入学式Ⅳ
投稿しますよΣ(・ω・ノ)ノ!
今回少し長いです…Σ( ̄ロ ̄lll)ガーン
2000字前後を心掛けて描いていたのに、いつの間にか6000字…そして8000字と…
加筆執筆を続けていくうちにどんどん増えていく…Σ( ̄ロ ̄lll)ガーン
加筆執筆をつづけるうちに、文章構成がくるっていく気がする。それに修正が間に合わない…( ̄◇ ̄;)
入学式会場である講堂は、校門から入った目の前にあるH型の校舎の奥に建てられている。夏樹とその友人は楽しそうに笑いながら先に行ってしまったので、取り残された者同士の修一と圭吾の二人は先に行ってしまった夏樹を追いかけるようにゆっくりと行動がある方へと歩き出した。
圭吾は一緒に歩く修一を横目で見た。
小学校の時に、突然、何も言わずに引っ越して行って、そして中学の時にひょっこり帰ってきた修一。そんな修一を見ていると、言葉に表せないような、なぜか心がムズムズとするのだ。まどろっこしい感じだ。修一に対して、何か不満があるわけでもないのに、なぜか見ていると心が妙にざわめく。別に突然、引っ越していったことを怒っている訳でもない。それに修一から突然引っ越したことに関しては謝られたし、俺はもう中学生だ。大人の事情って奴も理解しているつもりだ。それなのに、なぜかムズムズと言い表せない不快感に苛まれるのだ。
修一が俺の前から突然、居なくなったのは小学三年生になる少し前の春休みでの出来事だった。
当時の修一は京都にある父方の実家に里帰りをする予定だった。その前日に俺と修一と夏樹の三人で近所の公園で遊んでいた。あの時の修一は本当にお爺ちゃんの家に行くことが楽しそうで、遠足前の子供の様にそわそわと落ち着きがなく、終始ニヤニヤとしていて気持ち悪かったけど、本当に楽しみだというののはわかった。
普段の修一は活発的ではないけど、お調子者と物静かさを二で割って足したような奴だった。すぐ感情的になる俺や夏樹と違って、何事にも消極的で「すみません!」とすぐヘコヘコする奴だったけど、よく笑う奴で、笑顔の絶えない奴だった。
「ぼく、明日の朝にね! 京都のおじいちゃんちにいくんだ!すっごく楽しみでね!」
そんな風に楽しそうにお爺ちゃんの家の話をする姿を見ながら、夏樹とまた自慢してるってうんざりしながら聞いていたのを覚えている。
修一のお父さんの実家が寺院を経営していて、そこが京都でも有名な由緒ある古いお寺だとよく修一が自慢していた。お寺の話をするときの修一は本当に楽しそうで目をキラキラさせて楽しそうに話してくれる。普段は物静かな奴だけど、お爺ちゃんの話は本当に楽しそうな表情でワクワクしているのが伝わってくるようだった。話している修一を見て「本当に楽しそうだな」って何度も思った。
今回もそうだ。いつものように前日に近所の公園で遊んで、疲れたら自販機でジュース買って、ベンチで座りながら楽しそうにお爺ちゃんの話をする。修一は年に数度、お爺ちゃんのお寺に里帰りしていたので、何時ものことだと思っていた。そして里帰りから買ってくると必ず八つ橋や京都まんじゅうなどのお見上げを買ってきてくれるので、それが俺や夏樹にとっては楽しみでもあった。
そして翌日、修一は京都のお爺ちゃんのお寺へと里帰りした。
車の中から笑顔で手を振る姿は本当に楽しそうだった。
だけど、これが最後に見た修一の笑顔の姿になるとは思いもしなかった。
予定では二泊三日だったのに、その予定を過ぎても修一は帰ってくることはなかった。
それから春休みが終わり、俺と夏樹は三年生になった。
あの日から修一とは会っていなかった。いつ帰ってくるのか本当に楽しみだったし、修一が京都から買ってくるお見上げに胸を躍らせていた。まだか、まだかよ、と凄く楽しみに待っていたのを覚えている。
だけど、修一が帰ってくることはなかった。
俺と夏樹が修一が転校したと知ったのは学校の始業式の後だった。教室のホームルームの時間、先生が「修一くんは京都の学校に引っ越しました」と、ただそれだけしか教えてくれなかった。
本当に突然の出来事で、頭が真っ白になったのを覚えている。隣を見ると涙を流しながら呆けた顔をしている夏樹の姿があった。
(なんで一言の相談もなしに、なんで勝手に引っ越していってしまうんだよ!)
