ルーラは怯える
「どういう…ことです」
そう口にすると躊躇ったように先生が顔を背ける。
「…実は、100年後に世界を滅ぼすほどの魔物が動き出すのです」
険しい顔で先生はそう言う。
「そんな…今の魔物でも、精一杯なのに…」
「その魔物は回復をするそうで、貴女のような生徒には倒せないかもしれませんが、お願いしたいのです」
「そんなの…」
駄目だ、不公平だ…と言おうとして、そんなの私は…
「お願いしますね、では」
校長室に呆然とした私だけが残されて、私は…途方に暮れていた。
私は…家でずっと無視されていた。起きるとお金だけあって、それで買って食え、というのはわかった。寝る前なんて最悪だ。色々考えてしまって、泣けてくる。今だって寝る前だから…
(おかあさまはわたしにしんでほしかったの…?)
(おかあさまにとって、わたしは…なに?)
(おかあさまはどうしてわたしをむし、するの?)
(わたしはいきていてはだめだった…?)
「ぁ…ぃぁ…ぃ………」
「わたしは…」
「わた…」
「…ヒクッ」
といった次第で、いつも泣きながら寝てしまう。
今日、驚くべきことが起きた。いや、いつか起きると思っていた気がする。そう…家から追い出されてしまった。平民街…お金だけあるけど。
ご飯を買いに行くと、セオに会った。
「セ…」
「セオ!どうして帰ってきたんだい!母さんたちがお金貰えないだろ!」
「母さん、ごめんな…」
「謝って済むと思ってんのかい!兄弟3人を育てるのに大事だったんだよ!」
「ごめんな…」
「あんたは長男のくせに1番出来が悪いんだよ!魔法なんかが出来てもここじゃあ役に立たないよ!」
「ごめんな…」
「今すぐ出てきな!ここはもうあんたのウチじゃない!」
「セ、オ…」
セオのお母様が家の戸を閉めてからすぐにセオに駆け寄った。
「生きてたの…?セオ…」
「ルーラも…でも、なんでここに?」
「私も家、追い出されちゃってさ」
セオには私の新たな家で話をした。すべて…滅びること以外。
「ねえセオ、ウチ来なよ」
「え?いいの?」
「うん、2階が空いてる」
「でもさ…」
「流石にそういうことはなし、だよ?」
「了解しました…」
「あ、期待したでしょ」「別に…」「嘘だあ、したでしょー」「してなっ…」
セオと話すのは楽しかった。ずっとずっと…今のままが、よかった。