47.新たな仲間
全ての手続きを済ませ、俺たちはギルドを出ると、再び王都の街へ繰り出す。
ここから先は俺の出る幕はないので、シェリーの好きな通りに行動してもらうことに。
そうして俺たちは一軒の洒落たカフェに入ることになった。
「ふぅ……流石は王都ですね。お店選びだけでも、一苦労です」
出されたお水を一口含むと、先ほど発行してもらったばかりの自身のアドバンスカードを見つめる。
まだ新品だからか、カードの光沢部分に光が反射するとキラキラと光る。
「わたし……とうとう冒険者になれたんですね」
「ああ。これで夢に向かって一歩前進だな」
「はい……っ!」
彼女が冒険者になりたいのは世界中の魔物やモンスターを狩って、沢山の人を救いたいという夢と家族に恩返しがしたいという二つの理由がある。
前にアルズールのレストランで話してくれたことだ。
彼女の出身国でもある獣皇国アルカナにもハンターという似たような職業があるが、彼女曰く身分制度が関係してくるようで、一般人がなるには至難の業とのこと。
なのでこうして特に大きな条件を必要とされない人間の国にある冒険者という制度があるのを知り、こっちに来た。
そして俺たちはシェリーと出会ったのだ。
「これから色々と学んでいかないとだな」
「そうですね……あの、レインさん」
「なんだ?」
「その……」
シェリーは身体をクネクネとさせる。
視線は右斜め下を向き、何故か気まずそうにしていた。
言いにくいことなのだろうか?
「どうした。何か言いたいことがあるんじゃないのか?」
「あります、けど……その、ご迷惑になるんじゃないかって思って」
「迷惑? どういうことだ?」
というかそもそも内容が分からない。
シェリーは少し言葉を詰まらせながら、
「え、えっと……お二人の旅の邪魔をしてしまうんじゃないかって。元々わたしは王都に来たら自分一人で何もかもやらないといけないと思っていたので」
その言葉で何となく察しがついた。
確かにシェリーが俺たちに同行したのは行き先が一緒だったからに他ならない。
いつの間にか、流れのままに一緒に行動していたけど……
「シェリー」
「は、はい?」
向こうが諸々のことで悩んでいるなら、こっちから誘う方がいい。
別に旅の供が一人増えようが、変わらないからな。
むしろシェリーみたいな子を一人にする方が心配だ。
前みたいに襲われたりする可能性も大いにあるしな。
俺はシェリーに一声かけて意識をこっちに向けさせる。
そしていつもと変わらぬ声色で、シェリーに言った。
「一緒に来るか?」
「え……」
その一言を聞いた瞬間、シェリーの目はきょとんとなる。
意外だったのだろう。
その言葉が出てくるということが。
「あの、一緒にって……どういう」
「そのままの意味だ。お前さえよければ、これからも一緒に冒険者としてやっていこうと思っているんだが……どうだ?」
俺がそう提案すると、シェリーの表情が大きく変わる。
さっきまでの不安そうな感じはなくなり、頬を少し赤くしながら嬉しそうに笑った。
そして、即答した。
「も、もちろんです! むしろお願いします! わたしをレインさんたちの仲間に入れてください!」
シェリーは頭を深々と下げてお願いしてくる。
あまりにも勢いよく頭を下げるもんだから、思わず笑みが零れそうになった。
「じゃあ、決まりだ。これからよろしくな、シェリー」
「は、はい! こちらこそ、よろしくお願い致します!」
こうして。
今更ながら、俺たちは正式に”仲間”になった。
いやこの場合はパーティーメンバーと言った方が適切か。
(とにかく帰ったらシノアにも言っておかないとな)
「何か頼むか」
「そ、そうですね! じゃあわたしは……」
その後。
俺たちはカフェでゆったりとした時間を過ごした。