まだ幼かった俺の頭の中では修一が俺たちを裏切ったのだと、裏切られたと思った。
それから時が流れ、僕たちも中学生になった。
当初は裏切られた、と思って修一を恨んでいたけど、時間が立つにつれて修一のことを忘れてしまっていた。それに憎しみは抱いてなかったと思う。それは夏樹も同じだったはずだ。俺たちは心も体も成長した。今では『大人の都合』って奴も理解できるようになったので、修一は裏切ってなんかないというのは自然と理解できていた。
昔の幼稚園の卒アルを見るたびに「あぁ、いたいた~!忘れてたわ!」程度に修一を思いだしていた。きっと修一も今も元気でやっているだろうと、のんきに考えていた時、突然、修一は帰ってきた。それも、昔別れたころから大して成長していないような幼い姿で。
中学初めての夏休み明け。
俺たちは教室に集まっていた。
始業式後の帰りのホームルームで俺と夏樹と修一は再会を果たしたのだった。
「今日から君たちと同じクラスメイトになる鬼瓦修一くんだ。小学校低学年まで地元の小学校で一緒に学んでたそうだ! 覚えているかどうかは分からないが、皆、仲良くしてやってくれ! じゃ鬼瓦くん、自己紹介を―――」
俺たちの担任の先生が横に立つ幼い少年風の転入生に自己紹介を進める。転入生も先生に言われて自己紹介を始めたのだが、その時、その転入生がなんて言ったのかよく覚えていない。それよりも、あまりにも転入生の顔に俺の視線は釘付けになっていたのだ。
はじめ転入生の顔を見たときは、まったく誰だか分からなかった。いや、すぐに修一だと思ったけど、それを頭では否定していた。なぜなら、あの日、別れた時に見た思い出の中の修一と、まるっきり同じ修一らしき存在が目の前に突然、現れたからだ。
面影がある、そんな生易しいモノじゃない。まるっきりそのままの姿の修一がそこに居たからだ。
あの日から、三年のも歳月が流れている。それに俺たちは成長期ど真ん中だ。ましてや男子、身長も伸びやすい。童顔であったも、何一つ成長していないことはありえなかった。それなのに、今、目の前に現れた修一は、思い出の中の修一と瓜二つだった。
いや、さすがに少しばかり身長が伸びているようだが、それでも、あの日、最後に見た修一とほとんど変わりなかった。そして、何より俺が、修一だとすぐに理解しようとしなかったのは、転入生の表情だった。あの笑顔の絶えなかった修一からは、考えられないほど憔悴しきった顔をしていたのだった。
あの笑顔の絶えなかった修一の顔から笑顔が消えてしまっていた。まるで死んだ魚の眼の様に、眼に力がなく、光がなかった。
それが、何よりも衝撃的だった。
それは隣の席に座る夏樹も同じだったようだ。
俺と夏樹は、修一の姿に大きな衝撃を受けたのだった。
俺と夏樹は成長期真っ只中なので、身長もかなり伸びていた。俺に至っては声変わりが始まり、大声を出すと喉が痛くなったりする。それに心なしか、少し低くなってきているような気がするのだ。だけど、今、目の前で教壇に立っている、かつて幼馴染だった修一の姿は小学校の頃からあまり変わっていないように思える。いや、少しばかり身長は伸びているだろうけど、あまりにも小さく、そしてか細く見えた。
やがて自己紹介を終えた修一が先生に席を指示され、俺たちの近くの空席に座った。
凄く憔悴しきった修一に、いたたまれなくなったのか夏樹は、すぐに修一に声を掛けていた。「久しぶり」「元気だった?」と昔みたいに気軽に話しかけようと夏樹は努力している様に見えた。それに応えるように、修一は軽く笑い「久しぶりだね!元気だったよ!」と答えていた。どうやら俺と夏樹のことは覚えていたようで、夏樹と話している修一は凄く楽しそうに見えた。
楽しそうに話している姿を見て俺は「思い過ごしかな?」と思ったが、すぐに思い過ごしではない事に気が付いた。話している修一の姿に少なからず違和感を感じていた。おそらく、それは夏樹も感じていたであろう。話している夏樹は時々顔を顰めているのが、その証拠だ。そして話している姿を見て確信した。どこか俺と夏樹と話しているのが「他人行儀」というより、凄く余所よそしく感じた。はじめは俺と夏樹に対する後ろめたい思い(突然の転校)からくるものだと思っていた。しかし、話すうちに、俺の直感が、ソレを否定する。
