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最弱魔法使い  作者: 宇佐美林檎
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ルーラは生徒になる

遠征に行って2ヶ月経った。あの時はまだ2月で肌寒かった。今はもう4月。暖かくて、ピクニックにぴったりな日、だけど…「今日は入学式、なんだよなあ…」

「ルーラ、どうした?」

「ん?なんでもない」

新しく先生になるセオが隣で笑う。私は老化しないから、生徒なんだよね。

「2回もここに来るなんてね」

「そうだ、あの時は死ぬと思ってたから」

「あと5年でこの世とおさらばだと思ってたんだけど」

「私なんて不老不死になっちゃったし」

「ほんとに」

顔を見合わせて2人で笑う。セオを初めて見かけた時平民街の子だ…って思ったのを思い出した。ほんとにあの時は可哀想だった。

「ルーラさん、居眠りですか?2回目だからって…」

「セオせんせー、そう怒んないでよ」

「怒ってないですよ」

「セオに会ってもう6年経つんだなーって思ってただけよ?」

「むー…」

「やっぱさ、先生とルーラ出来てるでしょ」

「そんなことないしー?」

「うそー」

「もうっ、授業再開ですよっ!」

こうやってみんなで話すようになってもう1年か…なんか変な感じ…


2年、経った。変だな、セオはぐんと背が伸びて、とうに私を越してしまった。家に女を連れてくるようにもなった。でも、結局いつも破局する。なんでだろ…良い奴だけどな。学校の正門で上を見上げながら考える。

「ルーラ?」

「ああ、ナーロウ」

ナーロウはこの年の永遠の勇者。ちょっとたらし。

「どした?」

「んー?なんか変な気がしてさ」

「オレらも最初ルーラに気ぃ使ってたのにさ、今こーやって話せてるだけで変だよ」

ニッて笑う爽やかな顔は眩しい。たらしっていうか、モテモテ?

「違うんだよ、セオは変わったのにさ」

「あー、ルーラは変わんないから?せんせーはたらしだもんな」

「だよねー、いつも破局してるよ」

「ルーラのこと好きなんじゃね?」

「うそー、ありえないって」

ナーロウと話すと気分が明るくなる。やっぱり良い奴だ。

「あー、変なのってさ、あれじゃない?置いてかれてる感じ?うちのばっちゃも言ってたよー、『歳ぃ取ってから変な感じするべ』ってな」

「ありゃ、私ばっちゃ?泣けるんじゃよー」

「ワハハ!ルーラはやっぱそうでなきゃ」

良い奴はやっぱりずっと良い奴。あれから1年経ってもこの会話はずっと覚えてる。変な感じはどんどん増してきてる。取り残されてる感が凄い。この前セオと会話したら3年遅れてるって言われちゃった。哀しき。

「や、ナーロウ!」

「おールーラ!」

「私って3年遅れてるかな…」

「どっちかっていうと考えが3年前で止まってんじゃない?」

「マジか…不老不死って結構ヤダよ?」

「くくっそれ言っちゃうの?」

「もー、ほんと…」

3年ずっと不老不死の秘密を探ってる魔法使いはいっぱいいる。だからみんな私を羨ましいって言うのよ…

「セオ…なんでセオは破局しちゃうの?」

「え?分からないよ」

先生の仕事をしながらセオが話す。

「とりあえずやめてほしい、家でしないで」

「わかった…けどさ、俺…」

「なに?」

「いや、なんでも…」


4年。私の母親が死んだんだって。私がどうしてるか気になったからだって。ひど。自分が追い出したのに。って思ってた。

「う、そ…」

私が母親の死体に会いに行くのにはセオが付いてきてくれた。母親の死体にはくっきりと紐の痕が残ってて、紅くなっていた。

「ころ…し…?」

「いや、自殺だ。ルーラを心配して追い出した自分を悔やんで死んでしまった。」

「お父様…うそでしょ?追い出した、のに…ずるい…ずるいよぉ…」

号泣する私の肩をセオが抱いていてくれた。ありがとう、セオ。


5年。来た。来てしまった。5年。ナーロウが死ぬ。きっと、死ぬ。ナローウの力自体は私より弱かった。だから。きっとみんな…

「どーした!ルーラ!」

「いつにも増してテンション高いね…ナーロウ…」

「だって国のために死ねるんだ!退屈な日々におさらばだよ!」

「そう…」

「お、ルーラ似合ってるじゃん、その棍棒!」

「でしょ…?鉄の棍棒なんだよ…」

私たちが遠征先に着くとそこは巨大な草原でど真ん中に魔物が寝ていた。気が滅入る…

「かかれぇ!」

魔法を無抵抗の魔物にあて続ける。むくっと起きてきた魔物は…雷を呼んで、ナーロウ以外の生徒を燃やし尽くした。ほんの数秒で皮膚がドロドロに焼けただれた死体があちこちに落ちた。吼えると石が降り注いでくる。歩くと地震が起きる。ナーロウの身体はたちまちボロボロになった。

「ふんっ!」

私は服がボロボロに破れているけれど、キズ1つもなかった。

「いやああああ!」

雄叫びを上げて大量の石を投げつけ、弓で矢を刺していった。ちょっと、効いていた。

「ドーンー!」

ちょっと茶目っ気を入れてナーロウが言うと、隕石が降り注いだ。魔物は体力は少ないみたいで、瀕死状態になった。でもナーロウも、充分瀕死。ギリギリ。ギリギリで…

「ナーロウ!爪!」

「ハアハア…え…?ハア…つ、m…」

バタッと音がした。必死に伸ばした魔物の爪がナーロウを貫いた。

「ナーロウ!」

心臓がある位置を完全に貫いていた。全滅…

私はピクピク動く魔物の爪を見て、細長い石で刺して、刺して、刺して、刺した。魔物がただの肉片になるまで刺し続けた。

フラフラッと草原の近くのセオまで歩く。へとへとの私はセオに倒れ込んだ。

「ルー…!服は!?」

「ハア…やぶれた…ふふっ…かお…まっかっか…」

私はそのまま倒れて、服を着て校長先生に話に行った。全て話して、私は号泣してしまった。5年前もみんなそんなふうに…殺されたって、思ったら…さ…

「では、ルーラさん、次の年代もお願いしますね」

「はい…」

今話から5年区切りで進んでいきます。

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