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先ずは情報収集から・2

少しずつ主人公が成長していきます。


昨日1/10の更新を忘れてすみません。

 「もう1人の方はどうしているの?」


 私はあの魔術師の事を尋ねるのも忘れない。そうしたら男は教えてくれたわ。この男が騎士団長になり、あの魔術師は魔術師長になっている、と。10年前とメンバーが入れ替わっているのね。まぁ良いわ。どうせこの国ごと滅亡させるんだもの。普段はこの男も魔術師も王宮で暮らしているらしいわ。なんて好都合。


 しかも、この男も魔術師も妻子が居るというの。あら、じゃあ大切な者を亡くす痛みを思い知れるわね。良い事を聞いたわ。ねぇ、知っているのかしら。あなた達の妻子は。私となっちゃんを踏み躙った事を。目の前で妻子を奪われた上で無様に死んで行けばいいわ。もしかしたら、私のように女神サマに会えるかもしれないわよ。


 そう思いながら、少しずつ情報を仕入れる。私達を召喚した国王はまだまだ現役。王太子もそのまま。でも10年前と違って王妃は離宮に引き篭もっている? 代わりに台頭しているのが側妃ねぇ。側妃……。側妃って誰だっけ。側妃について尋ねれば、面白い事を聞いた。


 あはは。


 まさかの私を転生させてくれた女神を信仰していた巫女ですって!


 笑えるわ。仮にも神に仕える身が欲深い権力者の妻⁉︎ しかも敬うべき相手の正妃を離宮に追い込んで? いえ、巫女がそこまで権力に執心したのか分からないけど、少なくとも国王は王妃より側妃を寵愛している、と。さすがは腐れ外道ね。


 王太子にも妻が出来た、ねぇ。へー。


 えっ? この国の人間じゃないの? 

 

 ウソでしょう? どうしよう。さすがに他国のお姫様を殺すのはマズイかしら。この国を滅亡させるにしても、その他国が先に滅亡させたら笑えないし。それにこの国を滅亡させるより先に私が殺されたら意味無いわよね。


 うーん。王太子と一緒に殺すなら構わないかなぁ。どうせ、その後この国亡くなるし。


 「まぁ、あの王太子妃もそのうち王妃様のようになるだろうけどな」


 ボソリと話すこの男。これだけ口が軽くて良く騎士団長なんて務まるわね。というか、子ども相手だから話しても問題無い、と思っているのかしら。それよりも王太子妃も王妃のように、という事は離宮に押し込まれるって事? それって王太子も国王も夫婦仲が最悪って事じゃないかしら。


 私は生まれ変わってから仕入れた知識を思い浮かべてみる。確か王妃……正妃とも呼ばれるあの女は、この国の公爵家の娘だったはず。まぁその前の国王から直々に指名された政略結婚よね。王太子妃も当然政略結婚だわ。でも、そんなのは貴族じゃ当たり前の事。それなのに離宮入りって事は、要するに排除されているって事よね。


 ふむ。ここは……


 「伯父様ぁ。サーシャ、王子様と結婚したいー」


 全力で7歳児を演じますとも!


 「うーん。サーシャは可愛いけど、難しいかなぁ。王子様は3人とも結婚しているから」


 そういえば、私達は2番目と3番目の王子には会っていなかったわね。


 「サーシャ、王子様と結婚出来ないー?」


 首を傾げてやれば、男は気持ち悪い笑みを浮かべて言ってきた。


 「そうだなぁ。サーシャが15歳になって社交界にデビューしたら、もしかしたら王子様に会えるかもなぁ。そうしたら結婚出来るかもしれないな」


 成る程。私が大人になってから、結婚出来るかもしれない。そんな発言をするという事は、私を側妃にしよう、くるいは考えているか。正妃と王太子妃の立場はともかく。その本心は知っておく方が良い。頭の中に入れておこう。もちろん、どうやってその本心を聞き出すのかという事も含めて。


 あとは、宰相や、私達を召喚する術を展開した魔術師達の動向も知っておきたいけれど、あまりそういう事を根掘り葉掘り聞けば、怪しまれる。子どもがそんな事に興味持たないからだ。怪しまれないように、これくらいにしておくか。


 「伯父様ぁ、サーシャ眠いのでおやすみなさい」


 「もう眠いのかい?」


 「兄さん、サーシャは7歳だが、身体が弱くてね。体力が無いから直ぐに眠くなるんだ」


 私がアクビをしてみせれば、下衆は残念そうな顔をする。そこに父親が私について説明した。


 「うむ。サーシャ。体力が無いと王子様と結婚は出来ないぞ?」


 「えー。じゃあ結婚しないー」


 別に身体を鍛えてまで結婚するわけ無いし。


 「それはいけない。体力がつくまで伯父様が訓練してあげよう」


 訓練? 良いかもしれない。いつかこいつを含めた皆を殺す時に体力は確かに必要だ。


 「それはダメだよ、兄さん。サーシャは娘なんだから。兄さんは自分の子が息子だからって同じように考えないで欲しい」


 訓練したい、と言う前に父親に拒否された。チッ。まぁいいわ。今はまだ、勉強もしないといけないから。父親に諭された下衆その1は、仕方ないと諦めて私におやすみ、と挨拶をしてきた。


 あれから3年。私は10歳になった。この年、私は運命的な出会いを果たした。父親と母親に頼んで護衛付きで平民の暮らしを覗きたい、と言ったのだ。ちょうど王都では祭りの頃で商家の娘風の出で立ちで護衛が3人なら、という事で了承を得た。


 目的は、貴族として平民の暮らしを知ることは大切だから学びたい、だ。私の日頃の勉強意欲を知っているから、渋々と両親は受け入れた。護衛の中で初めて顔を合わせた者が1人居た。


 こげ茶色の髪と海を思わせる青い目の男。22か3くらいか? 年齢は尋ねなかったから、もっと上かもしれないし、下かもしれないが。筋肉質で、私を片手で持ち上げられそうな太い腕をしている。ちなみに私は日本人の10歳女児と同じくらいだ。こちらの人間は、女性でも身長が高めだったから、もっと伸びるだろうが、今のところは日本人と同じような成長を遂げている。


 それなのに、片手で持ち上げられそうなのだから、どれだけ太いか分かるというもの。浅黒い肌は日焼けか、と思っていたが、他の護衛が嫌そうな表情を浮かべて、両親に聞こえないように陰口を叩いている。どうやら異国出身だから、肌が浅黒いらしい。男は、いつも何か言われているのか、表情一つ変えない。


 「ヤンと申しやす」


 ちょっと訛りが入っていて、その訛りも、そして名前もこの国らしくなくて、気に入った。


 「サーシャ。よろしくね」


 ニコッと笑顔になってしまった。ヤンは、驚いた表情を浮かべた。……貴族とはいえ、まだ10歳なんだから、笑顔を浮かべても変じゃないでしょ。何が不満なのよ。

今年も引き続きよろしくお願いします。

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