58.導きの光
「まさか見つかってしまうなんて……上手く隠れていたつもりなんですが……」
「それよりもどうするんですかアニキ! 見つからないようにって話だったのに、見つかっちゃったじゃないですか!」
木陰から現れた二人の男。
一人は金色の髪を持った男。
顔立ちは整っており、年齢は俺と同じくらいと推測できる。
そしてもう一人。
こいつはなんかやんちゃっぽいヤツだな。
短髪と少しアホっぽい感じがそれを際立たせている。
こいつも年齢は俺と同じか少し年下か……
年上はないな、多分。
(まぁ、今はそんなことはどうでもいい)
それよりもこいつらは一体……
戦闘中はまだ気配を感じなかった。
戦闘が終わって初めて気配を感じたのだ。
と、なると。
このタイミングで出てきたってことはもしかしてこいつらが……?
「お前ら、何者だ?」
少し表情を険しくさせ、威嚇しつつも。
俺は二人に問いかけた。
「僕たちは怪しい者じゃないですよ。たまたま通りかかったただの冒険者です」
「そ、そうっすよ! 俺たちは本当にただの通りすがりなんすから!」
「ほう……」
怪しいな。
というか自分から怪しい者じゃないとか言う輩は大概怪しいと思った方がいい。
今までも色々な奴に絡まれたことがある。
その大半が金目当ての脅しだった。
もちろん、ある程度痛めつけて追い返してやったが。
「だからあまり警戒しないでください。僕たちは――」
「止まれ。それ以上、近づくな」
鞘から剣は抜かず、威嚇程度に軽く身構える。
こういう時には牽制目的であっても剣先を向けてはいけない。
剣先を向けるのはその相手が敵対するに値すると、認識した時だけだ。
仮にこいつらが本当のことを言っていたとしたら、失礼極まりないからだ。
別に決まっていることじゃない。
俺なりのルール的なヤツだ。
俺が身構えると、二人はすんなりと歩みを止めた。
「す、すまない。確かに突然出てきた僕らが悪かった。でも本当に僕たちは通りすがりの人間なんだ。それだけは嘘偽りはない」
「……」
俺は男の眼を見た。
なぜ眼を見たのか?
それはさっきシェリーにも同じことをしたように、内に潜める本音を眼が表してくれるからだ。
人の眼というのは脳と直結している。
細かな情報は分からない。
だが、眼の動きや色彩の変化で大まかなことは分かるものなのだ。
本当のことを言っているのなら、その者の眼は険しくなり、少し細目になる。
反対にウソをついていればどんなに真実を内に潜めていようとも、1分もの間に3回は目線を逸らす。
人間というのは分かりやすい生き物なのだ。
要するにこいつが嘘をついているか、目を見ればはっきりするということ。
俺はしばらく男の眼をじっと見つめ、内側を詮索する。
と、その時だった。
「ん、なんだあの光は?」
「……ん」
方角は南方面。
少し先の方から黄色い光がピカーンと輝きだした。
間違いない。
これは輝石の光だ。
(ということは、こいつらは本当に違うということか?)
輝石を光らせたということは何らかのアクションがあったということ。
犯人を見つけたか、あるいは……
とにかくこんなことをしている暇ない。
「あっ、ちょっ! どこにいくんです!?」
「悪いが、お前らの相手をしている暇はなくなった。あと、疑ってすまなかった。それじゃ」
「え、ちょっと待っ……!」
俺は男たちに一言謝罪を済ませると、すぐに輝石の光が灯る方へと走っていく。
「シェリー……無事でいてくれよ」
身の安全を祈りながら。
俺は輝く光の方へと爆走するのだった。