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天然能力者の受難  作者: 岸辺 轍@中二病
天然能力者の受難
8/19

バイトを探そう!

投稿します☆彡

めっちゃ長いです… 8000字いきました…。

2000字程度で済ます予定が…いつの間にか8000字。

加筆するのやめようかな…


 修一は一人、校門を目指し歩き出しながらこれからのことを考えていた。

 現在、修一は叔父の名前を借りてアパートの一室を借りて暮らしている一人暮らしなのだ。叔父さんの迷惑はかけないという約束で僕は中学から一人暮らしをしている。幸いな事にもお金に関しては亡くなった両親が大学卒業までは暮らしていけるだけの資産を残していてくれているので、お金に困ることは無いのだが……

 

 (高校生にもなって……親のすねかじりは、マズい…よな……)


 学費に関しては親のお金を使わせてもらおうと決めていたが、それ以外のお金…食費や光熱費、家賃といった必要資金から、自分の贅沢や遊ぶお金、欲しいもの(スマートフォン)などは全て自分の稼いだお金で買おうと決めているのだ。

 だからこそ、僕は高校生になってアルバイトが解禁される日を待ちわびていたのだ。


 「…とはいってもなぁ……」


 (アルバイトってどうすればいいんだろう…? とりあえず定番のコンビニバイトかな? いや、それとも礼儀を教えてくれる評判の某ファーストフード店か! いやいや、暮らしの味方ホームセンターでのアルバイトも捨てがたい… いや、待てよ… これからの自分の人生を考えて見ると… 知識と経験を積める大工補助のアルバイトはどうだろうか!?)


 修一は色々と頭の中で思考巡らせながら帰路を行く。

 帰り道の駅前で見つけたバイト探しのシティワークなる雑誌が無料で手に入ったので、中をパラパラとめくって確認していく。やはりと言うべきか……そのほとんどがむしろ職探しの求人広告が目立つのだが、それでもアルバイト募集の広告はたくさん載ってあったので目が離せなかった。


 (やっぱり…最低賃金の965円がほとんどだな… 時給1000円越えのバイトって中々無いんだね…)


 バイト選びでやっぱり一番初めに目にするのが時給だ。

 大阪府の最低賃金は965円(※2019年現在)と他の都道府県と比べてもかなり高額な部分に入るが、それでもやはりどこか物足りなさがある。どうせやるなら楽しく稼げて、尚且つ時給もいいバイトに就くことが理想だ。そう思ってるからこそ、中々バイトを決めらずに居た。時給がいいほど高校生お断りのバイトが多く、高校生でもバイトが出来る場所はおのずと最低賃金の時給936円なのだ。


 世の中は便利に見えても、意外と不便だなぁとしみじみと感じるなぁ…と、とても高校生とは思えないほど暗いオーラを漂わせながら一人暮らししているアパートへと一人トボトボと歩いて帰るのであった。



 学校から距離にして約6キロほど離れた木造二階建ての平屋アパートの一室に修一は中学生の時から暮らしている。大家はとても優しくたまに様子を見に来てくれたり、余りモノと言ってご飯をたまに分けてもらったりもしている。またご近所さんもご高齢の方が多く、この年で一人暮らしをしている僕を見て「偉いねぇ」「頑張ってるねぇ」とよく褒めてくれたり、色々と助けてくれて本当に助かっている。


 「あら…? 修ちゃん、おかえりなさい。今日が入学式だったかしら?」


 「あ、高橋さん!こんにちは~!」


 声を掛けてきたのは、僕と同じアパートに暮らしているお婆さんだ。

 名前は高橋京子さん。御年六十七だそうなのだが、ご高齢の老体なのに、腰は曲がっておらず、今でも元気に外でジョギングするくらい元気なお婆さんだ。いつも優しくニコニコと微笑んでいて、ここに越してきたばかりの頃は、良くご飯をお裾分けしてくれていたり、初めての一人暮らしだったので、色々と不安や悩み事が尽きなかった僕を助けてくれたのが、高橋さんだった。


 そんな高橋さんと何気ない会話を楽しんだ後、話題はアルバイトの話に変わり…


 「いい? アルバイトわね。お金を稼ぐことは当然、大切なのだけど……それよりも将来働く大切さと与えられた仕事を責任もって行う重要さを、今の年から学ぶことが出来るいい期待なの。 お金が大切なのはわかるわ。だけど…それ以上に最も大切なことを学び、経験を積むことが出来る貴重な場所なの。そして、それは大人になった修くんにとって今始めたアルバイトで培った経験は必ずためになるのよ? だから、今は賃金なんて気にせず、「やりたい!」と思ったアルバイトに挑戦してはどうかしら?」


 (……アルバイトは将来の自分を育てるための道のり(ツール)…!)