時々見せる笑みに哀愁のようなものが含まれている。
何よりその笑みはとてもわざとらしく、無理やり笑顔を作っているようだった。
久しぶり話す修一。そこに「喜び」はあっても「笑顔」は無かった。あるのは「悲しさ」「苦しさ」という辛いものだった。
俺は修一をまるで生き物観察でもするように観察してみた。絶対可笑しい、何かがあったんだと確信にも似た思いで修一の身体を見詰める。よく修一の身体を観察すると、制服の上からも解るほどよく鍛えられている。特に上半身と上腕筋の筋肉が凄く発達しているようだ。きっと転校先でスポーツか柔道なんかの武術でもしたのだろうか。半袖の制服から見え隠れする腕からは素人目で見て解るほど、鍛えられ引き締まった腕が見えた。
それだけなら、俺はそこまで驚きはしなかっただろう。
俺は小さい頃から地元の少年野球チームに所属しており、小さい頃からウェイトトレーニングと言われる筋トレ続けているので、修一に負けず劣らずそれなりに腕の筋肉には自信がある。修一ほど無駄なく鍛えられた、引き締まった躰を見たのは初めてだが、この年で良く鍛えたんだなぁくらいに思っていた為、別段驚くことはなかった。
俺が見て驚いたのは、鍛えられた腕に見える傷跡がいくつも見受けられるからだ。日焼けしていて、肌が小麦色になっていたので分かりずらいが、うっすらとだが、いくつもの傷跡が見受けられた。よほど深い傷だったのだろうか、薄く白く変色した細い傷跡が小麦色の肌に見え隠れしている。それも一つじゃない。いくつもの深い傷を負って治ったような切り傷跡が、修一の腕にたくさん刻まれていたのだった。
(お前……一体…何があったんだ…?)
俺はその疑問を修一に問いかけること出来なかった。「何か武術でもしていたのか?」と軽く聞けばいいのに、それすらも出来なかった。それは何故だか分からない。だけど、コレは安易に聞いてはいけない話だと俺の直感がそう言っているのだ。
その後、ホームルームが終わり、俺たちはすぐに帰宅した。
道中は今までつもる話があったので、話に花が咲いたようで凄く楽しかった。帰宅した後、俺はすぐに調べた。自宅に家族兼用と置かれているパソコンに向かい、すぐにめぼしい情報はないかと検索をかけまくる。昔、修一が色々と話していた。自慢するように話していた記憶を掘り返していく。片っ端からキーワードを入れて検索を掛けていく。
さすがは「情報社会」と呼ばれるだけはある。
『鬼瓦、寺』と検索を掛けるだけで、わんさかと情報が出てきた。しかも、それが、どれもこれも同じ事件を取り上げた記事を指している。この記事に乗っている事件は俺でもよく知っている。日本史に残るほどの怪奇事件だからだ。確か三年ほど前に起きた事件だった。当時、小学生だった俺も、この話題でクラスメイトや友達と盛り上がったものだ。謎が謎が呼ぶ、現在もすべてが謎に包められており、何一つ解き明かされていない未解決事件だ。
俺は「まさか、な…」と思いながらマウスを操作する。どうか、出来ればそうではなくていてほしい、とそう願いながら、一番上に表示された記事にカーソルを合わせダブルクリックしてサイトを開いた。
「……やっぱり……そうだったのかよ、修一…」
そこに乗ってあった情報は、俺の求めていた情報でもあったが、それと同時に、出来ればそうではなくてほしかった情報でもあった。
修一が転校していった翌日、修一のお爺さんが住職を務める鬼瓦寺院が謎の消失をはたした。
詳細は不明。何故消失したのかすら、原因が解っていない未解決事件だ。
当時、取れに訪れていた訪問者と住職、その家族の全員が消息不明となった。現場に残されていたのは夥しい鮮血の跡と、かつて宝物殿があったとされる場所から円状に半径三十メートル四方にわたって全てが消滅していた。残っていた建物には、なにかによって削られたかのような後だけが残っており、宝物庫を含め、一人を除いて、完全消滅していた。
