24.王都ルキナ
「わぁぁぁぁぁぁ~ここが王都ですか~!」
目を開き、至る所に視線を向けるシェリー。
ここはイースランド王国が誇る一番の都、王都ルキア。
大陸内に蔓延る流行の玄関口として栄えるその街は人種を問わない。
道行く人を見てみれば、他民族はもちろん、獣人族の姿もあった。
「やっぱり王都は迫力が違いますね。前に来た時よりも栄えているような気がします」
王都のようなデカい都市はそれなりに街開発に金が投資されるから、時が経てば何かしらの変化が出てくるのだろう。
全体的に白を基調とした街並み。
煉瓦造りの建物が主体となって街全体にお洒落な雰囲気を醸し出している。
街路には金木犀の木が並んで映えており、国章が小さく刻まれたガス灯が等間隔に並ぶ。
時間帯もそろそろ夕暮れ時になるからか、ガス灯はもう点いており、少しずつ街全体が夜を迎える準備を始めていた。
(にしても、前に来たところとは桁違いの広さだな……)
俺は前に王国南端のリーヴァという街に行ったことがあるが、初めて足を踏み入れた時はあまりの広大さに驚いたもの。
でもルキアはその比じゃないくらい広大で開発が進んでいた。
流石は国の中核都市と言えよう。
「えーっと……まずは何から食べましょうかね」
そう言いながらシノアは手に持っていた王都案内のパンフレットを開きだす。
「い、いつの間にそんなもの……」
「王都入場の際に貰ったんです。一応古いパンフレットならあるんですけど、王都も年々変わってると思いますし。迷子にならないよう念のためにと思いまして」
その割にはパンフレットを取り出してから速攻でグルメの欄を開いていたが。
「観光もいいが、まずは宿だ。始めにそれを決めないと先へは進めないぞ」
とりあえず宿の予約が最優先事項。
できるだけ長期滞在が可能な宿に。
剣舞祭とやらに参加するのなら最低でも一週間と数日。
多く見積もって二週間は滞在することになるだろう。
長期滞在を歓迎してくれる宿は少ない。
一種の部屋の独占になってしまうからな。
その場合は、他の客からクレームが来るだろうし。
一応覚悟しておくべきことは、宿を点々する可能性を大いにあり得るということ。
それに剣舞祭も近づいているから、宿の争奪戦が始まるのは必然的。
今も多分、有名どころの宿は少しずつ埋まっていることだろう。
だからこそ、早めのアクションを起こさないといけない。
「シノア、そのパンフレットに宿の情報って乗っているか?」
「はい、ありますよ。調べましょうか?」
「ああ、頼む」
そんなわけで俺たちはパンフレットに書かれた宿を調べ、とりあえず順番に回ってみることに。
まだ祭り開始一週間前なんだ。
まだまだ余裕はあるだろう。
そう思っていたのが、甘えだった。
「……まさか、ここも全部埋まってしまっているとはな」
「これで14軒目ですよ。もう空いてる宿なんてないんじゃないですか?」
溜息を吐くシノア。
俺たちが王都に来てからどれくらいが経ったのだろうか。
とにかく辺りは暗くなり、日はすっかりと落ちていた。
俺たちはあれからずっと歩きっぱなしで宿探しを続け、今が14軒目の宿訪問。
そして全部埋まっていると断れたところだった。
「今日は野宿になるかもしれんな……」
そうボソッと呟くとシノアがすぐにこちらを見て、
「わたしは最悪外でも大丈夫ですよ」
「わ、わたしもお外でお泊まりでも大丈夫ですが……」
シノアとシェリーは野宿OKの様子。
でもずっと歩きっぱなしだったからか、二人とも軽く疲れを見せていた。
流石に年頃の少女二人を外に……というわけにもいかない。
出来る限りなら温かいところで寝てほしいが。
「どうしますか、レイン様」
「あともう一軒行くぞ。もしそれでダメだったら、少し考えよう」
「わ、分かりました……」
という提案に渋々頷くシノア。
そして俺たちは再び歩み出す。
最後の希望を懸けて。