 高橋さんのお話を聞いていると、先ほどまで考えていた最低賃金で働かされるとか、色々と悩んだことが全部馬鹿らしくなってきた。そうだ、僕はまだ高校生じゃないか! まだ未成年で保護者の保護領内に居る年齢なんだ…! 今は、好きな仕事をやって、将来のなりたい僕になるための経験を積ませてもらうことが大切なんだ!


 「ありがとう、高橋さん! おかげで何だが吹っ切れた気がするよ!」


 「あらあら…それはよかったわ!」


 修一は高橋さんの深く頭を下げて、一礼した後元気よくアパートの二階の階段を駆け上っていった。

 そんな元気よく階段を駆け上がる修一の姿を見て、高橋京子さんは「年が得なく…話しちゃったわ…!」とニコニコ微笑みながら見送っていた。




 高橋京子はふと、ここに越してきたばかりの頃の修一を思い出していた。


 今でも忘れられない夏の暑い日、何の前触れもなく突然、修一は引っ越して来たのだ。

 この時期に引っ越してくるのは別段珍しいことではない。むしろ、新生活が始める春から夏にかけて、このアパートはよく人が引っ越してきたり、引き払っていき、住居人がコロコロ入れ替わる時期なのだ。


 今期もまた、一人新しい人が引っ越して来たんだろう、そう軽い気持ちで考えており、引っ越して来た人を一目見ようと興味本位で外に出た。


 高橋京子の部屋は一階104号室。

 一階部分の左端から数えて四つ目の部屋で、全部で7部屋あるうちのちょうど中央の部屋に住んでいる。このアパートは陽当たりが良く、まわりに住宅地は無くて静か、さらに立地条件が凄く良いので不動産屋では人気物件として掲示されているのだが、近くにスーパーやコンビニが存在しないし、駅からも少し遠く、交通アクセス関係が不便なので、お世辞にも人気があるとはいいがたいアパートなのだ。


 高橋京子は玄関の扉を開けて外に出る。


 目の前には『引越クマの引越センター』と書かれてた小さなトラックと従業員が三人、そして見るからに幼そうな、小学生くらいの少年が一人佇んでいた。

 身長は140㎝くらいだろうか、黒髪で不安なのか、うつ向いていて顔や表情が見えないが、パッと見でもわかるほど凄く幼く、小学校低学年くらいの少年に思えた。


 (……お父さんとお母さんはきっと下見で上にいるのかな?)


 周りを見渡しても引越センターの人たちが必死に荷物を運び出しているだけで、保護者の姿が見えなかった。きっと、あの子の両親は引越センターの人たちの手伝いでもしているのだろうと、考えていたのだが、どこ言い切れぬ違和感のようなものを感じていた。


 そして、その違和感の正体はすぐにわかった。

 

 どうやら荷物が少なかったようで、圧倒言う間に引っ越し作業が終わったようだった。トラック前で佇んていた少年に引越センターの人たちが近づき、部屋の確認をお願いしたのだろうか、少年は一つ頷いて二階へと上がっていった。それから数分して降りてきたと思ったら、引越センターの人に渡された紙に少年が何かを書き始めたのだった。


 青色に引越クマのマーク入りの紙……間違いなく引越完了を確認するための資料だ。


 ただ見せているだけなのなら、別段可笑しくないだろう。いや、百歩譲っても少し違和感はあるが、あの少年が見たいと言って心優しい引越センターの人たちが見せたのならわかる。しかし、あろうことが、その少年が懐から印鑑を取り出し、その紙に何かを書き始めたのだった。


 (ちょ、ちょっと……ら、落書き…?はダメでしょ!)


