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2度目の人生を迎えて・4

今日の分の更新です。次話は12月30日の更新予定です。

 「対価? まだ何か奪う、と」


 『奪うとは聞き捨てならぬ。アナタの願いを叶える代わり。物を手にするのに、金のやり取りをするのと同じこと』


 そう言われると仕方ない。確かにタダより高いものは無い。とも言うのだから支払って損は無いだろう。


 「こちらの世界の金で足りる、と?」


 『ワタクシが金を貰っても仕方有るまい。アナタ達を呼ぶのに国王達が支払ったのは、ワタクシへの恭順と供物だったが……』


 「女神である貴方を敬えばそれで良い、と?」


 『供物はこの国一番の酒と果物。アナタに用意は出来ない。国が管理しているから。それに。アナタを転生させる事は、ワタクシの領分を超える。恭順と供物では対価に満たない』


 「つまり、私の願いはあんなやつらよりよっぽど高価なものだ、と?」


 『そういうこと。出来る事でも、領分を侵す事はワタクシとて無事には済まない。暫くは神の力を使えなくなる。つまりワタクシを崇める民達を見守る事が出来なくなる。ヒトの言い方だと、数年間だな』


 成る程。数年間は女神としての役割を果たせないような事をしてくれる、というのか。それならば、高い対価を支払う価値がある。


 「何を支払えばいい」


 『ふむ。幾つか有るが選ばせてやるくらいは譲歩しよう』


 選択肢を与えてくれるとは、随分優しいカミサマだ事で。


 「それは?」


 『先ずは、その復讐心に耐えられぬ身体』


 「却下」


 前言撤回。この女神、優しいんじゃなくてアホだ。復讐心に耐えられない身体になったら復讐出来ないだろう。


 『だろうな。次はどれだけ復讐心を抱いても成功しない』


 「却下」


 何を言ってる。成功しないなら転生する意味が分からない。アホか。


 『何やら不遜な事を考えておらぬか』


 「気のせいでしょう」


 『では次。復讐を成す為に必要だと思われる物が全て手に入らない』


 「保留」


 必要な物が全て手に出来なくても、復讐はする。けれど、有れば復讐が楽になる物が有るなら使いたい。この選択は全て条件が出揃って、一番マシだったら。


 『次。金が一切手に出来ない』


 「却下」


 身体と復讐の成功と同じくらい、金は大切だ。資金が無ければ動けない。


 『誰からも信頼されない』


 「保留」


 なかなか良い条件で、これに決めても良い気がしたが、まだ良い条件が有るかもしれない。


 『以上じゃ』


 「じゃあ最後で」


 迷う事なく決断した。復讐に必要な物が手に入らないのは、もしかしたらキツイ。だが、誰にも信頼されないくらいは、大した事無い。


 『ふむ。即決か。だがそれだと面白みが無いな』


 「面白み? そんなもん必要無いはずだけど」


 『そうでもない。人が苦しみや辛さ・悲しみを乗り越えた先で、ワタクシを崇める事がワタクシの力を増幅させる。大切な事』


 「だけど、即決した私では、信頼されない事に苦しみや辛さを感じない、と」


 『そうなると、ワタクシも領分を超えてまでアナタを転生させる意味が無い』


 「それは困る」


 そうか。私はこの女神を信じてないから崇める事も無い。なのに、普段以上の力を使え、と頼んでいるのか。要するに願いと対価が見合ってないのだろう。


 『そうだな。誰からも信頼されない事くらい、アナタは平気。ならば信頼されない、という対価ではなく、古来よりヒトにとって一番大事な感情をもらう』


 「一番大事な感情?」


 『誰かを愛しく思う。愛情。その中でも一番辛さや悲しみや苦しみを抱え、けれども喜びや幸せもその身に湧き上がる恋愛感情』


 そんなもので良いなら、くれてやる。というか、私がこの国の男でも女でも惚れるわけがない。


 「そんなものくれてやるけど、私がこの国の男でも女でも惚れるわけがない」


 『ならば、こうしよう。アナタに恋愛感情を抱く者から奪う。また、アナタにも万が一、恋愛感情を抱く相手が現れたらその時にアナタから恋愛感情を貰う。アナタに恋愛感情を抱いた相手は、本来アナタの願いに関係無いから、アナタから貰えたら相手に返す。つまり、アナタから奪えなかったら、アナタを好きになった相手から、アナタへの恋愛感情も記憶も奪うけれど、アナタが誰かを好きになったら、その感情も相手への記憶も奪う。どうだろう』


 「そんなやつ、居ないと思う。誰にも信頼されないってヤツの方が良いんじゃない?」


 『それでは見合わない。だから、互いを信頼しあってもらう。その信頼の上で恋愛感情が生まれた時、それを奪う方が対価として見合う。アナタを愛する者の記憶と感情より、アナタが相手を愛する感情とその者の記憶が尚、対価に見合うわね』


 「恋愛として、私が好きになる奴も、私を好きになる奴も、居なかったらどうする?」


 『その時は、転生したアナタが死ぬ時に、アナタの記憶からも感情からも、アナタの友である勇者を消す。……つまりアナタから彼女を奪う』


 それは随分重い。けれど、死ぬ時ならばまぁいいか。復讐が終わってる。出来れば、なっちゃんの事は忘れたくないけど。


 「それはなかなかにキツイし重いけれど、復讐を果たせていたら、忘れてもなっちゃんは許してくれるかもしれない」


 『契約成立で構わない?』


 「ええ」


 こうして私は、転生を果たした。サーシャ・グレイルという名前のこの国の貴族の令嬢に。……よりにもよって、身分の高い奴が両親なのは、腹立たしい事この上なかった。グレイル伯爵。復讐したい相手リスト(私が死ぬまでに覚えている顔だけど)に入ってる相手かな。


 記憶を取り戻した私は、改めて父親と母親の顔をじっくり見た。

なるべく週1で更新したかったのですが、無理そうなので、本作は月3回の更新予定です。


新作は年明けに開始予定です。エブリスタからの転載では無く、小説家になろうでの新作です。


また、逆ハー世界に転生して〜ですが、年明けにエブリスタへ逆転載します。

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