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35.対決

お久しぶりです。

リアルの方が少し落ち着いてきたので、ちょっとずつですが、更新を再開していきたいと思います。

長らくお待たせしてしまい、申し訳ありませんでした。


 今、俺の視界にはエプロン姿の女が三人が映っている。


 何やらシノアたちがこれから料理対決をするらしい。

 そして俺は三人の料理を審査する側になった。

 

「もう一度ルールを確認しておくけど、制限時間は一時間。このダイニングの器具は好きに使ってくれていいわ。とにかく一時間以内に料理を仕上げることが重要よ」


「分かりました」


「望むところです!」


 ロザリアからの最後のルール確認。

 制限時間内なら何をしても構わないらしい。


 もちろん、料理の中での話だ。


「それじゃあ、準備もできたことだし、そろそろ始めましょうか。じいや」


「何でしょうかロザリア様」


「タイムキーパーをしてくれないかしら?」


「かしこまりました。一時間でよろしかったですかな?」


「ええ。お願いするわ」


 ロザリアはルモンにタイムキーパーを命じると、時間を計る手の平サイズの魔道具を渡した。

 

「みんな、準備はいいかしら?」


「わたしは大丈夫です」


「わ、わたしも準備OKです!」


 ロザリアは二人が準備完了したのを確認すると、ルモンに視線を向けた。


「じいや、私たちの準備は整いました。いつでも始めてくれて構わないわ」


「承りました。では、これよりシノア様、シェリー様、ロザリア様による料理対決を執り行いたいと思います。制限時間は一時間です! それではよーい……始め!」


 ルモンは高らかに開始の合図を叫んだ。

 それと同時に三人は一斉に食材を漁り始め、各々作業を開始する。


 この食材選びは料理を作る上でかなり重要な過程になるのだろう。

 三人とも目を凝らしながら、どの食材をチョイスするかを考えているようだった。

 

「さて、これから俺は一体何を食わされるんだか……」


 少し不安を抱えながらも俺は三人を見守る。

 厨房は何人ものシェフが同時に作業できるレベルの広い構造になっていた。


 俺はそんなだだっ広い空間の隅で予め用意してもらった椅子に座って作業風景を眺めている。


(こうしてみると対決というにはかなり地味だな……)


 勝負が始まってから三人とも一言も喋ることなく、淡々の料理作りをしていた。

 その顔をいつにも増して真剣で、離れていても熱意がガンガンと伝わってくるくらい。


 そんな魂を込めたような料理をこれから俺は審査しなければいけないと思うと、生半可な評価は下せないと今になって思い始める。


 それほど三人とも本気の戦いをしていた。


「お隣、よろしいですかな?」


「あっ、どうぞ」


 タイムキーパーを(半ば強引に)命じられたルモンが隣に椅子を置き、座る。

 その老執事は時折微笑みながら、じっと三人の様子を眺めていた。


「久しぶりです。ロザリア様があそこまで楽しそうにしているのは」


「た、楽しそう?」


「ええ。私は長年、ロザリア様のお傍でその成長を見守っておりましたが、あんなに楽しそうにしていらっしゃるのはレイン様と共に時間を過ごされた時以来のことで」


「……やはり気づいていたのか」


「もちろんですとも。前に一度だけ、お宅に訪問させていただいた時のこと、覚えていらっしゃいますか?」


「うっすらとだが、覚えている。爺ちゃんと何かを話していたな?」


 実はこのルモンという老執事とはだいぶ昔に一度会ったことがあった。


 俺がまだガキだった頃の話だ。


 この屋敷にきて初めて顔を見た時、その時の記憶が蘇ってきた。


 向こうは気づいているかどうかと思っていたが、どうやら俺が思っている以上に俺についての記憶が明確にあるらしい。


「ベルグリット様はとても良い方でした。人望があり、誰にでも優しく、逞しくて。毎回ロザリア様がご帰宅なさるとレイン様とベルグリットのことについて延々とお語りになられる姿は実に微笑ましくて、うれしきことでした。あの時までは……」


(あの時……)

 

 ルモンは少し含みのある言い方をする。

 あの時、というのはたぶん俺が気になっていたことに繋がる内容。


 突然、ロザリアが俺の前から姿を消したことに関係しているのだと。


「ルモンさん、一つ聞いてもいいか?」


「はい。何でございましょう?」


「答えられる範囲でいいんだが、ロザリアに何があったんだ? 俺もずっと気になっていたんだ。いつも遊びにきていたロザリアが急に姿を消したのは何故なのかを」


「……」


 爺ちゃんに聞いても何も答えてくれなかった。

 絶対に何か理由がある。


 でも、こうして十数年たった今でも解明できずにいた。


 爺ちゃんもこの世を去ってしまったし、手がかりもなかったことから永遠に分からないままかと思っていたが、またこうして再会することができた。


 だからこそ、知りたいのだ。


 あの時、彼女の身に何があったのかを。


「教えてくれないか?」


 ルモンの方に身体を向け、俺は懇願する。

 ルモンは初めこそ悩んでいたが、俺の真剣さを汲み取ったのか、その髭面をスッと上げると、


「分かりました。お話ししましょう」


 話すことを決断してくれた。

 多分、ロザリアの過去をよく知るものだからこそという理由も含まれているからだろう。


 知り合いでも親しくなければ、こういった話題も出なかったわけだし。


「では。まずは数年前、ロザリア様の身に何があったのかをご説明致します」


 ルモンはその長い髭に隠れた口を小さく動かすと、ロザリアの過去について語り始めた。

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