59.救出
「うおっ、なんだこの光は!?」
「あの娘からだ。早く様子を見てこい!」
眩い光で男たちの視線は一気にシェリーの方へと集まる。
そのうちの一人がすぐにシェリーの元へと駆け寄った。
「おい、てめぇ! なにしてやがる!」
「※※※※!」
口をテープで塞がれているからか、まともに喋ることはできない。
「この野郎、放っておけば妙なことしやがって……最初は下手に手を出すつもりはなかったが、どうやらお仕置きが必要みたいだな」
男はそう言いながら、シェリーの首元を掴む。
「~~~~~~ッ!」
首元を強く押さえつけられ、鼻で呼吸することもできなくなる。
テープのせいで口呼吸はできないため、シェリーの身体は徐々に酸素不足へと陥っていった。
「~~~~~~~~~~~~~ッ!!」
苦しい。
それ以外、何も考えることができなかった。
段々と意識が遠くなっていくのを感じる。
同時に頭の中が真っ白に染まっていき、もうダメだという諦めが彼女の脳裏を過る。
唯一、彼女の脳内に残っているのは……
(助けて、レイン……さん!)
助けを求める声だけ。
だがもう彼女の身体は限界に来ていた。
もう無理だ……その想いが最大にまで膨れ上がろうとした――その時だった。
「……ぐはッッ!」
神速の刃が男の身体を吹き飛ばす。
でも直接的な攻撃じゃない。
空気の刃と言うべきだろうか。
とにかく一瞬だけだったが、物凄い圧を感じた。
(間違いない。この圧倒的な力は……)
……レインさんだ。
♦
「間に合ったか……」
俺は抜刀した剣を鞘に納めると、すぐさまシェリーの元へと駆け寄った。
「大丈夫か!?」
その場で倒れるシェリー。
俺はすぐに口元のテープと身体を絞めるロープを解いた。
「れ、レイン……さん?」
全てが解かれた後、シェリーは何も言わず胸に飛び込んでくる。
そんな彼女を俺はそっと優しく抱擁する。
そんな時間が30秒ほど続き、俺はシェリーの肩に手を乗せると。
「ケガはないか?」
「は、はい! わたしなら大丈夫です。助けてくれて、ありがとうございます!」
見た感じ、大きな外傷はないようでホッとする。
「すまなかった、シェリー。まさかこんな目に遭っていたなんて……」
「わたしの方こそごめんなさい。さっきはあんなに意気込んでたのにこんな……」
「気にするな。お前が無事なら、俺はそれでいい」
でもあと少し遅かったら大変なことになっていた。
あの俺が吹き飛ばした男、シェリーを本気で殺ろうとしていたみたいだからな。
とはいえ、彼女を行かせたのは俺の失態だ。
その分の責任は果たさないといけない。
「シェリー、他の奴らは?」
「すぐそこにいます。あの、それで魔物たちの方は……」
「大丈夫だ。俺が全部始末しておいた。後は犯人をとっつかまえて役所に差し出すだけだ」
「さ、流石です。レインさん!」
「それは全てが終わったら、言ってくれ。……お前は後ろで隠れていろ、いいな?」
「は、はい!」
俺はシェリーにそう一言言うと、反対側に振り返る。
すると。
「……来るか。手間が省けたな」
さっきの一撃による衝撃音を聞きつけたのだろう。
ぞろぞろと犯人共がこっちまでやってきた。