46.冒険者になろう
「えっと……レインさんが来たかったところって」
「ああ、ギルドだ」
俺たちは王城前にあるギルドタワーへとやってきていた。
相変わらず見上げるととんでもない大きさ。
よくもまぁこんな建物を作ったもんだと未だに関心させられる。
「でもいきなりどうして……」
「わざわざ王都まで来たのは、冒険者になるためなんじゃなかったのか?」
「ハッ、そういえばそうでしたっ! 食べ物と観光に目が眩んですっかり忘れていました!」
何となく察していたが、やはり忘れていたのか……
まぁロザリアの乱入もあったから、仕方ないけど。
だからこそ、この機会を設けたというのもある。
二人きりの方が色々と説明しやすいし。
「というわけで、今からシェリーに冒険者になってもらおうと思っているのだが、どうだろうか?」
「も、もちろんです! その為に王都まで来たんですから! むしろ色々教えてほしいです!」
「決まりだな。じゃあ、行くか」
「はい!」
俺たちは二人並んでギルドの中へと入っていく。
まず俺たちが向かったのは受付だ。
「新規で冒険者登録をしたいのだが」
「はい。でしたらこちらの資料にお名前等をご記入ください」
「どうも。シェリー、あとは自分でできるな?」
「はい! 大丈夫です!」
ここからは自分一人でやる作業なので俺はどこかで待機することに。
冒険者になるためにはここで個人情報等の記入を済ませないといけない。
全ての記入作業が終わると、審査が入り、それに通ればアドバンスカードというものが発行される。
冒険者になったという証みたいなものだ。
身分証明にも効力があり、基本的に何をするにも重宝される。
「終わりました~!」
しばらくして。
記入作業を終えたシェリーが戻って来る。
「大丈夫そうか?」
「はい、審査にも無事通ることができました!」
「良かった。なら後はカードの発行を待つのみだな」
であるなら……
「次はギルドの使い方を説明しよう。冒険者になったら行う基本的なこととかな」
「お、お願いします!」
カードを発行するまでにはそれなりに時間がかかる。
その時間を使って説明できることはしておきたい。
初心冒険者でも施設の使い方が分からなくて、いきなりつまづく者も多い。
あとでカードと一緒にガイドブック的なものは渡されるが、あれだけだと分かりにくいからな。
「まずはこっちからだ。行くぞ」
「は、はい!」
シェリーは周りを見渡しながら、俺の後を付いてくる。
その後、俺はシェリーに冒険者としての基本的な動作を指導した。
クエストボードの見方。
依頼の受注の仕方。
報奨金の受け取りや5年に一回行わないといけないカードの更新手続き。
その他、ガイドブックでは書いてないようなことも全て教えた。
「基本的なことはこんなものだ。どうだ、覚えられたか?」
「な、何とか……冒険者って色々とやることがあるんですね」
「まぁな。冒険者と言ってもただモンスターを狩るだけの仕事ばかりじゃないからな。物流の窓口とかそういうものもやっているし」
「奥が深いんですね……」
「ま、今はとりあえず依頼関係のことは覚えておいた方が良い。それができないと冒険者をやる上では致命的だからな」
「分かりました。ありがとうございます、色々と教えていただいて……」
ペコリとお辞儀をして礼を言ってくるシェリー。
そして次はシェリーのお願いを聞いてみることに。
「次のシェリーの番だ。どこか行きたいところとかないのか?」
「わ、わたしですか? そうですね……」
シェリーはう~んとその場で考え込む。
すると何かを思いついたのか、手をポンと叩き、
「あっ、それならカフェに行ってみたいです!」
「か、カフェ……?」
「はい。一度でいいからお洒落なカフェで殿方とティーパーティーをするのが夢だったんです。あの、ご迷惑じゃなければ……ですが」
「いや、大丈夫だ。カードを貰ったら、行くとしよう。その、お洒落なカフェとやらに」
「は、はいっ!」
こうして。
俺とシェリーのデートの次の行き先が決まった。