王弟との密談・2
「分かった。許せる訳じゃ、ない。命令されようが、反発しなかった。それはこの国の奴等全員の意思だ。自分達の命と私たちの命を天秤にかけて、自分達を取った。その事実は覆らない。それを許せるわけがない。だが、一方で私がそんな目に遭ったら自分の命を取るだろう、と言える。だから理解は、する。その理解によって国全てを恨む事はやめよう。お前達の言葉から考えるに、王弟が国王を望む、というわけか」
王弟とベジフォードが強い目で頷く。
「その通りだ。王弟殿下に王位を継いでもらい、この国を立て直す。君たち……勇者とその友人のことも正しく広めよう」
ベジフォードが紡ぐ言葉に首を振った。今更、私達のことを知らされて何になる。勝手に招ばれて、勝手に勇者に仕立てて、過酷な旅をさせておきながら、なんのフォローも入れずに最期は廃棄とばかりに捨てられた。そんな人生を送った事を、勇者は尊いだの、勇者を讃えるだの、そんな甘ったるい言葉で許せるはずがない。今更要らん。
「王弟、貴様以外の王族を全て滅ぼす。王子達の妃と子は貴様が処分を決めろ。そして、私となっちゃんが死んだ場所に、私を連れて行け。それが貴様を生かす対価だ。もう最期の記憶は殆ど残ってない。常に曖昧だった。だから死んだ場所も覚えてない。……いいな。必ず私をそこへ連れて行け」
王弟をギッと睨み付ける。王弟は「その約束を果たすことにしよう」 と頷いた。
「あいつらをこの手で殺せるならば、それまでの間、貴様達の思惑に乗ってやってもいい。何もするな、と言うなら何もしない」
「ならば次は十日後にここに来い。機会は与える。それまで大人しくしていろ」
ベジフォードに言われ、片手を上げて答える。そうして、この話を終えた。図書館を出ようとして、王弟から声がかかる。
「君は……もし、勇者が生まれ変わっていたら、会いたいのか?」
なっちゃんに会いたいか?
そんなの。
「会いたい。だが、会わない」
「それは」
「貴様の質問には、もう答えん。十日後にまた来る」
今度こそ、図書館を後にした。
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