第1話 魔王誕生
そこに明かりはなかった。
絶えず何かの声がしたが、何を言っているのか、わからなかった。
見えない手足が自分の意志に関係なく、見えない何かを壊していた。
いつも凍えそうなほど寒いのにその何かを壊しているときだけ、身体が燃えそうなほどあつかった。
私はここで起こる理解できないできごとたちに何か説明づけられるものはないかと模索していた。
だが、実際は何も見えない世界で、自分の意志とは無関係に動く手足に、ただただ翻弄されるばかりだった。
およそ私の人生は理解できることより、あきらめることの方が多かった。
どれくらい時間が経ったのだろう。
これも私の意志とは無関係に、あるとき突然、この真っ暗な世界に光が差すのを感じた。
突然の出来事だったが、私は目を覚ました。
どうやら光と錯覚したのは、私の胸を貫いているこの剣のことらしい。
なにか転機が訪れるのを期待したのに残念だ。
「これが3つの国を滅ぼした怪物か。
“凶化”していなければ、ただの少女とはな。
これが勇者として最後の仕事になるとは情けない......。」
私に剣をさした勇者らしき男も、満身創痍のようで、それだけ言って倒れてしまった。
私にも最期が近づくのを感じたので、辺りを見渡してみたが、目に入ったのは死体と壊れた建物だけだった。
『最高レベル記録保持者の死亡を確認。
神の“ダンジョン再建計画”により、能力を引継いで、ダンジョンマスターに転生します。』
能力を引継いだままとはな。
余計なことをする神様もいたものだ。
せっかく勇者が命がけで、とどめをさしてくれたのに。
一一そして、また明かりがなくなった。
次、目を覚ますとき、私はいくつの国を滅ぼしているのだろう。
積雪で辺りは真っ白なはずなのに、私のいるところだけが真っ赤にそまっていた。