 注意すべきかどうか迷っていると、何やら引越センターの人たちが注意するどころか「ここにチェックおねがいします」「こちらに判子と名前を書いてもらっていいかな?」と言い出しているのだ。

 その光景はまさしく異常……いや、そもそも、あの年場のいかない幼子に署名捺印記入をお願いする引越センターの人たちも、印鑑を取り出して判子を押している少年もあの光景、全てがおかしなことだ。


 私は、ただ、その異常な光景に愕然と見ていた。


 そんなところに引っ越しを見に来たのだろうか、大家さんがやってきたので、私は急いで大家さんに駆け寄り事情を話し尋ねてみたのだ。


 「あぁ…あの子のことかい? 何でも一人暮らしをするそうだよ」

 「……え? あの幼い子が一人…で、ですか?」


 私は驚愕した。

 驚きすぎて腰を抜かしそうになった。大家さんに聞けば、あの子はどうやら、ああ見えて中学生なのだそうだ。


 (あんな小さく幼子が中学生…? 小学生の間違いだろ…!)


 そうと思うくらいとても幼く見える。お世辞にもあの幼子が中学生とは思えない。年齢詐称でもしているんじゃないかと疑ってしまうほど幼く小さく見えるその身体。いや、そもそも中学生で一人暮らしを許可する親も親だと思うが、それを了承して一人で暮らそうとしているあの少年もどうかしてる。家庭の事情で仕方がなく一人暮らしをするにしても、中学生…もとい未成年を一人暮らしさせるのは色々と問題がある行為だ。


 やがて引越センターの人たちがトラックに乗り込み、支部へと帰っていく。

 それを見送った少年がこちらに気づいたのだろうか、こちらに向かって歩いてきた。どうやら、私の横にいる大家さんと既に見知った仲のようだ。大家さんが「修一くん」と言いながら手でこっちへおいでとジェスチャーを送っていた。


 こちらに向かって歩いてくる少年。


 私は目が良い方ではない。

 日常生活に支障が出るほどではないが、車を運転するときなどには眼鏡が必須になるくらいには目が悪いのだ。


 やがて、少年の顔がはっきり見える距離まで、少年が近づいてきた。そして、そこで初めて見る少年の顔は、私の知っている子供の表情とはかけ離れており、とてもじゃないが、言葉で言い表すことなどできない表情をしていた。


 その身なりは酷く、着る服はボロボロで修繕した跡がいくつもあり、その幼く小さな躰はいたるところに傷跡がいくつも見え隠れしていて酷く憔悴しきっているように見えた。

 しかし、目の前の少年はそんなことを気取らせないように必死になって笑顔を作ろうとしていたが、笑顔が全く作れておらず、悲しそうな笑みをしていた。とても十代前半の、幼子に見える少年がしていてはいけないような表情に思えた。


 そんな少年が近づいてくるなり、私と大家の前でぺこっと頭を下げた。


 「こんにちは。 今日からこのアパートの二階の207号室に入居することになりました鬼瓦修一と申します。どうぞよろしくおねがいいたします」


 「……あっ! わ、私は一階の104号室の高橋です。よろしくおねがいしますね」


 私は、少年の礼儀正しい挨拶に一瞬吃驚してしまったが、すぐに我に返って挨拶をし直す。その立ち姿はとても幼子とは思えないほど堂々としており、大人びた印象を受けた。


 その後は大家さんと鬼瓦修一くんが二人で色々と話し合っているのを横で聞いていた。

 どうしてそんな暗い顔をしているのか、私はただそのことがとても気になっていた。ただ根暗で暗いだけの子とはどこか違う。まるでこの世の地獄を見て絶望しているかのような、凄く寂しそうで、そんでもって辛そうな少年の喋っている横顔を見ながら考えていた。


 その後、大家さんが鬼瓦修一くんを案内すると言って私は分かれた。

 その夜、何時もの様に布団に入り寝ようとするがチラッと頭によぎる少年の、鬼瓦修一くんのあの暗く寂しげな表情が気になっていた。


 (……あんなの、初めて見た。あんな暗い表情(カオ)をした子が居たなんて…)


 どうしても、あの表情が頭から離れず、一晩中、胸が締め付けられる思いをした。まだ若い中学生が人生が終わったかのような暗く絶望している表情を必死に隠そうと強がっている修一の姿は、本当に見ていて辛かった。


 (一体、この子の過去に何があったのか…?)


