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仇の一族・3

 取り敢えず私から手を離した王太子。そして第二王子と第三王子が令嬢達へと足を向ける。王太子も他のご令嬢に足を向けた。青ざめた表情のご令嬢方。従者達も、さすがにこんな話だとは思いもよらず、自分達の主人が選ばれて欲しくないような表情を浮かべていた。


 「お嬢、大丈夫ですかい?」


 そっとヤンの声がして、私は頷く。怒りを抑えるのに必死だ。


 「グレイル伯爵令嬢」


 王妃に話しかけられて、私は目を伏せつつ、王妃に近付いた。それから座ったままの王妃より目線が高いのは不敬にあたるため、その足元に跪く。


 「誘拐された、と耳にしています。怪我はしたのかしら?」


 「答える許可を頂けますか?」


 「賢いわね。許しましょう」


 「怪我はしておりません。腕を引っ張られ路地裏に連れ込まれて、抵抗しましたが、力敵わず。どこかに連れて行かれて寝転がされたところで、あの護衛が助けに来てくれましたので」


 「そう。では別に瑕疵とは言わないわね?」


 それは、令嬢としての価値に傷が付いた事は関係ない、と言われているのと同じね……。別にそんな価値はどうでもいいけれど、それを王妃自らが言うって、どれだけ失礼なのかしら。


 ほんと、腐った王族だわ。


 「面を上げなさい」


 恐れ多い、と断る私を許さず、顔を上げさせる。仕方なく顔上げた私と王妃の目が合った。そして、その目を見た後、私は目が合った事に狼狽たフリをした。


 「まぁ、愛らしい。そのように怯える必要は無くてよ」


 コロコロと笑い声を上げる王妃。私は恐れ多い、と怯えておく。


 「あなたの瑕疵は瑕疵と言わない事を私が宣言致しましょう」


 「あ……有り難きお言葉を」


 王妃の宣言に、私が礼を述べようと言葉を紡げば、とうの王妃に遮られる。


 「礼は不要。それより、何故、誘拐される事に至ったか、その事情を話してみなさいな」


 ……成る程。腐っても王族。邸内に閉じ籠っている筈のご令嬢が、誘拐されるなんて有り得ない、と言いたいのだろう。


 「……無礼を承知で失礼致します。私は、予てより、平民の暮らしを見てみたい、とお父様にお話しておりまして、許可がおりました日に、護衛を3名連れて外へ出ました」


 そして初めて見るものばかりで、令嬢に有るまじき事だが、興奮して護衛の存在を忘れて好き勝手歩いた事、それにより護衛と離れた隙に誘拐されてしまった事を話した。


 わざと捕まった、等と話すつもりは無いが、嘘でも無い。話していない事が有るだけだった。


 「成る程。お転婆なご令嬢なのね?」


 王妃がクスクスと笑って私を嗜める。私は身を縮こまらせて恥ずかしそうに俯く。それを見、経緯を聞いた王妃は満足そうに、頷いた。


 「下がっていいわ」


 王妃に言われて下がる。それから適当なところで、今日が終わったのだが。ご令嬢方は皆、顔色真っ青で……無論私も怯えているフリをしていた……帰った。母親にどうだった、と尋ねられたので、適度に怯えながら事情を話せば、最初はそんな馬鹿な、と一笑した。その母親に全員が聞いている、と話すと、漸く顔色を変えていた。


 どうやらこの母親は、自分の常識外だと、それがどれだけ真実であっても、いとも簡単に切り捨てるらしい。今回は、お茶会に招ばれた令嬢全員が証人だから信用した。というところか。

 まぁ人間なんて、自分の常識外や価値観の外に有るものは、どんなに素晴らしい考えだろうが、どんなに可笑しな現実だろうが、なかなか認められないものだから、こんなものだろう。


 そんな母親を思考と視界の両方から追い出し、私は自室に入るなり、今日のお茶会について考えていた。


 側妃探し?

 絶対違う。


 夜が辛いなんて、そんな事を正妃達が言うものか。仮に本当だとしても、王太子妃など、もっと前から探しているはずだ。今更過ぎる。


 何かウラがあるはずだ。そんな事を考えつつも、疲れからか、私はベッドに潜り込んだ。眠かったから。その眠りにより、私はある事を思い出したーー。

お読み頂きまして、ありがとうございました。

前回更新よりそんなに遅くないと思っていましたが、3ヶ月経ってましたね。のんびり更新続きます。

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