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10.旅立ち


「準備はできたか?」


「はい、わたしの方はできてます! それにしても良かったのですか?」


「何がだ?」


「いや……こんなに良い部屋を手放してしまって……」


 場所は変わり、街の中心部から少し離れたところにある住宅街。

 そこにある集合住宅の一室に俺たちはいた。


「別に構わない。居宅を借りたのもパーティーメンバーの為だ。前までは宿屋暮らしだったしな」


 そう、ここは俺が寝床にしていた部屋。

 冒険者を始め、パーティーに誘われた後からだから、かれこれ1年以上は住んでいる。


 元々は街から少し離れた宿屋を根城としていたが、他のメンバーも街中に住んでいたことから、俺もそうすることに。

 近い方が集合する時に負担にならないという俺なりの配慮だった。


 が、パーティーを抜けた今、もう俺にこの部屋は必要なくなった。

 それにもう街から出ることも決まっている。


 だから手放すことに躊躇はない。


 そもそもいずれは街を出ないといけないと思っていたからちょうど良かった。


「……よし、これでいいだろう。すまないな、手伝ってもらって」


「いえ、これから旅をご一緒させていただくのですから当然です。少しでもレイン様のお役に立ちたいですから!」


 荷造りの手伝いはシノアにもしてもらっていた。

 というのも頼んだわけではなく、自分から名乗り出てくれたんだが。


 でも凄く助かった。

 

 おかげで予定よりも早く準備を整えることができた。


「さて、そろそろ行くとするか」


「はい、レイン様!」


 最後に。

 俺は1年もの間、世話になった部屋の前で礼をする。


(世話になったな)


 そう、心の中で一言感謝を述べる。


 かくして。

 俺はシノアと共に港町フォルンを出たのだった。




 ♦



「レイン様、これからどこへ向かわれるおつもりで?」


「ひとまず、王都を目指そうと思っている。この依頼を達成させないといけないからな」


「依頼ですか……っていつ受けたんですか!?」


「ギルドを出る前に少し時間があったからな。その時にシノアはいなかったが……」


 依頼と言っても王都のギルドまで荷物を運んでほしいという簡単なものだ。

 荷物はもう既に受付嬢から受け取っている。


「ああ~確かわたしがギルドカードの更新をしていた時ですね」


「そうだ。それに、王都は一度行ってみたいと思っていたからな」


 というのも俺はこの歳になって一度も王都へ足を運んだことがない。

 住んでいたところが王都から遥か離れた場所にあったし、フォルンにいたのも王都に向かうための羽休めに過ぎなかった。


 だからフォルンの街に住んでいたことに意味はない。

 ただ、パーティーに誘われたことをきっかけにフォルンの街に落ち着くことになった……というだけの話だ。


「一度も行ったことがないんですか?」


「一度もない。シノアはあるのか?」


「はい。わたしは何度か行ったことありますよ。それこそレイン様の情報集めの時にも」


「そうか……」


 確かに王都は人も多いし、他の地方や国、もっと言えば別の大陸からも沢山の人がやってくる。

 情報集めにはもってこいの場所だ。

 

 ちなみに俺たちが籍を置くイリスティナ王国の王都は大陸諸国の中では流行の発信源とも言われている。


 商業。

 工業。

 漁業。


 あらゆる分野で最先端を行く同国の王都は昼夜問わず、色々な人が入り乱れるとのこと。

 中には変な奴も入って来るから、何かしらのトラブルが多いのも王都ならではのことらしい。


「なら、シノアは王都には詳しいのか?」


「王都と言ってもかなり広いので詳しいかと言われれば物足りない気がしますが、大抵のことは知ってますよ。あ、もしよろしければ王都を案内しましょうか?」


「いいのか?」


「もちろんです! 王都には観光スポットがいっぱいありますし! それにグルメの方も流行の最先端を行ってるんですよ!」


「そ、そうか……」


 完全に観光気分のシノア。

 勢いで圧倒される。


 でも何も知らない身としては案内してくれるのは非常にありがたいこと。


 ここはシノアに任せることにしよう。


「じゃあ……頼めるか?」


「はい! 喜んで!」


 話は決まった。

 後はひたすら王都を目指すのみだ。


「王都へ行くにはこの先の街で馬車に乗った方がよさそうだな」


「そうですね。ここから歩きで行くとなると五日はかかると思います」


 大陸地図を開きながら、位置情報を確認。

 王都までは物凄く距離があるわけでもないっぽいが、歩きで行くと少々時間がかかるらしい。


 依頼の期限は七日ほどあるが、できることなら早めに向こうに着きたい。


「なら、この先の街で馬車に乗ることにしよう。今後の予定もゆっくりと決めたいしな。それでいいか?」


「はい! レイン様のご判断ならばわたしはどこまでもついていきますよ!」


 と、シノアも快諾してくれたところで。

 

 俺たちはフォルンから数キロ先の街にある馬車乗り場へと向かうべく、ひたすら続く一本道を歩いていくのだった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >そこにあるハイツの一室に俺たちはいた。 『ハイツ』は元々『高台』や『丘』を意味する英語であり、日本の住宅用語としても明確な定義はありません。まだ『長屋』の方が違和感ないけど、無難に…
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