 必然とでもいうのだろうか、あの子の事を思うたびにそう考えてしまう。

 だけどそれは決して聞いちゃいけない地雷のような気がした。


 頭の中で考えるはあの少年の事。


 この時期に中学生が態々一人で引っ越してくる。

 それも一人暮らしを始める中学生。 

 

 とてもじゃないが今の平和な日本、延いては社会では信じられない光景だ。

 世の中には様々な事情を抱え、色々な考えで動いている人がいるのは長い人生経験を通してテレビやスマートフォンのニュースアプリを通して知識として知っていた。しかし、いざ現実で目の前でそのような境遇にあっている少年を見るのは初めてだったのだ。


 そもそも、よく考えると色々と可笑しな話だ。


 様々な事情があってやむを得なく一人暮らしを行う。

 別段、可笑しな話ではない。それにあの暗い表情も新しく引っ越して来た先では、よくある不安からくるものなのかもしれない。だけど、いくら一人暮らしが初めてで、不安で寂しいからといって、あそこまで憔悴しきるのだろうか?


 —————…悩んで考えても分からない、か。


 高橋京子は別に心理士でもなく、カウンセリング関係の仕事をしていた訳ではない。普通に大学を出て企業の会社員として普通の人生を歩み、暮らしてきた。結婚することはなかったが、それでも仲のいい友人や唯一無二の親友と出会い、就職先でも感じの良い同僚や刺激し合えるライバル、尊敬する上司に出会えるなど、それなりにつらくも楽しい人生を歩んでた普通の女性だ。


 そんな彼女でも、見て直感で感じるほど修一の異常さが見て取れた。


 成長期だと言うのに、栄養が足りてないせいなのか…小学生と間違われるほど幼く見える身体。

 伸びた髪を自分でカットのしたのだろうか、ぼさぼさで前髪だけぱっつんとした髪型。

 どうやったらあんなにボロボロになるのか、修繕の跡がいくつも見える服。


 何があったのか、とても気になってしまった。その小さな胸に閉まってしまっている、その記憶(過去)を話してほしいとさえ願ってしまうほど気になって仕方なかった。


 だけど、私は所詮は赤の他人。

 ましては、今日引っ越して来たばかりの少年にいきなり全てを話しなさいなんて言えるはずもなく、ましてや、私の異常ともいえる行動を見て少年が警戒するだろう、もちろん心を開いてくれるはずがない。警戒されて距離を取られるか、警察に通報されるのが落ちだ。


 (それに… 赤の他人が勝手に人の過去を詮索するなんて…)


 自分の立場になって考えるだけで分かる。

 それはお節介であり、やられている本人からすればただの有難迷惑な話だ。



 だから――今は修一の姿をただ見守ることしか出来なかった。



 日に日に窶れていく修一くんの姿はとても見ていて気持ちのいいものではなかった。

 だけど、私はただの同じアパートに暮らしている住居人で、赤の他人だ。

 

 (……もう見守るなんて、出来ない…っ!)


 そう感じたのは、修一くんがここに越してきて一週間ほど経った頃だ。


 ある計画案が頭の中では既に出来上がっていた。

 赤の他人でも、これから親しくなり、少年を見守るのではなく支えることの出来る友人関係に持っていける我ながら完璧だと思える計画案だ。

 しかし、私がやろうと考えているのは傍から見ればただのお節介で有難迷惑、偽善者の行いだろう。



 (………それでもいい…‼) 


