先ずは情報収集から・4
少し短めの話です。
「はぁ。喉渇いた」
私が溜め息をついてそんな事を言えば、男達は目を丸くした。
「随分、肝が座ったお嬢ちゃんだな。怖いって泣かないのか」
私の腕を掴んでいた男ーーアニキとやらが聞いてくる。
「別に。だって解ってたし」
「解ってた?」
「私、態と誘拐されたんだもの。計画を立てたの、あなたでしょ? ヤン」
私は、居るかどうか分からなかったけれど、でも、居ると確信して、何処かに潜むヤンに尋ねた。すると男達の後ろからヤンが現れた。物凄く驚いた表情を浮かべて。
「なんで分かったんです?」
「あなた、私に護衛をしたくないか尋ねられた時、宙を向いて困ってた。護衛なんかしたくない。だけど、目的があるから仕方ない。って表情だったわ」
私が言えば、ヤンは益々驚く。
「何故そんな事が」
「それは貴方次第ね。貴方は本当にお金だけが目的で私を誘拐したの?」
10歳の少女と侮っていたのか、ヤンは私の質問に息を呑んだ。……さっきから驚いているばかりね。まぁちょっと気分が良いわ。そして、私を誘拐した男2人は、私がヤンの存在を言い当てた時から、目を白黒にしっぱなしで、状況について来れていないので、黙ったまま。まぁ煩くなくて良いわ。
「成る程。あの邸の使用人達が言っていた事はどうやら嘘じゃあ無さそうだ」
「どんな事かしら」
「お嬢は、随分大人びている。とても10歳には思えない。ってね」
成る程。我が伯爵家の使用人達はそんな事を言っていたのか。それからヤンは何を思ったのか、私を連れて来た2人に金を払った。
「もっと踏んだくるんじゃなかったのかよ!」
ブツブツと2人が溢すけれど、ヤンは威嚇した。慌てて2人が去って行く。こうして私とヤンだけになった。
「何故、追い払ったの?」
「俺の目当ては金じゃねぇ。アンタの親の兄にあたる、あのクソに聞きてぇ事があった」
騎士団長になったあのクズか。
「何を?」
「勇者について」
瞬間、私はヤンを睨み付けた。それはもう殺気も込めた程。ヤンは片眉を跳ね上げて私を見下ろす。
「なんだ。騎士団長の伯父を責められるとでも思ったか?」
ニヤニヤ笑うヤンに、更に呻き声を上げて睨み付けていく。
「何故、聞きたいの」
「イイぜ。あのクソが来るまで暇つぶしに聞かせてやるよ」
そうしてヤンが語った事は。
「今から15年近く前。俺ァ、7・8歳のガキだった。この姿だからな。周りの大人共もクソガキ共も俺を小突き、殴り飛ばしてウサを晴らしていた。そんな時さ。俺ァあの人に出会った。勇者とクソ2人と俺の女神」
「女神?」
なんだそれは。なっちゃんと一緒の女は私しか居ない。女神なんか居なかったっつうの。
次話から章が変わります。