44.結果は……
ダイニングルームに戻ると、先の事件のせいか少々重苦しい空気が漂っていた。
「ごめんなさいね、せっかくいいところだったのに……」
「ろ、ロザリアさんが謝ることじゃないですよ!」
「そうです! いきなり押しかけて来たあの人たちがいけないんですから!」
シノアとシェリーが必死にフォローする。
ルモアは先の一件についての事情を知っているのか、部屋の入り口でそっと静かに俺たちを見守っていた。
「ありがとう、二人とも」
二人のフォローにロザリアは少し硬い笑顔で返した。
「ところでロザリア。さっきの奴らは一体何者なんだ? 雰囲気的に一般市民じゃないみたいだったが」
「流石はレインくん、素晴らしい洞察力ね。そうよ、彼らは平民じゃない。かつての私と同じ、貴族よ」
「き、貴族……だったんですか!?」
「見た目じゃ、ただの賊にしか見えませんでした……レインさん、スゴイです!」
二人の言う通り、確かに見た目だけじゃただの野蛮な奴らかと思う。
でも何となく思ったのだ。
こいつらはただの”野蛮人”じゃないと。
「ま、正確に言えば元貴族なんだけどね」
「元? 今は違うのか?」
「ええ。まだ爵位までは剥奪されていないけど、持っていた権力などは他の貴族家の人間が代わりに受け持っている。貴族と言っても没落貴族と言った方が適当ね」
「だが、何故そんな連中が? お前はもう貴族じゃないんだろ?」
「まぁ、アルファイム家の壊滅と同時に爵位も消えたから、もう貴族ではないわね」
「じゃあ、なぜその元貴族連中はお前に……」
「……」
無言になるロザリア。
ロザリアの表情から察するに、長くなる話……というか。
「ロザリア、別に無理して話すことはない。だが、一人で抱え込むことはするなよ」
「そ、そうですよロザリアさん!」
「わたしたちで力になれることがあるなら、いつでも言ってください!」
「ありがとう……レインくん、シェリーちゃん、シノアちゃん」
俺たちの言葉で少し安心したのか、さっきよりかは表情に硬さがなくなった。
ロザリアはふぅーっと息を吐くと、
「でもこれは私の問題だから、私自身の手で何とかするわ。気持ちはすっごく嬉しいんだけどね……」
「そうか。でも無理だけはするな。当分は俺たちも王都に滞在する予定だから、何かあったら言ってくれ」
「ありがとう。……ふふっ」
「どうした?」
「いや、レインくんって意外と世話焼きなんだなって。昔のレインくんはもっとクールで無口で一匹狼みたいな感じだったのに」
無口だったのは否定しないが……
「別に相手がお前だったからというだけだ。何だかんだ長い付き合いだからな」
「じゃあ、他の人にはこんなに世話を焼いたりはしないと?」
「……ま、まぁ」
「へぇ~~~」
「な、なんだよ……」
ニンマリしながらじーっと俺を見てくるロザリア。
なんか腹立つ。
しかも、その脇では何故かシノアとシェリーが俺の方を向いて顔を顰めていた。
「ど、どうしたんだ二人とも。そんな顔して……」
「別に……」
「なんでもないです……」
なんか一気にしおらしくなったな、おい。
俺今なんかいけないこと言ったのか?
「まぁまぁ。そんなことよりも、そろそろ例の結果を聞きましょう」
「例の結果?」
「料理対決の結果よ。もしかして忘れていたわけじゃないでしょうね~?」
「そ、そういうわけじゃないが……」
「レイン様、わたしも早く聞きたいです!」
「わたしもです!」
何か急に二人に活力が戻る。
さっきまでなんか暗い感じだったのに……
「わ、分かった。結果を言おう。でもその代わり、恨みっこはなしだぞ?」
「「「「「もちろん!」」」」」
三人は声を揃えて了承する。
こうなった以上、結果を言うことから逃れることはできない。
一応決めてはいるし……
「じゃ、じゃあ結果を言うぞ」
謎の緊張感がこの広い空間に漂う。
「勝者は……」
俺はそう前置きを話すと、
「……シェリー、お前だ」
そう、指さしながら言った。
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