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19.剣舞祭


「「うわぁぁぁぁぁぁ!」」


 二人揃って歓喜の叫びをあげる。


 目の前には豪勢な創作料理の数々。

 一介の宿にしてはあり得ないくらいの豪華な食事だった。


「す、すごいな。これは……」


 ここまで料理で圧倒されたのは初めてだ。

 一体誰がこんな料理を……と思っていると、マリィが説明を始めた。


「当店自慢のシェフがお作りした料理となっています。シェフと言ってもこれを作ったのは全部マスターなんですが……」


「ま、マスターが……?」「マスターさんが!?」


 シノアと同時に驚嘆の声を。


 というかあのマスター、料理できるのか……


「マスターさんはとても料理がお上手な方なんですよ。わたしもここに泊まっている間はずっとマスターさんの手料理を食べてほっぺたを落としまくってました」


「す、すごいですね……」


「でも今日は今まで以上に豪華ですよ。何かあったんですか、マリィさん」


「それがですね――」


「シェリーちゃんを救ってくれたことのお礼も兼ねてのお食事よ~」


「ま、マスター!?」


 俺のすぐ右隣りから突然ひょっこりと現れる女装した巨人。

 何度見てもとてつもないインパクトである。


「今日はたまたま誰も泊まってないし、さっき買い出しに行った時も食材が大安売りされててね。これはもうパーティーをやるしかないわと思ってちょっと頑張っちゃったの♥」


 頑張ったという規模で片づけるには少し足りない感じ。

 テーブルも長く、沢山の人が食事できるようにゆとりある設計にも関わらず、料理でギチギチになっていた。


「ま、とにかく座って座って。細かいことは言いっこなしよ。あ、マリィちゃんも一緒にね」


「わ、私もですか!?」


「もちろん。みんなもこっちにいらっしゃい」


「わ、私たちもよろしいのですか?」


「もちろんよ。さぁさぁいらっしゃい」


 と、奥から使用人たちも出て来て勢ぞろい。


 俺たちはマスターの勢いのまま着席し、一気にテーブルの周りが賑やかになる。


(にしても本当にすごいなこれは……)


 色とりどりの輝きを放つ料理を前に心なしか空腹感が出てくる。

 

 対してシノアとシェリーの視線はもう料理に釘付け。

 目をギランギランさせて、何から食べようかと模索している感じだった。


「さて、みんな揃ったかしら?」


 マスターが周りを見渡しながら、確認を取る。

 

「揃っているわね。じゃあみんな手を合わせて――いただきます」


「「「「「いただきます!!」」」」」


 マスターの合図で宴が始まる。

 そしてスタートと同時に物凄い勢いで料理を食する二人の姿が。


 特にお隣のシノアは小皿にとんでもない量を盛り付け、美味しそうに料理を口に運ぶ。


 そして食するなり、幸せそうな顔で、


「んん~! これ物凄く美味しいです!」


 こう一言。

 料理もそうだが、シノアの食欲にもかなり驚かされる。


「お、おい……そんなに慌てて食べると詰まらせるぞ」


「※※※※※!!」


「いや、何を言っているのかさっぱりなんだが……」


 俺の指摘にシノアは口に含んだ料理を食べ終わると、


「だってこんなに美味しいお料理は食べたのは久しぶりなんです! 多分、この味ならうちの家のシェフ以上の腕前ですね……」


「シノアの家にもシェフがいるのか?」


「え? あ、ああ……まぁ。大したことはないですけど!」


 よく分からないが、なんか慌てている様子。

 シノアはそれよりも……と言いながら、どんどん料理を口に運んでいく。


 ホント、見た目とは裏腹に豪快な喰いっぷりだ。


「やっぱりマスターさんのお料理は世界一です! もうずっとここにいたいです!」


「あら、嬉しいこと言ってくれるわね~沢山作った甲斐があったわ」


 これにはマスターもニッコリ。

 

 俺も一口頂いたが、確かに美味だった。

 

 恐らく今まで食べた料理の中では圧倒的に旨い。

 

 気がつけば俺もシノアたちに劣らぬほど料理を食していた。


「そういえば、シェリーちゃんたちは明日には王都に行くのよね?」


「は、はい。そうですよ」


 歓談中に飛び交う会話。

 そこにマリィが入る。

 

「王都と言えばそろそろ剣舞祭の季節になりますね」


「あら、もうそんな時期になるの? 時が経つのは早いものねぇ~」


「剣舞祭……? なんだそれは?」


 聞いたことのない行事だ。

 祭というくらいだから祭りか何かなのか?


 そんな俺の疑問にマリィが答えてくれた。


「4年に一度、王都で開かれる大規模な剣の武道大会です。世界各国から強者が集まり、世界一強い剣士を決めるという一種のお祭りですよ。毎年開催場所は異なるんですが、今年は王国での開催に決まったので王都で開かれるというわけです」


「ほう……世界一強い剣士を決める大会か……」


 非常に興味深い。

 更なる高みを目指している俺にとって魅力的な大会だ。


「剣舞祭は大陸でもメジャーな催しなのでとにかく人が集まって来るんです。王都も剣舞祭仕様になって露店も沢山出るんですよ」


「ろ、露店ですか!? もしかして食べ物の露店も……」


「もちろんありますよ。大陸内外の観光客が来るので王都のグルメの他にも大陸中のグルメが勢ぞろいするかと」


「た、大陸中のグルメ……!」


 シノアの目の色が変わる。

 そしてすぐさま俺の方を向くと……


「レイン様……!」


 お祭りに参加したい……そんな目で俺を見てくる、というかこれは訴えかけるような目だな。


 こうなってしまった以上、シノアはもう止められない。

 

 俺は「はぁ……」と力ない溜息を吐くと、


「わ、分かった。その祭りとやらが終わるまで王都に滞在するとしよう」


「ほ、本当ですか!? ありがとうございます!」


 どちらにせよ行く宛てのない旅。

 王都にもそれなりの期間、滞在するつもりでいたしちょうど良かった。

 

 それに、俺もその武道大会について詳しく知りたいしな。


「その剣舞祭とやらはいつから始まるのだ?」


「今から一週間後です。武道大会開始のオープニングセレモニーが祭典開始の合図になります」


「一週間後か……」


「レイン様? どうかなさいました?」


「いや、何でもない。とりあえず、明日の昼前には王都入りしよう。依頼のこともあるしな」


「はい!」


 ……そんなこんなで豪勢な宴は幕を閉じた。

 そして俺たちはマスターに一言、礼をすると、自分たちの部屋へと戻るのであった。

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