先ずは情報収集から・3
すっかり更新を忘れていてすみません。
1/11で止まっていて焦りました。
「お、お嬢様! その男に笑いかけなくて構いませんから!」
両親が居る目の前なのに、護衛その1が慌てて言う。ちゃんと両親に聞こえないよう、小声だったけど。両親は護衛の態度に不思議そうだ。そんな両親にあまり騒ぐ事はマズイと思ったのだろう。護衛その2が「では、行ってまいります」と私を促した。
「ねぇ、ヤンって言ったよね? 子どもに笑われるのは嫌い?」
家が見えなくなってから、私は直接ヤンに問いかけた。
「お嬢様! そのような野蛮な者に声をかけないで下さいませ!」
「お前が笑いかけないで、と言ったから本人に尋ねているのよ。それと野蛮とはどういうこと?」
私が分からない、と首を傾げれば、ヤンが低い声で言葉を発した。
「お嬢。俺ァ、帰りやすな」
言うとクルリと足を家へ向けて歩き始める。
「ダメ!」
足早に行こうとするから、聞こえる範囲の内に、と大声で止める。ヤンが驚いたように私を見て足を止めた。ホッとして、ヤンの側に駆け寄る。
「ダメよ。ヤン。私はあなたに護衛をしてもらいたいわ」
ニコッと笑って、手を差し出す。気付いただろうか。護衛その1には、お前と呼んだけれど、ヤンには、あなたと呼称を変えた事。私はこの男に何故か敬意を払いたかった。護衛2人がヤンに対して悪意を込めた視線を送っている。ヤンはその視線に気付いたのだろう、2人を一瞬見たが、直ぐに気づかなかったように興味を無くした。
一瞬だった。だけど、私はヤンの一挙一動に注意を払っていたから分かった。2人を見たヤン。威圧が凄かった。もしかして、この男、強いのかもしれない。機会があれば、その実力を知りたいと思った。
ヤンは恐る恐る、という感じで私の差し出した手を取る。
「お嬢、ホントに俺が護衛で良いんですかい」
「ヤンは私の護衛をしたくない?」
ちょっと困ったように尋ねて来たヤンに尋ね返せば、ヤンは頭をガシガシ掻いて暫し考えている。その視線が宙を彷徨うのを見ていて、何となく肌で感じた。これは多分、10歳の私だったら分からなかった違和感。前世の記憶が戻ったからこそ、感じたもの。
私は俯いて笑った。
きっとその笑みは昏いものだったろう。誰かが見ていたならば。
「お嬢、護衛、務めさせて頂きやす」
「お願いね。……ヤン」
「なんです」
「私の事、守る価値があるかどうか、きちんと見極めてね」
10歳の言葉じゃない、と思ったのか、ヤンは目を瞠ったが、少しして頷いた。後ろの護衛には聞こえなかっただろう。ヤンの陰口ばかり叩いていれば余計に聞こえやしない。それは私にも都合が良かった。
さて。当初の予定通り、私はヤンと手を繋ぎながらあちこちを見て回った。楽しみながらも、旅をしていた頃と違う部分を隈なく探す。……良かった。どうやらそんなに大きな違いは無いみたい。これなら将来、家を出る計画も大幅に変更する必要は無さそう。
さて。物価がやや高くなっている他は、特に気をつける事は無さそうだ、と分かった私は、ヤン以外の護衛がある程度離れている事を確認して、態とヤンの手を離した。
「お嬢!」
聞こえないフリをして、路地に入り込む。人混みで逸れた事に焦る少女のフリをしてキョロキョロと辺りを見回していると、男が2人立ちはだかった。
「お嬢ちゃん。どうしたい?」
「あ、あああ」
ニヤリと笑う男達に怯えて、どうしよう、と視線をあちこちに彷徨わせる。男達は私に近づいて来て、私の腕を掴んだ。
「お嬢ちゃん、迷子かい?」
親切そうな笑顔を浮かべて、私の腕を掴んだ男は、もう1人の男に何やら合図を送っている。するとその男は、口笛を吹いた。それから腕を掴んでいる男と私の後ろに立つ。私は腕を振り払おうとしたけれど、出来ない。
「おやおやお嬢ちゃん。暴れると痛い目を見るぜ」
腕を掴んでいる男に言われて私は、大人しくなった。そうして男達に連れて行かれたのは、空き家だった。そこに私は転がされる。
「お嬢ちゃん、大人しくしていてくれよ」
「やっぱりガキは誘拐しやすいですね、アニキ」
「まぁな。これで後は金を踏んだくれば良いわけだ」
ワハハと笑い合う男達。
「貴族の娘だからな。高く吹っかけても払うだろうさ」
やっぱり私が貴族の娘って知ってるのねー。そうだろうと思っていたけど。
キリが良いので、あと1話更新します。