『忘年会』アホ口おバカ風味
私の恥ずかしい実話を基にしました。
時効でしょう?
誇張率は………内緒。
今から十数年前。
私もそれなりに、おバカさんでした。
今では、おバカさんをカモフラージュして、普通のオッサンの皮を被ってます。
ただ時々『呼んだ?』とおバカさんが顔を出します。
その時は『ハウス!』です。
それでもたまに、私のタガが外れた時は、上半身裸でおしぼりを振り回してます。
おバカさん100%になると、私も100%で安心できない芸を披露します。
脱衣は最強です。
あれは私が三十路手間で、会社の忘年会の時でした。
上司から順にお酌をする訳ですね。
お酌をしたら返杯。
ビール。日本酒。焼酎。
差しつ差されつしながら、一杯が二杯、二杯が三杯となる訳です。
あら、あそこに見えるのは通信カラオケ。
ハロー呼んだ?
チラリとおバカさんが顔を出します。
(ハウス!)
が、回りは盛り上がりに欠ける。
若い手は固いし上司もぎこちない。
笑い声すら白々い。
あら、布おしぼりが有りますね。
このままだと、グダグダになるパターンです。
おっ若手のお調子者が空気を変えようと『睡蓮花』を入力。
『良いんか?彼は才能はある。しかし、まだ荷が重いぞ。しかも世代のギャップを理解してない、せめてバカ旦那がいなくては』
おバカが真面目におバカな事を問かけてきます。
失礼な、若旦那の歌唱力と声が半端なく、他人が真似すると、バカ旦那になるだけです。
しかしおバカの言う事は間違っていない。
確かに彼のキーは高いし、歌は上手いが、乗せるのは又別のテクニックがいる。
しかも睡蓮歌の原曲は複数名で歌う為に難易度が高い。
これでは折角の盛り上がりに、パワーが足りない。
しかも、上司が『おっ』と彼に注目。
彼もそれに気が付きガチガチ。
『バカだな~、羞恥心を捨て、未来を捨て、刹那に生きないと無理なのに~』
いや、おバカなの?
バカにバカと言ってもしょうがない。
他の若手の援護は?
くそ、皮かむりやがって………モジモジ君か!
私は内心冷や冷やしながらパカッと烏龍茶を飲み干す。
烏龍茶と思ったら、ウィスキーやないか!
『ヒャッハー!ウェェェイ!!』
ハイ、おバカさんにニトロが入りました。
ウィスキー。
車にニトロ。おバカにウィスキー。
『なんだ、なんだ、ネクタイはずせ!おしぼり用意しろ!◯◯お前は脱げー!』
おバカが顔を出して、おバカな事を言い出しました。
あら、マイクがもう一本有るじゃないですか~。
デンモクもロックオン。
あ、記憶が……失くならないよね。
普通のオッサンに戻ったのは、駅のベンチでした。
背広とネクタイは、確りと身に付けているのに、Yシャツと下着がない。
変態だ!
しかもノーパン。
安心してください。スラックスは履いてますよ。
余計に悪い!
駅員さんが困った顔で近付いてきます。
見慣れた柄の布を指でつまんで。
オゥふ、マイトランクス。
結局は、電車でなくてビジネスホテルへGo。
いや流石に、ノーパン裸背広は難易度が高いです。
怖いでしょ?
Yシャツ無しのネクタイ姿のアラサーが一人でベンチに座っているんですよ。
そこに駅員さんがトランクス片手に、そんな男に向かって行くんですよ。
シュールですね。
怒ると顔をピクピクさせるって、本当なんだと、初めて知りました。
後日談
何故か給料がアップしました。
女将さん……サムズアップは止めて下さい。
親父さん止めて!
えっ、外回りに行け?
接待係?
マジで?
いや、そろそろ落ち着きたいんですが………
女将や社長は乗り乗り
吉本紹介してあげるからね!
行くか!
結局、五年程お世話になりましたが、芸人扱いでした。
ショータイムなんて要らない!ハードルがめちゃくちゃ上がりました。
無駄に芸力が上がりました。
駅員さんと仲良くなりました。
お客さん…駅関係無いって、突っ込みは無しですよ。
でも想像して下さい。
絵面は怖いでしょ?