表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/42

復讐の下僕・1

更新をすっかり忘れてました。すみません。こちらで新作を書いていたので、コレともう1作品の更新をすっかり忘れてました。

 「そうさ。俺と同じ黒い髪と黒い目をしていた。いつものように殴られて動けない俺の傷を治そうと自分の持ち物で手当てしてくれた。そのお礼をした俺に女神は笑った。笑って俺に一言だけ言ってくれた。それだけだったが、俺ァ優しくしてくれた女神を忘れてない。

 その夜、女神がクソ2人に嬲られていたのをガキの俺は見ちまった。泣いてる女神を俺ァ助けられなかった。勇者が帰ってくれば女神は助かると思ったけど、女神は勇者に話さなかった。その理由は知らねぇ。だが女神をあんな風に嬲った挙げ句にアイツらだけが国から褒められた。勇者も女神も見捨てた。その時から俺ァ決めたんだ。いつかあのクソ2人に勇者と女神の仇を打つってな」


 その話に私は、思い出した事があった。死ぬ少し前の出来事。


 「そう。あの時の黒い子犬なの」


 私がポツリと言えば、ヤンが目を瞠る。


 「お嬢、なんでそれを知ってる! 女神が俺に言った言葉そのものだ!」


 「全身にケガを負って、傷ついた子犬だと思ったのよ。私と同じ髪色の黒い子犬。特に右の脇腹が酷かったわね」


 私がポツリポツリと言葉を溢していけば、益々目を瞠るヤン。


 「お嬢は、一体」


 「何の因果か、私を慰み者にした男の姪に生まれ変わるとは思ってなかったわよ。でも、死んでからこの世界の女神とやらに会って復讐する事を許されて生まれて来たわ」


 クスクスと笑い声を上げれば、ヤンは信じられないモノを見るような視線で私を見る。


 「黒い子犬。私は女神なんかじゃないわ。なっちゃんを……勇者と私を勝手にこの世界に呼び出しておいて、帰してもくれずに捨てたこの国を私は許さない。だから残念ね? 折角助かったのに、私はこの国を滅ぼすわ。黒い子犬。私が助けた坊や。お前も私達を蔑ろにしたこの国の人間だと思っていたけれど、他国の者なら許してあげる。この国から出て行くと良いわ。私は人生をかけてこの国を滅ぼすから」


 歌うように私が言葉を紡げば、ヤンは両目から涙を流して、そのまま跪いた。


 「お嬢。いえ女神。俺ァあなたに助けてもらった時からあなたのために生きようと思った。あなたが女神の生まれ変わりで、あなたの望みが国を滅ぼす事なら、俺はその望みを果たすまであなたについて行く」


 「黒い子犬。あなた私の部下になるつもり?」


 「ブカ?」


 「手足となって働くの?」


 「女神の下僕になりたい」


 「そう。ならば黒い子犬。私が奴等に復讐を遂げるまで側に居る事を許すわ」


 「最後まで」


 ヤンは私の足元に頭を擦りつけてきた。これはあなたを我が主人と認めるという古い主従契約だ。随分古い契約を知っている。だから私はその足を上げてヤンの顎を蹴り上げる。ヤンは恭しく私の足の甲に口付けた。


 ……ホント、良くこんな古い契約知ってるわね。私だってつい、最近になって家に有った本で知ったのに。


 「良く知ってたわね、こんな古い主従契約」


 「女神こそ」


 「お嬢、で良いわ。私は復讐するために、この国について何でも良いから情報が欲しかったから家の本を読みまくったのよ」


 「分かりやした。お嬢。俺ァ、お嬢の邸に雇われるまで奴隷のような事をやってましてね。奴隷兼護衛。その時に、この契約とやらをさせられたんです。まぁこんな主従契約を交わしても強制なんか無いですがね。俺の意思であなたに仕えますよ」


 「そう。……さて、帰るわよ。私が復讐をするにも、まだまだこの身体や知識では無理だわ」


 「お嬢の言う通りに」


 そうして私はヤンと共に邸に帰った。他の護衛から私が行方不明になった事を聞いた両親が、あのクズに働きかけて騎士団を動かそうとしていた矢先だったらしい。ヤンと逸れて拐われたけれど、直ぐにヤンがあちこちを探してくれて、拐った男達をやっつけてくれた、と私が話せば、ヤンにお咎めなど無かった。


 それからも私は勉強をする日々を送るが、同時にヤンに護身術を習う。両親も私が拐われた事が堪えたらしく、身を守る術を習いたい、と言えば頷いてくれた。残念ながら魔力が殆ど無い私には魔法は使えない。だから、体術だけにしか頼れない。


 「しかしお嬢」


 「言わないで」


 「すいやせん」


 微妙な表情のヤンに、私は何も言うな、と厳命する。ヤンがシュンと肩を落としたのは少しだけ申し訳ない気持ちになったが、でも何も言われたくなかったのだから仕方ない。


 ……言われずとも分かっている。


 ここまで。ここまで護身術すら身につかないなんて、思わなかったっ! 確かに前世の私は運動音痴だったが……転生してからも運動音痴だと、誰が思うか。


 「お嬢、その、休憩しますか」


 「したくない。でも、するわ。ヤン」


 「何か」


 「私ね、前も身体を動かすのが下手でね。まさか今も下手だと思わなかった」


 前、というのが前世だとヤンは分かったのだろう。私の傍らにそっと立った。


 「そう、なんですか。前のお嬢は、何が得意でした?」


 ヤンは目を細めて私を見る。ーーいや私の中の前世を。


 「昔も今も勉強だけだったわ」


 「俺ァ勉強嫌いなんで、お嬢が勉強好きなのが凄いと思いやすが」


 「でも、今の私はこのままではだめ。せめて自分の身くらい自分で守れなくては……」


 魔法も使えない。

 護身術すら身につかない。

 頭でっかちの私。


 こんなので私は復讐を果たせるのかしら……。

このページもエブリスタで後悔している3ページ分です。流行の最先端は〜も、この後更新します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