2度目の人生を迎えて・2
毎月10日・20日・30日に公開します、と宣言しておきながら、忘れていてすみませんでした。小説家になろうのサイトで読んで下さっている方が居るのか、分かりませんが、もしいらっしゃるなら申し訳ないので、小説家になろうで新作を公開します。こちらのサイトで先行公開します。
その後、言葉が分からない私の前では、何を話しても良い。と思っているのか、次々と討伐メンバーは話していく。
「ああ、早くあんな禁忌の勇者と離れたい」
「だが、国王陛下の命令だ」
「解っているさ」
「しかし、あの勇者は他国には行かせられないな」
「ああ。国王陛下が、禁忌の勇者でも力は間違いない、と言っていたからな。確かに強い。他国に知られたら、勇者を奪いに来るに違いない」
「きっと、魔族討伐が終わった土地から国境封鎖を始めているだろう」
「そうだな。禁忌の勇者だが、その力は間違いないからな」
「まぁ魔人ならば、力が強くて当然だろうが」
「いつ我々を殺そうとするか、分かったものじゃないな」
その言葉を聞いて、カッとなりかけた。なっちゃんは人殺しなんか、しない。と叫びたかった。だけど、情報収集はしなくちゃいけない。
「全くだ。殺される前に我等は逃げよう」
「そうだな」
それきり2人は他の話を始めたから、後は何も情報を得られなかった。でも、分かった事がある。なっちゃんは、この国の人間に嫌われている、と。もしかしたら魔族の討伐が終わったら、殺されてしまうかもしれない。
そう思えば、魔族の討伐を行なっている間は、生きていられる保証があった。後は、なっちゃんを説得して、どうやってこの国を脱出するか、ということを考えなければ。
だけど。事情を理解してから3年余り。
いつ、どこに現れるか分からない魔族の討伐で、なっちゃんとゆっくり話している暇が無かった。そして、召喚されて月日が経っても、何故か、なっちゃんの髪の染色は落ちなかった。
いくら美容院できちんと染めたと言っても1年も経てば、色が落ちてもおかしくないのに、まるで生まれた時からなっちゃんの髪は赤かったように、髪が伸びても色が元の黒に変わらなかった。召喚された時、なんらかの影響が起こったとしか思えなかった。
そうして、召喚された時からおよそ5年。
なっちゃんからこの世界の常識として、年が明けたら年を取る……つまり誕生日制度が無いと聞いていた私は、なっちゃんと2人で23歳になっていた。その年のある日を境に、10日以内には必ず現れた魔族が15日経っても現れなくなった。1ヶ月が経ち、3ヶ月経った頃、召喚された王城とやらに帰還しろ、という通達を受けて、帰還した。
そして、討伐メンバー2人は、中枢メンバーにこれでもか! って程、褒め称えられて褒美も沢山貰ったのに。私となっちゃんは、定期的に貰っていた路銀の残りをそのまま持って行け、と言われて「お疲れ様」も「ご苦労様」も無く、追い出された。
あの討伐メンバー2人は、確かに強かった。だけど、なっちゃんはそれ以上だったのに。なっちゃんの活躍が無かったら、この国は魔族にボロボロにされただろうに。
感謝の一言さえ無く。
忌み嫌うモノだ、とばかりの冷たく蔑んだ目を、誰も彼もが浮かべて。
さっさと目の前から消え失せろ、と追放された。
それどころか、処刑されないだけマシだろう、とばかりに。
それが、魔族討伐の褒美だ、と。恩情だ、と。
そう言っていた。なっちゃんは、それが信じられなかったらしくて、泣きながら、王城の門を叩いた。だけど、門番にも虫けらのような目で蹴り飛ばされ、私は、なっちゃんを立たせて、王城から離れた。
なっちゃんは「どうして」と「あんなに頑張ったのに」を繰り返して、すっかり打ち拉がれていた。何も気力が沸かないみたいで、泣き暮らす事1ヶ月。それから、私を見て、ハッとしたように言った。
「いつか、必ず、日本に帰ろう」
生きる意志を見せて、どうやって生きていこうか考えながら旅をする事、半年。その半年の間、私達が魔族を討伐した土地を歩き回った。だけど、どの土地もやはり、なっちゃんの髪の色を嫌って、なっちゃんに助けてもらった恩を忘れて、蔑みの視線を浴びせて来た。
皆、二度と現れるな。と言わんばかりに、ある程度の食料を投げて寄越して、無視をした。なっちゃんは、その態度に、更に絶望していった。
「魔人だろう」
「不吉な赤」
「禁忌の勇者」
と、散々に言われていた。なっちゃんは、自分の髪の毛が禁忌の色だ、と知っていた。でも、禁忌が、こんなに酷い扱いをされる事になるとは思っていなかった。だから、尚更絶望した。
でも、私達は諦めなかった。だから、私の提案で他国を目指そう、と、国境周辺を調べ回る旅に出た。それがおよそ2年。時間がかかったのは、やはり国境の警備が酷かったからだ。騎士だか兵士だか知らないが、見つかっては、追いかけ回された。
だから国境警備の綻びが無い事を知るのにおよそ2年かかった。そうして、追放されてからおよそ3年。この国に勝手に召喚されてからおよそ8年。度重なる追跡で身体がボロボロになり、精神的にも弱っていた私達は、のたれ死んだ。
この国を怨んだまま、先ずはなっちゃんが死に、それを看取って、その身体が骨になるまで側にいた私がやがて死んだ。その時、私は、なっちゃんとは違って、国じゃなくて、女神とやらを怨んで死んだ。
それが良かったのか悪かったのか。
私に怨まれた女神様が、さすがにお怒りになったのだ。
本作品【神への願いは復讐。転生の対価は恋愛感情】ともう1作品【流行の最先端は、婚約破棄です⁉︎】は、エブリスタにて火曜日と金曜日の週2日公開してます。なので、こちらは月3回の更新となっています。しかし、小説家になろうで読んで下さって楽しみにしている、という方へのお詫びとしてこちらで新作を公開しますので、もう少し頻繁に更新出来る……いえ、更新したいと思います。毎日……といかなくても、最低週1の予定です。本作品を楽しみにしている方がいらっしゃったら、新作もよろしくお願いします。