムル様の御親戚ですか」
「・・・・姉です」
「「「・・・・」」」
あのサド講師がマゾのエムルの姉。
衝撃の事実にカオル達が無言で、硬直してしまった。
私は知っていたので、平然としていた。
「ダイアル嬢、カオル嬢、お二人には明日の放課後から週に一度だけ私の特別授業を受けてもらいます」
ダイアルとカオルはエスリ講師から生徒指導室に呼び出されて、特別授業を受けろと言われた。
「特別授業ですか。理由を説明してもらえますか。サド女王様」
「木登り令嬢、その二つ名で呼ばないで頂けますか」
「分かりました。お互い過去の黒歴史は封印した方が良いですからね」
「ダイアル様、サド女王様と木登り令嬢って何ですか」
「カオル様、世の中には知らない方が幸せな事があるのですよ。だからその言葉は忘れて下さいね」
「そうですね。それがカオル嬢の為ですよ」
「・・・・はい」
ダイアル様の背後に大猿が、エスリ講師の背後に般若の姿が浮かんでいるので、物凄い恐怖を感じてしまい、素直に従った。
「エスリ先生、改めて説明して下さい」
「分かりました。説明しましょう。ダイアル嬢は王妃として、カオル嬢は専属侍女兼側近として、将来は王宮で暮らす事になります。その為に王宮のマナーを身に付ける必要があるからです」
「まだ王妃になるのは決まっていません」
「専属侍女兼側近なんて、私は初耳です」
「これは国王陛下直々の命令なのです。拒否は認めません」
「「・・・・」」
ダイアルとカオルは硬直してしまった。
王妃の専属侍女兼側近か。
何故か私がダイアル様の専属侍女兼側近になるみたいだ。
一生ダイアル様のお側に居られるのは、大変に嬉しい。
あのサド講師の特別授業を受けるのは嫌だが、我慢しよう。
王宮のマナーは王妃の専属侍女兼側近としては必須ですからね。
今まではダイアル様が王妃になるのは反対だったのですが、これからは賛成しようと思います。
ダイアル様、ごめんなさい。
問題は他の四人にこの事が知られると、吊し上げられるのは確実だから、絶対に秘密にしておかないとならない。
「カオル嬢、ダイアル嬢の専属侍女兼側近に選ばれたそうだな」
「カオル様だけなんて、ズルいです」
「この裏切り者」
「恥を知りなさい」
「どうしてバレたのよ」
「これだよ」
「王宮新聞?」
『ダイアル様の専属侍女兼側近が選ばれた。イオニック侯爵家令嬢のカオル様だ。彼女はダイアル様の・・・・』
「・・・・」
完全にバレて~な状況だった。
「お待ちなさい。カオル様が裏切ったなんて、大変な誤解です。カオル様は昨日まで専属侍女兼側近の事は知らなかったのですから。カオル様を非難するのは私が許しません」
「・・・・分かりました。カオル嬢、済まなかった」
「・・・・ズルいなんて言って、ごめんなさい」
「・・・・裏切者なんて言って、本当に済まなかった」
「・・・・恥を知れなんて言って、反省します」
「分かってくれたから、もう良いわよ」
ダイアル様の助言のおかげで、助かりました。
ありがとうございます。
『新たにもう一人の専属侍女兼側近と三人の側近が選ばれた。ビアン男爵家令嬢のユリカ様とトスカーナ公爵家子息のナルカ様とムエタイム子爵家子息のエムル様とウソップ伯爵家子息のジョイ様だ。・・・・』
「「「「・・・・」」」」
「ダイアル嬢、やはり王妃になるべきです」
「私も同感です」
「これでこの国は安泰です」
「王妃様になられるなんて、名誉な事ですよ」
「とても羨ましいですよ」
「・・・・」
五人全員が私が王妃になる事に賛成するようになった。
周囲の外堀が完全に埋められてしまった。
この裏切り者。
匂いフェチとレズの変態女二人が専属侍女兼側近に、ナルシストとマゾと女装マニアのド変態男三人が側近に選ばれてしまうなんて、絶対に納得いかない。
ダイアル嬢に仕えたい気持ちはあのド変態達には負けていない。
どうすればダイアル嬢に仕える事が出来るだろうか。
僕が他人より誇れるのはケーキ作りだけだ。
そうか僕にはケーキ作りの才能があるんだから、その才能をもっと伸ばせば良いんだ。
そして王宮の料理人になろう。
今日からケーキだけでなく、色々な料理を作ろう。
そしてあの五人のド変態に試食させて、アイツらを篭絡しよう。
先ずは筆頭変態の匂いフェチ女だ。
「カオル嬢のお好きな料理は何ですか。実は料理作りに嵌まっていて、試食をお願いしたいのですが、最初はお好きな料理にしようと思いまして」
カオルが食堂に一人で居るのを見計らって、声を掛けた。
「私の好きな料理ですか。え~と、クリームシチューですね」
「クリームシチューですか。それでは昼までに作っておきます」
「・・・・何を企んでいるんです。分かりました。下剤でも仕込むつもりですね」
「違います。純粋に料理の腕を上げたいだけです」
「・・・・そうですか。疑ってごめんなさい。お詫びとして、喜んで試食に協力します」
「ありがとうございます」
「ちょっと、待って下さい。カオル様だけなんて、ズルいですよ。私達にも作って下さい」
「その通りだ。私達にも作るべきだ」
「嫌とは言わないでしょうな」
「贔屓は駄目ですよ」
「四人共、無理を言うのは駄目ですよ」
いつの間にかダイアル達が居て、ダイアル以外の四人が試食を要求した。
「・・・・分かりました。お作りします」
「フトテル様、本当に良いのですか」
「はい」
「それではお言葉に甘えさせて頂きます。私もクリームシチューをお願いします」
「私はグラタンをお願いします」
「私はミートソースをお願いします」
「私はハンバーグです」
「私はピザです」
「・・・・申し訳ありません。同じのにして下さい」
「「「「えぇ」」」」
「我が儘は駄目ですよ」
「「「「クリームシチューをお願いします」」」」
ダイアルに我が儘は駄目だと言われて、四人は渋々クリームシチューにした。
「ダイアル嬢、ありがとうございます。それでは直ぐに取り掛かります」
「待った。その六人だけなんて、ズルいぞ」
「そうだ。我々にも作れ」
「寮生全員の分を作れ」
「・・・・ふざけるな。寮生全員の分なんか作れるかよ」
フトテルは寮生達の余りの我が儘に遂に激昂してしまい、料理による篭絡計画は不成功に終わった。
まもなく新年度になります。
つまり私が王妃になるまで、後一年を切るという事です。
しかし婚約解消させる有効な手段は未だに考えられません。
このまま王妃になる運命なのでしょうか。
神様、女神様、魔王様、誰でも良いから、教えて下さい。