11.事件の匂い
本日2話目の投稿になります!
度重なる誤字報告、ありがとうございます!!
というわけで馬車乗り場のある街までやって来た。
フォルンほどではないが、人もそれなりに多く、街の入り口からずらーっと露店が軒を連ね、まるでお祭りでもやっているかのような雰囲気が漂っていた。
「この街に馬車乗り場があるみたいだな」
「中継都市アルズールって名前らしいです」
「中継都市か。ということは王都やその他地方の主要都市に向かう者たちの為に作られた町ということか」
「そうみたいですね」
中継都市アルズール。
その名の通り、王都や他の巨大都市を繋ぐ連絡口として栄えている町だ。
人口はフォルンの約半分ほどだが、中継都市ということもあって様々な人種や種族の者が行き交っていた。
「ここは人族以外も入門することができるのか」
「フォルンの町って確か人族だけしか入れないのでしたよね?」
「ああ。人族以外は基本、国から発行された証明書とかがない限り、入れないようになっていた」
この慣習はまだこの世に魔王という存在がいた時代にまで遡る。
元々この世は人族と一部の種族のみが住まう世界だった。
だが魔王封印と共に魔界から流れ出た種族たちが人間界へと入ってきたことで一気に多種族化。
一時は戦乱にもなるほどの大騒ぎにもなった。
だが今では条約などで縛りをつけたことで関係は緩和。
人族の中でも共存を強く望む者も増え、前よりも種族意識に対する姿勢は変わった。
……が、やはり納得いかない者も人界人、魔界人問わず一定数いるわけで、今も種族による差別が横行し、人族は人族だけの場所を作り、他の種族も同様に自分たちだけの世界を作って世と隔離している場も存在する。
つまり、フォルンはその中の一つだというわけ。
ちなみに俺は種族に関することでとやかく言うつもりは毛頭ない。
むしろ共存を強く押したい方だ。
「シノアはどうなのだ? 他種族に関して否定的なのか?」
「い、いえとんでもない! わたしはむしろ共存していけたらいいなと思っていますよ。学園には人族しかいませんでしたからいつか種族を越えた友達を作りたいなって」
「種族を越えた友達か。確かにそれはいいものだな」
「でも肝心の出会いがないんですよね。やはりどこに行っても必ず人族主義を主張する人はいますから……」
「他種族が入り込める環境がないというわけか。まったく、くだらない論争だ」
そんな会話をしながらも、俺たちはアルズールの街中を歩く。
馬車乗り場は町の中央広場にドンと構えているらしく、人並みもそっちの方へ流れていた。
周りを見渡すと大きい荷物を持った商人や旅人たちで溢れかえっていた。
「この先にあるみたいだ」
「まずは窓口で王都行きのチケットを買わないとですね」
「ん、馬車の代金って降りる時に馭者の者に支払うんじゃないのか?」
というのも俺が旅立ってすぐの時に一度だけ馬車に乗ったことがあった。
その時はチケットなどなく、降車時に支払った記憶があったのだ。
「確かに前まではそうでしたけど、今はチケット制になったんです。乗り逃げの事件が多発したことが原因らしくて」
「なるほどな……」
確かにチケット制にすれば乗り逃げはなくなる。
代金の未払いも解決だ。
(世の中には悪い奴がいっぱいいるもんだな……)
と、そう思いながら歩いていた時だ。
「ん……なんだあれは?」
俺の目線の先。
人気の少ない路地に一人の少女を複数の男たちが連れて行く場面を目撃する。
雰囲気的にはあまりよろしくないものが漂っていた。
そして同じくシノアもその場面を見たようで……
「レイン様、さっき女の子がそこの路地に……」
「ああ、俺も見た。嫌な予感がするな……」
周りを執拗にキョロキョロみていたのも気になる。
もしかしたら勘違いという可能性もあるが……
「シノア、一応後を追ってみるぞ。やはり嫌な予感がする」
「はい、分かりました!」
俺たちはそう決めると、路地に入っていた集団をそっと後ろから追いかけるのだった。