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女神と再会・2

 『私がどんな女神か覚えているか?』


 尋ねられて私は首を捻った。どうでもいい事だったので抹消していたのだが。


 「あー、確か力を増減出来る」


 『そう。それは女神として生まれた時に得た力。私の前任者の神はイタズラ心とそれに見合う力を持って生まれた神』


 何とも傍迷惑な力を持った神が生まれたもんだ。……やっぱり一発殴らせろ。ん? ちょっと待て。イタズラ心を持って生まれた?


 「まさか今回の召喚に関連している、とか言うオチ?」


 『そうよ。かの神が異世界召喚の方法を授けたのだもの。それと、それもあるけれどこの国の王家は私の前任者の神を崇めていた。だからこそ召喚が上手くいったということ』


 「この国の王家が崇めた神? 王家が代々ってこと?」


 『そうね』


 「ということは異世界からの召喚って私となっちゃんが初めてなんじゃなくて」


 『昔から何度もあった。あなたの国や他国でも。あなた達の国には神隠しって言葉があるでしょう?』


 もしや本当に神隠しだったと? そしてその行き着く先が異世界だ、と?


 「その神を招んで」


 『それは無理よ。あの神は私より高位だもの。私が呼びつけるなんて』


 成る程、神の世界も上下関係がある、と。……だからなんだって言うんだろうか。知ったこっちゃない。


 「私には関係ない」


 『それだけではないのよ。下手に高位の神を呼びつけるのは私の命に関わる。私が死んだらあなた、復讐が果たせないわよ?』


 「どういうこと」


 『あなたが前世の記憶を持って転生したのは私の力を分け与えたから。私とあなたの契約。でも私より高位の神はその契約を破棄する事も出来るわ』


 厄介だ。私はその神を殴る事は諦めた。復讐に比べれば取るに足らない。死んだ後で会えたらぶん殴る事に決めた。


 「分かった。取り敢えずその神の事は置いとく。で? この国では異世界召喚は行われない。では他国はどうなの」


 『今のところそういった空気はない。異世界召喚なんて簡単なものじゃない。あなた達が喚ばれた時に人の命が奪われていたはず。あれは異世界召喚をした魔術師達の命と交換だった。それも1人2人じゃない。この国はそうしてあなた達を召喚したけれど、それは偶々かもしれない。そんな不確定要素の強い事柄のために態々命を投げ捨てる魔術師が居るわけがない。他国もそこまでして異世界から人を招く必要もない。この国くらいだ』


 つまりこの国のトップ連中だけがバカということか。そりゃあ復讐しても心は痛まないな。


 「それで? あなた以外の神は召喚に力を貸さない。あなたも貸さないならば異世界召喚は成功しない、と考えてもいいのかしら」


 『そうね。この国がかつてと同じ方法を取ろうとしても私が力を貸さない以上は無駄ね。魔術師達は無駄死にすることになるわ』


 それならまぁいいか。後は聞きたいこと……何があるかしら。


 「あなたへの対価は何が良いのかしら」


 『ならばその髪飾りでいいわ。それくらいならちょうどあなたの願いと見合うと思う』


 女神が言うなら、と私は髪飾りを外して渡した。それを受け取るなり女神は消え失せる。取り敢えず召喚しようと考えても召喚は成功しないということだけは、あの女神を認めてやる。もし召喚が成功したらその時点で国のトップ連中を血祭りにあげてやる。そして死んだらあの女神とその前の前任者という神を殴ってやるわ! 覚悟してもらいましょう。


 取り敢えず異世界召喚は無くなった。それならば先ず考えるのは側妃の件だろう。側妃を召し上げその命を奪って儀式を行っても異世界から人は現れない。それは只の人殺し。だが相手は腐っても王家。隠滅を図るのは想像せずとも解る。あいつらがそんな簡単に性根を入れ替えるものか! そうだ。だからこそ再び異世界から人を喚ぼうなどと脳味噌に虫が沸いたような考え方に陥るのだから。


 きっと前回と同じだけの人数は殺す事を考えているはず。いや。儀式を行っても異世界から人が召喚されない事に躍起になって更に人を殺そうとするはずだ。いっそのこと自分達の命と引き換えにすれば良いのに。そうだ。やつらの命と引き換えに儀式をしろ、と女神が言うのはどうなんだろう?


 『無理よ』


 「うわっ。何、急に」


 いきなり女神の声だけが聞こえてきた。姿は先程とは違って見せないらしい。


 『あなた私を心の中で呼んだでしょう。だからあなたの考えを覗かせてもらった。普段はしないけれどこんなに私を強く呼ばれては応えてしまう』


 要するに私が女神に対して色々と考えていたから、ということか。


 『そういうことね。考えを知られたくないなら私を強く呼ぶことはやめるべきね』


 「分かった。ところで考えている事が解ったのに無理とは何故」


 『この国は私の前任者である神を崇めていた、と言ったわね?』


 「聞いた」


 『彼の神は私より力が上。そして彼の神から異世界召喚の法を授かった時、その時代の王族が“王族以外の者の血を流す事で召喚することを認めて欲しい”と願った。彼の神はそれを受け入れた。つまり彼の神と何代も前のこの国の王族とで契約を結んでいるから王族が異世界召喚の犠牲になることは無い』


 「とことん屑だな。この国の王家共は。昔から屑なのか」


 『まぁ私もあなた達を喚んだ事に対して負い目があるから猶予は与えられる』


 「猶予?」


 『異世界召喚には条件が沢山ある。人の命だけで成り立つわけじゃない。その他の条件の方をなんとかしておくから。条件が満たされない以上は直ぐに命を散らす事は無い。でもあなたの復讐が私の優先契約だから。あなたが王家に復讐する頃には条件が満たされてしまう。それは私の力の制限の問題』


 私との契約が優先事項ということか。


 「分かった。王家に復讐するにあたりやつらの儀式より早く復讐すれば良いというわけか」


 私の発言には女神は答えなかったけれど微かに笑い声がした。

お読み頂きまして、ありがとうございました。

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