 そう思った。



 別に私は正義感がとびきり強い方でもない。

 だけど、こればっかりは見過ごしてはいけないと生まれて初めて強く思った。まるで使命感のような強い責任感を感じていたのだった。


 そして、次の日から、私は行動に出た。

 何気ない朝の挨拶から始めり、夜には夕食を作って「ちょっと多く作りすぎちゃって…」と理由を着けてお裾分けを始めた。


 今はなんでもいいから、この子との何かしらの『つながり』が作ろうと躍起になった。


 それがただのご近所さんでも都合のいい隣人さんでもいい。とにかく、ただ同じアパートに暮らしているだけの住居人から仲良しな住人さんくらいまで認識を上げたかった。


 始めは戸惑いを見せる修一くんだったが、何度も、何度も何度も話しかけたり、繰り返しお裾分けをしていくうちに、段々と色々と話をするようになった。ちょっとした話だけど、それでも、話すうちに段々と笑顔になっていく修一くんの顔が堪らなく愛おしく思えた。


 学校での話

 昨日のテレビの話題

 高校野球や中学での部活の話


 本当にたくさんのお話をした。

 そんな中、意外なことを知る機会もたくさんできた。どうやら修一くんは意外とおしゃべりな性格で、本来はもっと明るい子なんだと、そこで始めて気づいた。だけど、修一くんの会話の中では、一度たりとも『家族の話題』について触れて喋ったことがない。それは、私が地雷であると確信し、出来る限り避けていた話題だったからである。


 だけど、ある日、修一くんと喋っているときに、つい口が滑ってしまったのだ。


 「そういえば修ちゃんのお母さんって… どんな人なの?」


 それを聞いて修一くんの顔が一瞬で萎れた。

 先ほどまで楽しそうな顔をしていた修一の顔が一変して凄く悲しそうな顔をしながら、事故で亡くなっちゃったとだけいった。その後は、話がうまく弾まずそのまま修一くんと分かれてしまった。


 絶対に触れてはいけなかった話題を出してしまった。

 私はついとはいえ、無意識に口から滑り出してしまっていた。

 ……———それは間違いなく〝地雷〟だと分かっていたのに。


 せっかく仲良くなり始めていたのに、私と修一くんの間に大きな溝が出来てしまった。


 そう違いないと思っていたのだが、次の日の朝。

 修一くんは何事もなかったの様に話しかけに来てくれたのだった。

 呆気にとられてしまった私だったが、すぐに持ち直して昨日の甲子園での話で盛り上がった。


 その後も色々と世間話や色々と話して、そろそろいい時間だからお互いにまた明日といって別れようと話した後、私が一階の自室に帰ろうと階段を下りているときに、修一が話しかけてきた。


 「……僕の家族はもういません。本当に悲しいですし、それと同じくらい悔しい気持ちでいっぱいです。家族との思い出は一生風化することのない大切なモノです。だけど、だけど僕には家族との思い出と同じくらい大切なモノを僕は見つけることが出来ました。 ……だから僕はもう悲しくなんかないんです。 こんなどうしようもない僕を励まそうと必死になって話しかけてくれた、大して興味のないのに高校野球を必死に勉強して話に合わせようと努力してくれた人が… 僕には、とても…嬉しくて、大切なモノなんです。 だから、悲しまないでください。僕のことで思い悩まないでください。 僕にとって高橋さんは… 僕の大切な人なんですから…!」


 この言葉に高橋京子はハッとさせられた。

 どうやら私自身、気づかないうちに楽しんで修一と話していたつもりでも、どこかいつもと違って私はよそよそしい態度を取ってしまっていたようだ。それに気づいた修一がきっと私を気遣ってくれたのだろう。本当は自分が一番つらいはずなのに…。


 (……まさか修一くんに、気づかされるとは、ね…)


 もう深く考えるのはやめた。

 修一くんは、もうすでに前を向いている…いや、前に進もうとしている。それを私は…私の身勝手な思いで修一くんを引き留めようとしている、知られたくもないだろう悲しい過去をほじくり返そうとしていたんだ…。なんだか… 身勝手な思いで悩んだ私が情けなくて、そして笑えてきた。自分の身勝手な理由で、修一君を気遣わせるのはもうやめよう。私は私らしく、修一くんと今の時間を楽しもう、と。


 そして私は決めた。

 修一くんが自ら話してくれるまで待とう、そう高橋京子は心に決めたのだった。


 

 

「や、ヤヴァイ!」

「お、オモチレェ!」

と思ったあなた!またはそう感じた、そうかなぁと思ったあなた!

今すぐその清き指で是非とも「ご評価」「BF登録」おねがいしヤス!

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