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29.女神

新年、あけましておめでとうございます。

今年も宜しくお願い致します。


「――あなた、もしかしてレイン・レイフォードさん……ですよね?」


 突然話しかけてきたその人物は誰もが目を奪われるほどの美女だった。


 淡い朱色の瞳に金色の艶やかな髪。体型はほっそりとしているが、付くべきところにはしっかりと筋肉がついており、それでいてスタイルもいい。


 まるで絵本の世界から飛び出てきたかのように美しい美女の姿がそこにあった。


「あ、ああ……そうだが」

 

 少し返答に間を置きつつも、俺は首を縦に振った。

 まさかいきなり話しかけてくるなど思わないからな。


 謎の美女はそれを聞くなり、堅かった表情から一変、笑顔が前面的に出てきた。


「やっぱりレインくんだったんだね! お久しぶり!」


 語調を先ほどとは変わって、砕けた感じになる。


「え、えーっと……だな」


 一体誰なんだ、この女は。

 全く見覚えがない。


(人違い……か? いや、でもこの声……)


 ふと頭の中に蘇ってくる過去の記憶。

 見た目だけでは、俺の記憶上にこの美女は存在しない。


 ただ、俺が気になっていたのはその声だった。


 聞き覚えのある声……だいぶ昔の話だろうが、俺の脳の片隅には確かにある。


 そしてレインくんと呼ばれた時の声も……


(もしかして、この女……)


 脳の奥の方に眠っていた記憶を何とか引っ張りだし、出てきたのは一人の女性の名前だった。

 俺がまだ幼少期の頃の話だが、何度か同い年の異性と会ったことがあった。


 確か、爺ちゃんの親戚の娘だった気がする。


 名前は……ロザリア。

 その子も今目の前にいる美女と同じく金色の髪が眩しい女の子だった。


 明確な容姿はもう昔すぎてよく思い出せないが、声質と俺のことを”くん”付けで呼ぶことに懐かしさを感じた。


 これでもし人違いなら笑いものだが……


「お前……もしかしてロザリアか?」


 過去の記憶を頼りにその名前を出す、と……謎の美女は更に嬉しそうにしながら。


 俺の右手を両手で握ってきた。


「そうだよ、レインくん! まさか覚えていてくれてたなんて……!」


 どうやら正解の様子。


 でもその顔を見ていると、眠っていた過去がどんどんと掘り返され、疑惑は徐々に確信へと変わっていった。


「たいぶ、変わったなロザリア。もう15年ぶりくらいか?」


「そうだね。私たちが最後に会ったのは確か7歳の頃だから、それくらい経つかな」


 ロゼリアは金色の妖美な髪を靡かせ、答えた。

 俺の記憶に残っているロザリアは今のような華やかさはなく、どちらかというと大人しい雰囲気の方が色濃いイメージだった。


 金色の髪は当時と変わらない美しさを持っていたが、一番変わったのは髪型だ。

 幼少期の頃は編み込んでいた髪が真っすぐに伸ばされている。

 

 その上女性らしさがより一層強くなり、化粧をしているのもあってか、見違えるほどの変貌を遂げていた。


「逆にレインくんは昔と変わらないね。そのやる気のなさそうな目とか、昔のまんまだよ」


「悪かったな、やる気なさそうで」


 ロザリア曰く、昔の俺は今以上に冴えない感じだったらしい。

 それでも俺も成長と共に顔も体格も変わっていったことから、昔よりはそういう印象はなくなったとのこと。


 ただ、やはり目だけは昔と全く変わっていないらしい。


「でもこんなところでレインくんに会えるなんて思ってもいなかったよ。あれから色々あっておじさまにも顔を出せずにいたから……」


 おじさまというのは爺ちゃんのこと。

 爺ちゃんが親しくしていた友人の娘とのことで、ロザリアはおじさまと呼んでいた。


「そうだったのか。何か家の方であったのか?」


「まぁ、そんなところかな」


「そうか……それは災難だったな」


 二人だけで世界に入り込み、話していると、今度は俺のすぐ隣から声が届いてきた。


「あ、あの~レイン様。この方は一体……」


「ああ、こいつは――」


「初めまして。私はロザリア、レインくんの婚約者です!」


「「こ、こここ婚約者!?」」


「お、おいロザリア! お前いきなりなんて……」


 言葉が遮られ高と思ったらとんでもない爆弾発言をぶち込んできた。

 

 当然、そんなわけないし、約束をした覚えもない。


「れ、レイン様! ど、どどどどどどういうこ、ことですか!?」


「そ、そうですよ! まさかこ……こ婚約者がいたなんて……!」


「落ち着け二人とも。俺にはいない。こいつの勝手なブラックジョークだ」


「ブラックジョークだなんて酷いなぁ……私は割と本気でそう思って()()のに……」


「冗談はやめろ、ロザリア。周りの目もあるだろ」


 他の人たちにはさっきのジョークは聞こえてなかったらしく、皆何を話しているのかと不思議そうに俺たちを見ていた。


 よかった。

 ここでこんな洒落にもならないデマが拡散すれば、面倒なことになる。


 ロザリア本人も巷ではかなりの有名人……ぽいからな。


「ごめんごめん。ね、レインくん。これから少し時間貰える?」


「な、何故だ?」


「色々と話したいなって思ったから、誘っているんだけど……もしかしてお暇でない?」


「いや、別にそういうわけじゃないが……」


 この後の用事と言えばシノアとシェリーと一緒に王都観光だけだが。


 二人はあまり気は乗らないだろうし――


「レイン様、わたしは全然構いませんよ! むしろさっきの続きを詳しく聞きたいです」


「わ、わたしもそのお話聞いてみたいです! と、特にその……婚約の話とかを……」


「い、いいのか?」


 二人は同時にぶんっと首を縦に振る。

 というかまだ婚約ネタを信じているのか……


 なんか嫌な予感しかしないが……まぁ二人がいいって言うなら断る理由もなくなった。


「分かったロザリア。お前に付き合うことにするよ。二人もいいって言ってるようだしな」


「本当!? ありがと! じゃあ早速私の行きつけのお店予約してくるから、ちょっと待ってて! みんないきなりだけど例の店、行くよ!」


「「「「「イエスマム!!」」」」」


 取り巻きたちもロザリアの後に続き、颯爽とギルドを去っていった。

 

 なんという統一感。あれは物凄い鍛え上げられているに違いない。


(にしても、なんかまた面倒なことになりそうだな……)


 はぁ……と一つ。

 溜息をつきながらも、俺たちはロザリアたちの帰りを待つことになったのだった。

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