45.王都デート
お待たせいたしました!
料理対決の結果発表から少し時間が経った後。
俺は王都の中心街を歩いていた。
ちなみに、一人ではなく……
「良かったのか? 今すぐじゃなくても日を改めてでもいいんだぞ?」
「いえ、大丈夫です。今日のこの嬉しさを噛みしめながら、デートがしたいので」
隣にいるのは料理対決の勝者であるシェリー。
料理対決の勝者は何故か俺とのデート権が進呈されるとのことで、その相手が決まったのはいいが……
(今から行くことになろうとは……)
何とシェリーは今からデートに行こうと言ってきたのだ。
なので急遽、二人で王都の街に繰り出すことになり……現在に至るというわけである。
「それにしても、まさかわたしを選んでくれるなんて思いませんでした。てっきりロザリアさんが選ばれるのかと……」
「ロザリアも良かったが、シェリーの料理は昔を思い出させてくれるような味だったからな。なんかこう、懐かしかったというか、とても温かみを感じた」
芸術点で言えばロザリアに分配は上がる。
しかし庶民的な観点から見ると、シェリーの料理が一番俺の好みに合った。
一番馴染みのある料理でもあったからな。
正直、俺みたいな庶民舌にはロザリアが作ってくれたような料理は早かったというわけだ。
「えへへ……気になってもらえて良かったです」
年相応の可愛らしい笑み。
なんか妹でもできたような気分だ。
「なぁ、シェリー。少し行きたいところがあるんだが、いいか?」
「もちろんです。レインさんがお望みならどこまでも付いていきますよ。なんたって今日のレインさんは貸し切りなんですから!」
「貸し切りって……」
ちょっと自信気に胸を張るシェリー。
でもこうして二人で街を歩く機会があって良かった。
前々からシェリーと行こうと思っていたところがあるからな。
「じゃあ、とりあえずそこに行くか」
「は、はいっ! あ、その前にレインさんの手……繋いでもいいですか?」
「手か? 別に構わないが……」
「本当ですか!? やったぁ!」
シェリーは満面の笑みで嬉しさを表現すると、俺の右手をぎゅっと握って来る。
そうして。
二人で横並びになって歩きながら、俺はある場所へと向かうのだった。
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一方その頃、ロザリアのお屋敷では……
「ま、まさか……あのシェリーちゃんが選ばれるなんて……確かにわたしの料理は三人の中じゃ壊滅的だったけど……」
「ま、そんなこともあるわ。実際シェリーちゃんの料理おいしそうだったもの。あの歳ですごくしっかりしているし」
「う、うぅぅ……いいなぁ、レイン様とのデート……」
シノアは自身の敗北は認めているものの、羨ましいという感情は抑え切れていなかった。
対してロザリアはなぜか余裕そうな笑みを浮かべながら、マグカップに注がれたハーブティーを啜っている。
「なんでロザリアさんはそんなに余裕なんですか~? さっきまで気合い入りまくっていたのに」
「別に余裕ってわけじゃないわよ。単純に勝負に負けたのは悔しいし、デートもものすっごく羨ましいわ。でも勝負は勝負。正々堂々と戦って負けたのなら、何も文句は言えないわ」
「お、大人だ……」
心の内に悔しさを秘めながらも、顔には出さない。
そんなロザリアの大人の一面に感心する。
……が、やはりこのモヤモヤした気分を晴らしたいという欲求に抗うことはできず。
「や、やっぱりちょっとだけ覗きに――」
「ダメよ、シノアちゃん。今のレインくんはシェリーちゃんのものなんだから」
「うっ……」
そっと部屋を出ようとしたシノアをあっさりと止める。
ロザリアはポンポンと自分の座るソファの横を手で叩きながら、
「ほら、こっちにいらっしゃいシノアちゃん。デートは無理だったけど、特別に昔のレインくんの話ならできるわよ」
「ほ、本当ですか!?」
「うふふ、聞きたい?」
「聞きたいです! すごく聞きたいです!」
ちょろいと言わんばかりの食いつきでシノアは颯爽とロザリアの隣へ。
「じゃあ、まずはレインくんとわたしの馴れ初めから話そうかしら」
「お、お願いします!」
そんなこんなで。
シェリーたちがデートをしている最中、レインの過去話で盛り上がるロザリアとシノアだった。