50.魔物!?
「着きました~~!」
「ここが噴水公園か」
繁華街エリアを抜け、さらに北上していった先に目的地はあった。
さっきまで賑わっていた繁華街エリアとは違い、この辺は静かで、どちらかというと住宅街エリアに近い雰囲気。
周りにお店はちょこちょこと見られたが、比較的少ない方だった。
妙なくらい人もほとんどいないし……
「同じ王都でもここまで違うとは……」
驚きである。
アホみたいな広大とはいえ、同じ都に変わりないというのに。
「行きましょう、レインさん!」
「お、おう!」
俺たちは噴水公園の入り口にあるデカい門を潜り、中へ入る――が。
「……あれ?」
「ん……?」
入った途端、また同じ場所へと戻る。
何かの間違いかと思い、もう一度試すが、結果は同じ。
何度やっても同じ場所へと戻されてしまう。
「ど、どうなっているんでしょうか? 中に入れません……」
「これは多分、結界だな」
「結界?」
「ああ。恐らく何者かの手でこの公園一帯に人払いの結界が張られているみたいだ」
この現象は人避けの結界ならではのこと。
俺も爺ちゃんとの特訓で何度か経験したことがあるから、間違いない。
「でも誰が結界を……?」
「さぁな。だが、人払いの結界が張られているとなると……」
人を近づけたくない何かしらの理由があるということだ。
周りに人気がなかったのも恐らくこの結界の影響。
(なんだか匂うな……)
何かを企まんとする者たちの……悪い匂いを。
「なんだか、嫌な予感がします。物凄くよくないことが起こりそうって言うか……」
「同感だ」
これは調べてみる必要がありそうだ。
もし、この先で行われていることが王都全体を脅かすようなことだったら、放ってはおけない。
「シェリー、行けるか? 少し危険な旅になりそうだが……」
「はい! わたしなら大丈夫です!」
「よし、じゃあ行くぞ。絶対に俺から離れるんじゃないぞ?」
「分かりました!」
俺は再び入り口の前に立ち、片手を翳す。
とりあえず中に入るには、この邪魔な結界を破壊する必要がある。
俺は目を瞑り、精神統一。
そしてパッと目を見開くと、研ぎ澄まされた精神を用いた覇気で結界を粉砕した。
「……よし、結界は壊した、行くぞ」
「えっ、もう壊したんですか?」
「ああ。この程度の結界なら造作もない」
「さ、流石はレインさんです……」
ポカンとするシェリーを横目に俺は先に進む。
シェリーも俺の後に続いて、公園の門を潜る。
公園内はこれといって特に変化はなく、綺麗な庭も特殊な形をしている噴水もそのまま残っていた。
今のところ、荒らされた形跡はなさそうだ。
(魔力反応もない……か。となると何のために結界を……)
公園内を歩きながら考えている、と。
「レインさん、レインさん。あれは何でしょうか?」
「ん……?」
シェリーが指差した方向から、何やら青紫色の光が。
それと同時に大きな地鳴りが発生し、とてつもない魔力を感じ取った。
「こ、これは……」
「レインさん、この魔力……尋常じゃありません!」
「どうやら予感は当たってしまったみたいだな。とにかくあそこまで行ってみるぞ」
俺とシェリーは揺れる地を走り、紫色の光が輝く方へ。
「あ、あれは……魔物!?」
「なるほど、この不愉快な魔力の流れはこれだったのか」
光の先にあったのは巨大な魔法陣。
そしてその魔法陣から放たれる紫色の光と共に数十体の魔物が、目をギラつかせ、耳障りな唸り声を上げていた。