復讐の下僕・3
長く放置していてすみません。
エブリスタ先行ですが、エブリスタも放置気味だったもので……。
不定期更新に変わります。
「側妃……」
さすがに、父と母が眉間に皺を寄せている。どうやら、私の事をそれなりに可愛がっているらしい、この2人は、私を側妃にしたくないようだ。
「さすがに側妃なんて、そんな権力争いにサーシャを巻き込みたくないよ」
父が言う。母も隣で頷いている。
「何を言ってるんだ。どの王子でも側妃だとしても、寵愛を受ければ、そして男児を産めば、将来は安泰だぞ! なぁサーシャ。王子様と結婚したいって言ってたもんなぁ」
「ううん」
「何?」
「私、もう、そんな子どもじゃないもの。側妃なんて2番目でしょ。私、他の人と夫を取り合う気無いし、それが王子なら、誰でも面倒くさい事になりそうだから嫌。それに私まだ10歳だもの。この国の法では、正妃は幼い頃から婚約者として後に妻として扱われるけど、側妃は15歳にならないと、なれないのでしょう? 成人して子を産ませる事が第一条件のはずだもの。まだ5年先だわ」
書斎に籠もって手当たり次第知識を得ていた私は、この悍しい男に突き付けてやる。
「サーシャは、そんな難しい事を知っていたのか。だが、大丈夫だ。側妃候補なら10歳でも問題無いし、俺の姪だからな」
「伯父様の姪でも、お側に上がれるのは未だだから、あと5年経ってからにして下さい。その頃には、家のため、と割り切れるから」
「成る程。結婚に夢を見ていたのか。そうかそうか。分かった。それじゃあ14歳になったら、殿下達に会わせてやろう。そうすれば1年で覚悟も出来るだろう」
そんなわけで、私に猶予が出来たが、それでも4年。1年早くこの家を出る事になるが、構わない。この家を出る時には、必ず、この目の前に居る男をこの手にかけてから、出て行こう。
さぁ、4年後が楽しみだ。
とりあえず、悍しい男の前から下がって、ヤンを探せば、ヤンは護衛の訓練を自主的にしていたようだ。直ぐに私に気付いた。
「お嬢」
「ヤン、あなた……。私に構ってばかりで自分の訓練が上手くいかない?」
「いや、平気ですよ」
「そう?」
「それより、あのクソ男はなんだって?」
「ああ、そうね。ヤン。4年後に家を出るわ」
そう言って、先程の事を話せば、ヤンは顔を顰めた。
「相変わらずクズだ」
「だからこそ、罪悪感なんて浮かばないんじゃない」
クスクス……と私が笑えば、ヤンも「そういやぁそうですなぁ。確かに」と意地悪く笑った。
「しかし、4年か。短くなりやしたねぇ。お嬢。やはり逃げる事を考えやしょうや」
「……そうね。ヤンの言う通りが良いのかもしれないわ」
そんなわけで、先ずは生活習慣の見直しから私は始めた。毎日走る事が優先され、食事も野菜は食べるけど、果物は苦手な私は、果物も多く食べるようにした。肉や魚も多めにして、主食のパンは、トースト1枚を2枚へと増やした。
その他、勉強は変わらず、けれど気分転換に護身術で身体を動かし、淑女教育の合間にも身体を動かした。かと言って、毎日ではなく、週に2日休みを作って、その休みにはマナーとダンスレッスンを中心に乗馬も取り入れた。
馬に乗れる事に越した事は無い。ただ、意外にも乗馬が難しくて手こずるなんて思いもしなかった。
「お嬢……。馬も苦手ですか」
ヤンが苦笑する。
「前は、馬に乗る機会も無かったし。触ったくらいよ」
「そうですか」
「前はね。平和で命の危険は無い方だったわ。他所では戦があったけど、国では無かったしね」
「そんな国がありやすか」
「ええ」
「行ってみたかったっすなぁ」
「そうね。ヤンなら連れて行っても良かったわね。でもヤンの苦手な勉強をしなくてはいけないのよ?」
「うへぇ。それは勘弁ですなぁ」
笑って、私はまた乗馬にトライする。そうして日々が過ぎて行き、いつの間にか私は12歳になっていた。
「ねぇ、サーシャ」
「はい、お母様」
「今度ね、城でお茶会があるの。本当はあなたが10歳の頃からお誘いは頂いていたのだけど、あなたが拐われた事があったから断っていたの。でも王家主催のお茶会だから、本当は無礼にあたるの。だからこれには出席して欲しいの」
困ったような母親に、私はにっこり笑って受け入れた。
「構いませんわ。ただ、護衛にヤンを付けて欲しいのです」
「そう! 行ってくれるのね? 良かったわ。ヤンを護衛に付けるのは、お父様に話しておきますからね!」
あからさまにホッと胸を撫で下ろす母親を冷めた目で見ている私には、気付いていないようだった。
感想欄とレビュー欄を諸事情により閉じました。
お読み頂きましてありがとうございました。




