43.来襲せし者たち
「おい! ロザリアはいるか!? おい!」
屋敷の扉をバンバンと叩く灰色髪の男。
周りには取り巻きなのか、複数の男たちを連れていた。
「おい、ロザリア! 出てきやが――ぐはっ!」
突然扉が開き、灰色髪の男を含む扉前にいた連中が皆吹き飛ぶ。
それと同時にロザリアが姿を現した、
「何か、用かしら?」
「て、てめぇ……! なにしやがる!」
「別に私は悪くないわ。貴方たちが勝手に屋敷に来て勝手に扉をバンバン叩いて勝手に吹き飛ばされただけじゃない」
「んだと……!?」
眉間にシワを寄せ、男はロザリアを睨み付ける。
「ロザリア様!」
「なんの騒ぎだ?」
後から俺たちも続く。
外に出ると、そこにいたのは奇抜な頭をした灰色の短髪男を筆頭に合計六人の男集団だった。
「おうおう、こんな時期にお友達とお茶会ってか? 相変わらず、呑気なヤツだ」
「貴方には関係のないことよ。それよりも、ここまで来た用件はなに?」
「へっ、別に用件なんてねぇよ。ただ、俺たちも今日王都入りしたからせめて挨拶くらいはしてやろうと思ってな。わざわざ足を運んでやったってわけだ」
「へぇ、それはそれはご苦労様でした。でももう挨拶は済んだでしょう? 私は暇じゃないの。もうお帰りになってくださらない?」
言葉の弾丸が飛び交う。
あの男は一体何者なのだろうか?
見た感じ、友人……というわけではなさそうだが。
「ふん、何が暇じゃないだ。もうアレが始まるまで時間はないってのによ」
「私がどう過ごそうが、貴方には関係ないでしょ?」
「そりゃそうだ。確かに俺らには関係ない。だがな、自分が今どういう立場に置かれているか……それだけは理解してもらわないと俺たちとしては困るんだ。もちろん、それは分かっているよな?」
「……ええ、理解しているわ」
さっきよりも低いトーンでロザリアは言葉を返す。
にしてもなんだ、この不穏な雰囲気は。
何やら良からぬ匂いがプンプンする。
男はその返答を聞くと、ニンマリと不敵な笑みを浮かべた。
「ならいいんだ。せいぜい楽しみにしているよ。……ま、勝つのは俺たち、なんだけどね」
「……ッ!」
「んじゃ、失礼するよ」
男は微笑すると、片手を一瞬だけスッと上げ、屋敷から去って行った。
「な、何なんですか! あの人たち!」
「なんか、すっごく嫌な感じです……!」
敵意を向けるシノアとシェリー。
普段は温厚な彼女たちすらもこの様子。
確かに虫の好かないような連中だった。
やり取りを見る限り、顔見知りなようだったが……
「おい、ロザリア。あいつら――」
「ごめんなさいね。せっかくいいところだったのに。さ、続きをしましょうか!」
ロザリアは何事もなかったように屋敷の中へと戻っていった。
特に、何も言うことなく。
どこか悲し気な表情を浮かべながら。
「ロザリア……」
「レイン様、これは……」
「ああ、何か裏がありそうだ」
人様の争いごとに首を突っ込むべきではない。
俺もそう思う。
でも……
「あんな顔見せられたら、嫌でも聞きたくなるだろうが……」