修一が旅立って翌日に起きたこの事件。日付も修一の性である「鬼瓦」、そして何より修一のお爺さんが住職を務めるお寺「鬼瓦寺院」の名前が全て一致していた。
当時、全国報道されており、日夜騒がれていた大事件だったので、今でもたくさんの記事がネット上で転がっていた。
“消えた「家族」に、唯一の「生存者」”
消えた家族は修一の家族で、生存者は修一。
俺はそう確信した。確信せざる終えなかった。俺が見たのはまとめサイト「ウィキペリア」だ。ネットの情報を鵜呑みにするのはどうかと思ったが、この記事は実際に報道された内容や警察関係者の発表、新聞社・雑誌社の記事をソースに作られた信憑性の高い記事だ。その辺のゴシップや憶測の飛び交う記事と違う。このサイトは事実のみが書かれていた。
被害者や寺院の住職の名前が一部公開されていたが、そこに修一の名はなかった。少年保護法によって報道されなかったのだろう。断定するにはまだ早いと思ったけど、調べれば調べるほどその事実が現実だと後付けされていく。
俺はそこで調べることを辞めた。
その翌日、俺は学校で修一を問い詰めようかどうか迷った。しかし、俺はどうしても聞けなかった。俺は良くも悪くも偽善者だったのだ。修一にとって一刻も早く忘れたい忌まわしい出来事。それを俺は掘り返そうとしている。修一にとってソレは知られたくない出来事。だけど俺はそれを調べてしまった。
修一なら何か知っているのかもしれない。何故お寺が突然消失したのかを知っているのかもしれない。ソレは未だに判明していないし、消えた家族の手がかりすらわかっていない。
俺は聞きたかった。だけど、聞けなかった。
傷心の修一に俺が問いただすことに気が引けたのだ。そんなぼろぼろの修一に俺はどんなふうに接すればいいのか、俺は分からなくなってしまった。
「どうしたのよ? 今日はなんかボケーってしてるわよ?」
「……何か悪いものでも食べたのかな? 圭吾」
俺たちが再び仲良くなって一緒に帰るようになるのにそうは時間はかからなかった。
今現在、俺はかつての小学校の頃の様に三人で仲良く帰路についている。偶然なのか、またまた修一が図ったのか分からないが、修一が一人暮らししているアパートが俺たちと同じ方向にあるので自然と同じ帰路になった。
「いや、別に。 ……ちょっと色々と考えててな」
修一も夏樹も俺の顔を覗き込んでくる。夏樹に至っては「めっずらしー!あの圭吾が考えごとしてる!」とまで言い出している。修一もうんうんと頷いている。こいつらは俺がどんな気持ちでいるのかも知らずに、横で楽しそうに喋っている。そして俺は、ついに聞いてしまった。
「なぁ修一… お前、京都が何があったの?」
言ってしまった。聞いてしまった。俺は凄く後悔した。
修一の顔がどんどん影が差してくる。悲しそうな、それでいて泣き出しそうな顔をしているけど、それを悟られないと我慢している、苦笑いを浮かべている。そんな顔だった。
「………何も無かったよ。 ちょっと親の都合で引っ越しただけだよ」
修一がそっぽ向いて、頭をぽりぽりと掻きだした。
「そ、そうか…。なんか、変なこと聞いて…そ、その……悪かったな」
俺は確信した。何か隠し事がある時の修一の癖が出ていた。その癖に夏樹も知っていたのだろう、そのしぐさを見て、はっとした表情をしている。
「別に隠したいのなら、これ以上の詮索はしない。 ……でもよ、本当に辛くなったら……そ、その…話してくれよな」
「!」
「だって俺たちは、親友だろ? 親友の苦しみくらい理解してやりてぇって思うのが普通だろ! だから、本当に辛くなったら話してくれよ…! そん時は力になれるかどうか分からないけどよ… それでも出来る限りのことはしてやる! だから…本当に辛くて、苦しくなったら言ってくれよな」
俺の言葉に修一は目を見開いて驚いていた。
その表情を見て、俺も夏樹も悟った。やっぱり修一は何かを抱え込んでいる。そして、抱えた何かを話すことが出来ないのだろう、と。
