49.轟く咆哮
あれから、俺たちは王都の街をぶらぶらと散策した。
有名な観光地へ行ってみたり、王都のグルメを満喫してみたり。
流石にずっと動きまわっていると疲れるので今は休憩タイムに入っている。
俺自身、街を観光すること自体初めてだったが、これもこれで中々いいものだ。
結局行き先はシェリーに任せっぱなしだったが……
「悪いな、シェリー。お前に任せっきりにしてしまって」
「全然気にしないでください! わたしは事前に王都の街をサーチしていたので。それにわたしとしてはこうして付き合っていただけるだけでも嬉しいですし」
ニッコリと笑ってそう言い返してくるシェリー。
それに答えるように俺はシェリーの頭をポンと手を乗せた。
「れ、レインさん……っ!?」
シェリーは身体をビクッとさせる。
「わ、悪い。撫でられるのは嫌いだったか……?」
「い、いえ! 急にその……撫でられたものですから、ちょっと驚いただけで……」
頬をほんのりと紅く染めるシェリー。
だがシェリーはふぅ~と息を吐くと、再度頭を撫でるように頼んできた。
俺はそっと壊れ物を扱うかのようにシェリーの頭を撫でる。
「えへへ……なんかとても心が安らぎます」
「そうか?」
「はい。とてもいい気分です」
しばらく撫で続け、安らぎの時間を二人で過ごす。
そんなひとときが幾分か続いて……
「シェリー、次はどこに行くんだ?」
「そうですね……あっ、あそこに行ってみたいです!」
「あそこ?」
「カルベージ噴水公園というところです。ここから繁華街エリアを抜けた先にある大きな公園ですよ」
王都の全体マップを見ると、ここから少し北に行ったところにあるようで、敷地もかなりの広さ。
公園内の至る所に様々な形の噴水があることから、噴水公園と呼ばれているらしい。
「じゃあ、そこに行こうか」
「はい!」
俺たちはベンチからよいしょと腰を上げると、噴水公園に向けて歩き出した。
♦
それから少し経った噴水公園内で。
再び集まる二つの怪しい影があった。
「……定刻だ。そろそろ始めるぞ」
「へい」
二人の男は予め設置しておいたゲートの前に立つ。
「指を切って、ここに血を流せ。それが発動の条件となる」
「分かった」
男たちはナイフで自身の指先を少し切ると、魔法陣に血を流し込んでいく。
すると。
流し込んだところから赤紫の光が浮き出て、次第に広がっていく。
同時にとてつもない振動が巻き起こった。
「よし、成功だ! 今すぐこの場から離れるぞ!」
「お、おう!」
男たちは早急にその場から離れる。
術式発動と同時に膨大な魔力が辺りに散布された影響で人避けの結界が崩れる。
「おいおい、マジかよ」
「今回は大量だな。こりゃあ、見物のし甲斐があるぜ」
赤紫色の光と共に
ゲートから現れるは大量の魔物。
魔物たちはその紅い眼光をぎらつかせながら、咆哮を轟かせた。