28.ギルド
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願い致します。
ということで、新年一発目の投稿になります!
日が昇り、燦燦と照り付ける眩しい日差し。
今日の天気は雲一つない快晴日で俺たちのそんな日差しのもと、ギルドを目指して歩いていた。
「今日は本当にいい天気ですね!」
「ホント、絶好の観光日和だね!」
観光を目前として気が高ぶっているのか会話が弾む少女二人。
俺はその後ろについていくようにトボトボと歩いていた。
というのもシノアがギルドまで案内してくれることになったからである。
前にも話してくれたが、シノアは一度王都に来たことがある。
俺を探すためにギルドに足を運び、情報収集をしていたそうだ。
ただでさえ、広大な王都。
地図を見ながら進まないと迷子必至な状況で案内役がいるのは凄く助かる。
「ギルドは住民街から外れたところにあるのか?」
「はい。王城前の繁華街エリアにギルドタワーがあります。ほら、あそこに見えるのがそうですよ」
そう言いながら、シノアは前方に聳え立つ大きな建物を指さす。
王都に来た時から気になっていたけど、あれがギルドだったのか。
パンフレットによれば、ギルドタワーは王都では街の象徴になっているとのこと。
確かにあんなドデカいギルドタワーは今まで見たことがない。
「さ、レイン様。早いところ、クエストを終わらせて観光に行きましょう! わたしが前に行ったところでおすすめのお店があるんです!」
「そうですよ、レインさん。早く済ませちゃいましょ!」
「お、おい! そんなに腕を引っ張るなって……」
早々に観光に移りたい二人。
シノアのおすすめの店とやらは多分、飲食店なんだろうな。
それにしても朝っぱらから元気のいいこといいこと。
「あんまりはしゃぎすぎるなよ。特に迷子にならないように気をつけないとな」
と言って俺をある人物の方へと目を向ける。
「な、なんでわたしのことを見るんです?」
「いや、何となくシノアがそうなりそうな気がしたものだから」
「なんでですか!」
ぷくーっと頬を膨らませるシノア。
俺だって別に悪気があってそう言っているわけではない。
でも何かに夢中になると、周りが見えなくなるので心配というだけの話。
特にシノアは食のことになると、凄いからな。
「ま、まぁ……二人とも十分に気をつけてくれよ」
「心配しなくても大丈夫ですよ。その辺はしっかりとしている……と思うので」
どうだか……
というか最後少し言葉詰まった気がするのだが、気のせいだろうか?
「ご、ゴホン! と、とにかく早くギルドに向かいましょう。話はそれからです」
わざとらしい咳払いをしてから、シノアの歩くスピードが極端に上がる。
「ま、待ってくださいよシノアさん!」
「……ほ、本当に大丈夫なのか?」
心の片隅では不安を残しつつも。
俺たちはシノアの案内で繁華街エリアにあるギルドへと向かったのだった。
♦
「はい、確かに承りました。こちらクエストの報奨となります。ご苦労様でした」
「どうも」
受付嬢から金の入った小袋を手渡される。
ここは王都のギルド総本部。
そして今、俺は予め渡されていた物品を納品して、報奨金を貰ったところだった。
「またのご利用をお待ちしております」
受付嬢は澄んだ声でそう一言発すると、深くお辞儀をした。
俺も軽く礼を返し、二人のいるところまで歩み寄る。
「終わりましたか?」
「この通りだ」
俺は受け取った金袋を二人に見せる。
「もうギルドに用はないんですか?」
「やることは済んだからな。後は自由だ」
「じゃあ、もう観光に行けるんですか?」
「ああ、もう大丈夫だ」
「それなら早速行きましょう! レイン様!」
「わたし、行ってみたいお店がお店があるんです!」
目の星を散らばせて言い寄って来るシノアとシェリー。
その勢いに圧倒されつつも、俺は二人の今後の動向を任せることに。
俺は特に観光に気合いを入れているわけではないし。
どちらかというと一週間後の剣舞祭とやらにの方が興味がある。
俺たちはとりあえず行く場所を決め、目的地を一つに絞ると、出口に向かって歩み出す――が、その時だった。
「――お、おい見ろよ。あれ」
「――あれって黒の女神か?」
「――おいおいマジかよ。こんな時間から女神様の御顔を見れるなんて」
「――今日はツイてるな」
周りが突然ざわつき始める。
そのざわつきの原因は皆が視線を向ける方向にあった。
「なんだ……?」
会話の内容からして、その視線の先にいるのは一人の女性らしい。
人の壁で少ししか姿が見えなかったが、女性ということは間違いない。
しかも何人かの取り巻きを同行させているようで。
「何でしょうか? あの騒ぎは」
「貴族様かなにか……ですかね? それか王国の要人ですとか」
「冒険者ギルドにそんな人間が来るとは思えないが……」
でも騒ぎ的にそれに近しいものだろう。
その証拠にギルド内にいた全冒険者が目がその人物に注がれている。
ここまで影響力があるのは、相当有名な人物でしか成し得ないものだ。
「どんな方なのでしょうか?」
「さぁな」
そんな人集りをじっと見ていると、ちょうど人と人の隙間からその女性の姿が見える。
遠くからでも分かる艶やかな黒髪と潤いのある黒の眼。
周りが女神というだけあって、容姿は抜群に美しい人物だった。
しかし、一つだけ可笑しいことがある。
それはその女性は一度立ち止まってその隙間から見つめる俺に対して目を合わせてきたのだ。
ほんの少ししかない隙間から互いに目が合う俺たち。
すると。
向こうは突然方向を変えると、人の波をさけてこっちに歩み寄って来る。
「れ、レイン様。あの人、こっちに来ますよ」
はっきりと露わになる容姿。
近づいてくる度に分かるその美貌は、やはり神話に出てくる女神そのものだ。
その女性は俺の前で立ち止まる。
同時に皆の視線は一斉に俺の方へと注がれると、女性はただ一言。
俺にこう言ったのだ。
「……あなた、もしかしてレイン・レイフォードさん……ですよね?」