修一の表情が段々を崩れていく。なんだよ、それ…っ! って口では強がっている様だが、相変わらず顔に出やすい奴だ。ぽろぽろと涙を流している。それを必死に拭っているが、全然拭えていない。
あぁ、本当にいつぶりだろうか?修一がこんなに涙を流している姿を見るのは…
俺たちがまだ出会ったばかりの頃、修一はよく俺と夏樹の前で泣いていた。
バカにされたとか、いじめられたとかで。そのたびに俺と夏樹が泣いている修一を庇って戦ってたっけな。本当に懐かしい。本当は人一倍泣き虫な奴なのに、泣き虫じゃないと必死で見栄はってる修一は本当にカッコ悪かったけど、それ以上にかっこよかった。無駄にカッコつける部分も、見栄貼って強がってる部分も、これが修一だと形作っていたのに、今の修一はどこか大人びてしまっている。どこか達観してしまっていた。それが悪いとは言わないが、せめて俺たちの前だけでも、本当の自分って奴に戻ってほしかった。
(そのために言ったセリフ……ではなかったんだけどな…)
目の前で大粒の涙を流している修一を見て、やっと俺たちの知っている修一が戻ってきたと心から思えた。
それから少しの間、俺と修一は何とも言えないような関係だったけど、昔のような関係には戻れたと思う。余所余所しかった雰囲気はどこかへと消え去り、いつもの俺たちに戻れた。修一もあの時泣いたことは強がってはいるものの、どこか嬉しそうだった。
「なぁ修一…お前、夏樹とはどうなんだよ? まだ告白してねぇのか?」
「ブフッ! な、なななに言い出すんだよ、圭吾! べ、別に…好きってほどじゃ…な、ないよ!? 別に告白するようなことじゃないだろ…そ、その俺たち友達だし…」
「はっ! このヘタレが! それだからお前は“奥の手”ってバカにされるんだよ、このヘタレが!」
「へ、ヘタレってなんだよ!」
「いいか、よく聞けヘタレ小僧! 夏樹はアレでも人気者なんだぜ? そのうちにあっという間にお前よりイケメンの男に告白されっぞ!想像してみろ!夏樹が告白される場面を! せっかくの幼馴染ってアドバンテージあるのに、どこの誰かも知らねぇ馬の骨に横からかっ攫われてしまってもしらねぇぞ、このヘタレ修一!」
「……そ、そういう圭吾はどうなんだよ? 俺より一応付き合い長いんだろ、夏樹と」
「はんっ! 俺はごめんだね、あんな般若! 対外的には優しさの塊、令和のナイチンゲールとかもてはやされてるけどよ…俺にいわせりゃ「どこがだよ!」って怒鳴りたくなるぜ? そもそも俺と夏樹の付き合いなんて、お前と大差があるわけじゃないんだぜ? ただの腐れ縁だ、腐れ縁! 俺にいわせりゃ怒りん坊で、美人ずらしてるだけの般若だろ!」
修一はただ「ははは…」と愛想笑いを浮かべている。どうやら修一も夏樹のことをそう心の中では思ってたようだ。それに、ついつい調子に乗って言葉を続ける。
修一は目の前で調子よく話している圭吾を見ながら考えていた。
修一が夏樹に対して好意を寄せているのは本当なのだ。
しかし、修一は気づいている、否、気づいてしまっていた。
夏樹には好きな人がいること。
(……圭吾は気づいているかどうか分からないけど、夏樹ちゃんはね……ずっと圭吾のことが好きなんだと思うよ。 圭吾の前じゃ怒りっぽくて、そりゃ厳しいけどね。僕やみんなの前じゃ、本当に優しくてお淑やなんだよ)
修一は昔から人の目線に敏感だった。だからこそ気づいてしまったのだ。
夏樹が圭吾に向ける視線は僕が夏樹ちゃんに向ける視線と同じだという事に早々に気が付いたのだ。そして何より、圭吾は気づているかどうかは知らないけど、圭吾自身も夏樹ちゃんのことが好きなのだ。圭吾の視線はいつも夏樹ちゃんを追っている。それも無意識に。そして、事あるごとに「夏樹ちゃん」の話ばかりする。そして、肝心な時には僕を盾に話している。
夏樹ちゃんも僕と関わっているより、イタズラして人に迷惑かけている圭吾を叱って、一緒に隣に居て笑ってるときの方が凄く楽しそうだ。
二人は両想いで僕は言わば、邪魔者。それでも二人は僕のことを仲間外れにしない、むしろ、前より仲良くしてくれる。
(……嬉しいけど……嬉しいけどね…!)
