51.覚悟の眼
「なんでこんなところに魔物が!?」
「あれは恐らく、ゲート召喚」
「げ、ゲート召喚?」
「魔物を召喚するための扉を作って呼び出すものだ」
「扉を作る? ということは……」
「あの魔物たちは自然発生したわけじゃない。人為的に呼び出されたんだ」
魔物たちは次々とゲートから姿を現す。
見たところどれも中位から上位レベルの魔物たちばかり。
あれを街に解き放てばどうなるか目に見えている。
「……やるしかないな」
「や、やるって……あの魔物たちを討伐するんですか?」
「当然だ。このままじゃ王都が危ない。ゲート召喚を阻止するなら、発動者を捕まえるのが一番手っ取り早いんだが……」
「な、なら! わたしがその人たちを探します!」
「なに?」
シェリーは少し震えた声で、でも真剣な眼差しを向けてそう言ってくる。
「その人たちを捕まえれば、あれを止められるんですよね? なら、わたしがその人たちを探します。レインさんは魔物を――」
「ダメだ。危険すぎる。俺も行く」
「で、でも魔物を止めないと王都が……!」
こうして悩んでいる間にも魔物は次から次へと出てくる。
もう一刻の猶予もない。
早急な決断をしなくては……
でもどうする?
流石にシェリー一人で黒幕を探させるのは危険すぎる。
もし見つけたとしても相手の素性が分からない以上、返り討ちになりかねない。
だが、シェリーの覚悟も堅いようだった。
それは目を見れば分かる。
一瞬たりとも逸らさず見つめてくるシェリー。
その眼には、しっかりとした意志が感じられた。
俺も今まで数多の苦悩を覚悟を持って乗り越えてきた。
覚悟を決めた人間の所業を否定するなんて、俺にはできない。
であるならば……
「シェリー、これを持っていくんだ」
「こ、これは……?」
「輝石という鉱石だ。魔力を流すと光り輝く。もし何かあれば、これを光らせて天に翳すんだ」
この鉱石は旅の途中で偶然発見したものだ。
希少性が高いらしいから、後で売って生活費の足しにしようと思っていた。
その名の通り、光沢を帯びた鉱石で魔力を流すと、とんでもない光を発する。
印という意味で使えるだろうという判断だ。
シェリーは輝石を受け取ると、
「分かりました。何かあればこれを使わせていただきます」
「無理はするな。絶対にだ」
「レインさんこそ、無理はしないでください」
少し心に余裕ができたのか。
さっきまで少しだけ怯えていたシェリーの態度が変わった。
足元の震えは止まり、目はしっかりと潤いが戻る。
――GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!
「さぁ、ここは危険だ。お前は行け!」
「は、はい!」
魔物の咆哮が聞こえたのと同時にシェリーはこの場から駆け足で去っていく。
俺は去っていくシェリーを見送ると、腰に据えてあった剣を引き抜いた。
「……さて、掃除でもするか」