26.ご奉仕
度重なる誤字報告、ありがとうございます!
「レイン様、入りますね」
「失礼します……」
「あ、ああ……」
浴室の扉が開き、入って来たのは純白の肌を持つ少女二人。
柔肌をタオル一枚で覆い、片手にはスポンジを持っていた。
これから始まるのは謎のご奉仕タイム。
手始めに二人が俺の身体を洗うことになった。
「お、おい二人とも。本当にやるのか? 別に身体くらい自分で洗うが……」
「そ、それではご奉仕の意味がないじゃないですか!」
「そうですよ。レインさんは座って楽にしてくれるだけでいいんです」
「わ、分かった……」
なぜここまでしてくれるのか。
恩義を感じているという以外に何かあるというのか?
どう考えてもこの状況は普通じゃない気がするんだが……
「レイン様、痒いところはありませんか?」
「いや、特に」
「レインさん、力加減はどうでしょうか?」
「ちょうどいい」
と、言いつつも流れのままに身体を洗われる俺。
その柔らかい肌が所々で俺の身体に触れる度に感じる二人の体温。
二人はその小さな手で俺の身体を一生懸命に洗う。
「そういえば、レイン様の身体って結構筋肉質なんですね」
「ん、そうか?」
「あ、わたしもそれ思いました。予想以上にガッチリしているというか……服を着ている時は細身に見えたので」
そう言われたのは初めてだ。
というか人前で素肌を見せることなんてなかったから当然なのだが。
元々俺は生まれつき華奢な身体だったが、図体に関しては師匠である爺ちゃんにも大きくしろときつく言われていた。
とにかく鍛錬をしたら、飯を食べてよく寝る。
このルーティーンが修行中の俺の日課だった。
おかげで剣を自由自在に振れるまでの筋力は手に入れることができた。
「ま、元々俺は細かったからな。男としては情けない限りだ」
「そ、そんなことはないですよ! わたしはむしろ、細い方の方が好みです!」
「わたしもシェリーちゃんと同意見です。それに、わたしも余計な脂肪を落として、スリムな身体になりたいです……」
シノアは俺の腕をスポンジで洗いながら、ぽよんとした二つの山を揺らす。
それを見たシェリーはじーっとある一点を睨むようにみると、
「そうですね。シノアさんは確かに落とした方がいいかもしれません。……羨ましいですし」
「シェリーちゃん?」
「ああ、いえ! 何でもないです! それにしてもシノアさんって肌は白いし、スベスベだし、その……お胸も大きいし、女性としての魅力ありありじゃないですか」
「そ、そうかな?」
「そうですよ~! わたしにもその身体分けてください」
話は俺の身体からシノアの身体へとシフト。
確かにシェリーの言う通り、シノアはスタイルが良い。
容姿も文句のつけようがないくらいの美少女であるためか、身体との釣り合いもよく、さっき街を歩いている時もすれ違う者は皆、シノアの方を見ていた。
「わたしもシノアさんみたいになりたいです……特にこことか」
「きゃっ! シェリーちゃん? いきなりどこを……」
シェリーは羨む眼差しを向けながらシノアの巨山をちょんと突く。
それに反応してシノアの身体がビクンと跳ね上がった。
「ずるいです。種族は違えど同じ女なのに……」
「しぇ、シェリーちゃんはまだ発展途上なんだよ。わたしはほら、もう成長止まっちゃっているし……」
「そんなことないです。シノアさんのお胸はまだまだ大きくなるって言ってます」
「そ、そうかな~」
シェリーは自らのぺったんこな胸を凝視した後、溜息を一つ。
というか女性らしさを判断する基準では胸の大きさも一つに要素にはなると思うが、そこまで重要なことなのだろうか?
むしろ他のことで女性らしさを判断することが多い気がする。
例えば立ち居振る舞いとか。
「シェリーも十分女性らしいと思うぞ。別に身体の発展なんて人其々なんだ。あまり卑下する必要はないと思うが……」
「ほ、本当……ですか?」
「ああ。シェリーは立派な女の子だ。俺が保証する」
と、自分でもワケの分からないことを口走ってしまったと言った後に後悔。
フォローするつもりが、何だか違う方向に行ってしまった。
だがシェリーはそれを聞くと突然顔を染めると、俺の背中に勢いよく抱き着いてきた。
「お、おいシェリー!?」
「そんなこと言われたの、レインさん初めてです。とても嬉しいです!」
シェリーは背中にくっついたまま、離れない。
よほど嬉しかったのだろう。
俺としちゃあシェリーの全体重が背中に乗っているのでかなり負担になっているのだが。
「ず、ズルいですシェリーちゃん! レイン様、わたしは……わたしはどうですか?」
それを見ていたシノアも謎の対抗心を燃やし、俺に聞いてくる。
なんか昨日のレストランでの出来事を思い出す。
「し、シノアも綺麗な女の子だと思うぞ。間違いなく」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
と言って。
なんの躊躇いもなく、シノアは俺の右腕をガシッと掴む。
さっきまで自分の肌を曝け出すことに恥じらいを見せていた人が、こうも変わってしまうとは。
二人をここまでさせる理由は一体どこにあるのやら。
この後。
俺は二人に抱き着かれたまま入浴を済ませ、初めての王都の夜を迎えたのだった。