心が…痛いよ……
修一はずっとそのことを黙っているのだ。
ずっと隠しているのだ。僕たちの友情を護る為に。壊れないようにするために。
修一がそんな風に考えている間にも、圭吾は調子に乗って夏樹ちゃんのことをディスるディスる。
普段、このような他愛のない会話は時と場合によっては必要でちょっとした笑い話だったのだろうが、今回は、話している場所が悪かった。
ここは講堂、現在は入学式開催待ちの状態。回りは圭吾や修一たちと同じ新入生。そして何より彼らのほとんどが地元の中学からの顔馴染みの人だらけだ。当然、その中に話に出てくる人物も居る訳で… というよりも、つい数分前に分かれたばかりなので当たり前なのだが、同じ行動内に居ることを圭吾は忘れていたのだ。そして、それは突然訪れる。
「誰が腹黒怒りん坊ですってぇええ?」
((キャアァァアア―――――!!!))
ギギギと壊れたロボットの様に振り返り、そして二人の無言の悲鳴が講堂に響き渡った。中学時代のアイドル夢原さんに怒られる凸凹コンビの二人。その光景にデジャブを感じる三人を中学時代から知っている顔馴染みの人たちはこう言い締めくくった。
通常運転だ、と。
「いや、だから……そんなんじゃないって…! なぁ修一!お、お前もそう思うよな!」
圭吾が必死に夏樹を宥める。そして助けてを求めるように修一に顔を向けると…
「僕は何も知りません。圭吾が勝手に言っているだけです」
修一がサラっと言い放った。それを聞いて夏樹が圭吾をギロっと睨みつける。
(う、裏切ったなぁあああ修一ぃいい!!!)
「ほら!修一もこう言ってるじゃない!! どうせ圭吾が言い出したことだろうけど!」
夏樹の怒りはさらにヒートアップ。必死に宥めようとする圭吾と、我関せずを貫く修一。その異様な光景は周りの目を集めるのに十分だった。「いや、だから……そういうつもりじゃ…」と圭吾が言いかけると、そこに入学式を開始するアナウンスが入った。
“えーテステスー。 えー、只今より、泉州砂川高等学校 第五十回入学式を開催いたします。新入生の皆さんは各自、決められた席へと座ってお待ちください”
圭吾と夏樹は言い合いを止め、溜息交じりに前を向き、予め講堂前に張り出されていた自分の席へと戻っていった。アナウンスが入ると講堂内が急速に静寂に包まれる。
入学式が始まり、壇上で最初に教頭先生らしき人が形式的な挨拶をし、司会進行もその教頭先生がそのまましていくようだ。かなり年配の教頭先生のようで頭のてっぺんが少し寂しそうだ。
順次、手元に講堂前で配布されていた入学式のしおりに記載されている様に校長先生の挨拶へと移っていき、順調に入学式が進んでいく。まだ歌えない校歌や生徒会長からの挨拶、新入生代表の挨拶、式はつつがなく終了した。
その後、改めて講堂前に張り出されていたクラス表が配布された。ちなみに、修一と圭吾、夏樹は同じクラスで一組だ。
“えー これから各クラスの担任の先生をご紹介します。一組担任は上田愛美先生です。 では上田先生からご挨拶を頂きます”
司会の教頭先生の言葉と共に一人の女性教諭が壇上へと上がる。
僕たちと同じ一組の生徒たちの目線が、その先生に注目が集まった。しかし、一組の生徒だけではなく、他の組の生徒(主に男子生徒)も同じように注目していた。それも、そのはず…これは注目せずにはいられない。スラリとした容姿に白色のスカートスーツをこれ以上ないほど完璧に着こなしている。鼻筋のとおった高く綺麗な鼻に掛けられた黒縁メガネは、さらにその美しさを醸し出していた。
講堂内がどよめく。
男子生徒は一様に頬を赤くし、女子生徒からはため息が漏れた。その女性は壇上に上がり、設置されているマイクの前に立つ。その一連の動きにも、まったく無駄が感じられない。
「皆さん、入学おめでとうございます。私はこの一組を担任することになりました上田愛美です。一年間、皆さんと一緒になってクラスを盛り上げて行きたいと思います。 これから一年間、よろしくお願いします。」
当たり障りのない、よくある挨拶。だが、その挨拶時に見せた笑顔は思春期真っただ中の新入生たちの心を打ち抜くには十分すぎる破壊力を持っていた。
「「「「「うおおおおおおおおお!!!」」」」」
「「「「「「よろしくお願いします!」」」」」」
「やったぁあ!女の先生だ!」
「しかも美人だ!」
「愛美先生ばんざーい!」
一組の生徒たち(主に男子)から熱烈な支持を貰った上田先生は、笑顔で手を振りながら壇上から降りるのだった。
「これって面白くね!」
「やべぇ続きみたいよぉ!」
って思ったら、是非ともその清き人差し指で一票を!
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