62.三騎打ち
久々の更新です。
お待たせして申し訳ないです……
雲一つない空の下。
広々とした噴水公園でその男たちは互いに睨みをきかせていた。
「決闘の詳細は以上だ。お前らが負ければ無条件でこの案を呑んでもらう」
「ああ、約束しよう。だが、もし兄ちゃんが負けたら……」
「その時は好きにするがいい。逃げるもよし。この一連の騒動を俺に押し付けるのもアリだ」
俺の発言を聞いた途端、男たちはニヤリと笑みを浮かべると、
「その言葉、確かに聞いたぜ」
交渉は成立。
これでもう後戻りはできなくなった。
「い、いいんですかレインさん!? そんな取引をしてしまって……!」
だがその一部始終を間近で見ていたシェリーが俺の前に割って入ってくる。
俺に向けたその表情には不安に思う彼女の心情が深く現れていた。
俺はシェリーの頭にポンと軽く手を乗せた。
「俺なら大丈夫だ。あまり深く考えるな」
「で、でも流石のレインさんでも……!」
「勝ち目はない……か?」
優しく問いかけると、シェリーは言葉を詰まらせた。
本音は多分俺が言った通りなのだろう。
それをあえて口にしないのは彼女が心優しい証拠だ。
逆にそんな純粋な想いを持った子に心配かけさせてしまっていることに罪を感じる。
俺はシェリーの頭に乗せた手をそっと撫でながら、
「心配をかけてすまない。でも今は俺を信じてくれ」
「絶対、絶対にですよ?」
二度繰り返したシェリーの言葉には色々な意味合いが込められているのだろう。
俺は「ああ」と静かに返事をすると、彼女の頭からそっと手を引いた。
同時にシェリーが後ろの方に下がっていく。
「あの世に行く前のお別れの挨拶は済んだか?」
「ああ、バッチリだ。いつでも始めてくれ」
俺はそう言いながら鞘に収まった剣を再び抜くと、彼らの方へと剣先を向ける。
「ちっ、舐めたこと抜かしやがって……でもまぁいい。二度とそんな面ができねぇようにしてやる……おい、いっちょ派手にやるぞ!」
「ああ」「おう!」
男たちは自分たちの魔力を一点に集中させる。
合体魔法か何かだろうか。
どちらにせよ奴らは本気で俺はぶっ殺すつもりらしい。
ウソ偽りのない殺意がひしひしと俺へと伝わって来る。
「……」
俺は肩の力を抜き、深呼吸する。
恐らくはそれなりに大きな規模の魔法が来るだろう。
魔法を斬るというのはいくら鍛錬を積んでいる俺でも簡単なことではない。
しっかりと集中し、短い時間で精神を研ぎ澄ませる必要がある。
「……よし」
数秒間目を瞑り、そして再びパッと見開く。
そして。
いよいよ勝負の時が訪れようとしていた。