61.成敗
「ちくしょう……どうなってんだこいつぁ!」
「俺たちの攻撃が通用しない……だと?」
戦闘開始から数分。
盛大に始まった威嚇合戦とは違い、戦闘はあっさりと終わりを迎えようとしていた。
「もう終わりか? さっきまでの威勢はどこにいった?」
正直、少しだけ期待していた。
あのゲートを発現できるなら、それなりの実力があるのだろうと。
でも蓋を開けてみれば、どいつもこいつも三流術式を並べるだけ。
個々のレベルは大したことはなかった。
「くそっ! 剣士のくせに!」
見下げる俺にすごい剣幕で睨みつけてくる。
「あたかも剣士の方が劣っているといういいようだな」
「はっ、当然だ! 魔法文明の発展が進む現代で未だに鉄の棒を振り回しているだなんて俺には考えられないね」
「それ、言えてるわ。原始人かよって思うね」
こいつら……
「気に入らないな、剣を時代遅れだと言われるのは。誰が魔法の方が優秀だと言ったんだ?」
「ふん、そんなの誰がいったわけじゃねぇ。世間様の評価ってやつさ。時は魔法の時代だ。そしてこれからも魔法は発展を続ける。剣なんてあと数年もすれば古代の産物になってるさ」
「ほう……」
色々と言いたいことはある。
俺は今まで剣一筋でやってきたからな。
魔法もこれといって特に会得せず、鉄の棒一本で自分を鍛え、高めてきた。
だから剣を扱うことに関しては誰よりも思い入れがある。
別に剣士を見下すのは構わない。
それは個人の自由だ。
だがな、それを言った相手が悪かった。
「分かった。ならこうしよう。今からお前たちが俺に好きなだけ魔法を放つ。俺はそれを避けずに全て防いでやろう。もちろん、魔法は一切使わない。剣だけで相手をしてやろう」
ガキっぽい挑発に乗るのは癪だが、こいつらには物理的なダメージだけじゃ物足りない。
精神までしっかりとダメージを与えないとダメだ。
そうしないと多分こいつらはまた同じことを繰り返すだろう。
まぁそれはあくまで建前で本音は単純。
こいつらの発言が気に食わないのだ。
「お、おいおいマジかよ。お前ら聞いたか? 魔法に剣だけで相手してやるってよ」
「ちょっと実力があるからって調子に乗るのは止めた方がいいぞ、兄ちゃん」
人を小馬鹿にするような目だな。
ま、別に好きなだけバカにしてくれて構わないが。
「シェリー、もう少し後ろに下がっていろ。巻き込まれたら大変だ」
「レインさん……」
「俺なら大丈夫だ。すまんな、俺の我儘に付き合わせてしまって」
「い、いえ! でも……無理はしないでくださいね」
「ああ、分かっている」
俺はシェリーにこの場から離れるように指示をする。
自分でも子供っぽいとは思っている。
だが、俺にだって言われたくないことの一つや二つあるのだ。
「おいおい、あいつ本当にやる気みたいだぞ」
「くだらん。自分から危険な道を選択するとは」
「だが俺たちにとっては都合のいい話だ。あの男が望むなら、やってやろうじゃないか」
「へっ、バカなヤツだ。自分の能力を過信するとはこのことだな」
再び立ち上がる男たち。
どうやら俺の提案は通ったみたいだ。
「決まりだ、兄ちゃん。その提案、乗ってやるよ」